相剋の森 (集英社文庫)
山が好きな人間、自然と共生したい人間は、一読する価値がある。
我々が普段の生活で、見過ごしがちなものを著者は、丁寧にわかりやすく描写している。
けして忘れては、いけないことがある。お子様がいる人にはお子様に自然や命の尊さを教える教本にもなりうる。
マタギ 矛盾なき労働と食文化
これほどまでにマタギの人々の信頼を勝ち得たカメラマンは、かつてひとりもいないのではないか。
ライター家業のひとりとして、十数年にわたって、ひとつのテーマを、これほど深く追求した作品を残すことができた田中氏に、軽く嫉妬を覚えたくらいだ。
邂逅の森 (文春文庫)
まったく読んだことのなかった分野の本。
読み終えた後の感動は、これまで味わったことのないくらいのものだった。
明治、大正の東北の村を舞台にした、山の神を信じ、ひたすら熊を追い続けるマタギの男たちの物語。
マタギの世界。最初は、マタギって何?っていうくらい、全く無知の世界だった。
それが、どんどんどんどん引き込まれる。
物語の最初から、全く無知の世界であるはずなのに、すぐそばで見ているかのような、ほんとに臨場感溢れる!狩りの様子が描かれている。
そして物語は、主人公の波乱に富んだ人生を中心に展開する。
14歳で、父や兄、他の村人と同じようにマタギとなった主人公・富治。それはそれは厳しい「山の掟」を守りながら、熊やニホンカモシカを追い、生活する。
マタギは、ただの生活の糧として獣を狩るのではなく、大自然や獣に敬意を払い、生活する。
とにかく、ストーリーの壮大さに圧巻、圧巻。
男たちのかっこいい生きざま。
なんだか、読み終えるのがもったいなかった。
山背郷 (集英社文庫)
『邂逅の森』で直木賞を受賞した作者による短編集。素晴らしい。主に戦後まもなくの時代を舞台に、マタギや漁民たちの姿を描く。
この時代、そして自然に生きる人間たちのからだと言葉から、凄みが伝わってくる。ついこの前の時代なのに、もはや失われようとしている種類の人間たち。そこには厳しい自然に鍛えられた強靭な肉体と意志、そして心の温さ、素直さと、畏怖の念がある。
1958年生まれの作者だが、風俗から、人間の内面にまでいたる細かい筆致は、見事な記録文学といってもおかしくない。硬質な文体の中に浮かび上がる登場人物たちの生き生きとした姿に、、自然の中に生きる人間への憧憬と愛情をかきたてられた。