鉄人28号 白昼の残月 DVD
横山先生は鉄人のモチーフはフランケンシュタインと書かれていた
この作品は無機質な鉄人と操る人間の関わりの原点に戻ったテーマ。
ゴジラが文明へのアンチテーゼであったように、
鉄人も原点帰りしたストーリーで最後まで楽しめた。
昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)
石破茂氏が、予算委員会でこの本を紹介した。推薦書を聞かれると本書を挙げるというので、興味がわいた。
昭和16年日本の空の下で、何が起きていたのか。鮮やかなブルーの表紙を目にすると、これから展開される話に対し、更に期待が高まった。
描かれ方の緻密さに驚いた。徹底した取材、調査。例えば、どこにも記録されていないという東條英機陸相の発言が載せられている。総力戦研究所の研究生による「戦争に負けるというムード」の報告に対するコメントであり、「研究生それぞれの記憶の奥底にしまい込まれていたものを重ね、総合し、ほぼ正確に復元させたものである」。東條は、研究報告は机上の空論であり、戦というものは計画通りにいかない、しかし、「諸君は軽はずみに口外してはならぬ」と言い、狼狽していた。また、狼狽していた理由を、この報告が東條の考えている戦況と近いものであったからではないか、と研究生だった新聞記者の秋葉が感じていたことも示されている。
また、昭和57年の取材時93歳だった元東條内閣企画院総裁鈴木貞一氏にも直接話を聞いている。「とにかく、僕は憂鬱だったんだよ。やるかやらんかといえば、もうやることに決まっていたようなものだった。やるためにつじつまを合わせるようになっていたんだ。僕の腹の中では戦をやるという気はないんだから」。資源課の高橋中尉が「みなが納得し合うために数字を並べたようなものだった」と述べている一文もある。
国策を決定する人間が何を考えていたのか、多くの声を、時を超えて知ることができる。
著者は、彼らの声を伝えるにとどまらず、それらを今に活かすメッセージを持つ。総力戦研究所の研究生は模擬内閣を組織され、真珠湾攻撃と原爆投下を除く現実の戦況とほぼ同様の結論を導く。その結論は、彼らが「タテ割り行政の閉鎖性をとりはらって集められた」偽りのない数字を使用し、真摯な討議を行った結果だ、としている。
皆、戦いの前から日本が勝てないことを知っていた。それでも、つじつまを合わせる数字が並べられた。事実は、記録されなければ未来には残せない。本書は、当時のある一点の声を徹底的に残す貴重な資料であると共に、あらゆる局面において、正しい方向を定めるために重要な決定方法を示す必読の一冊である。
ブルーズ・フォー・トマト
キリンジファンです。あまりにキリンジにのめり込み過ぎて、苦しくなっていた時、青山陽一を知り、聴いたら病みつきに。やはりギターがカッコよすぎる。それと詞。「伝書鳩ここへ、飛ばしてくれないか」って・・・「妻も娘も親も知る由もない」とか。月並みな感想かもしれないけど、日常の中の非日常とか、人生の刹那的な瞬間を捉えたような歌詞が心に刺さる感じ。ひとことでは言い表せない独特の、複雑な、美しい世界がそこには在るのです。古いアルバムも聴きこんでみたけど、このアルバムはとても完成度が高く、作り手も完全に自分のやりたい事をやりきっている感じがして、この世界にどっぷり浸れる安心感すら感じます。12月10日のライブ、本当に楽しみ。
ぜいご
ドラマに使われたのは2曲だけではないので、
下の方が、どの2曲のことを言ってるのかはわかりませんが、
僕にはすべての曲が心に響きました。
いろんな要素が絡まりながら何にも似ていないように思えるオリジナルなメロディー、
自分の墓穴を自分で掘ってるかのような、
誰にも寄りかからず、だけど根源的なところで人を求めているかのような
重層的な歌詞。
ただ流しながら聞いてもいいですが、
引き込まれながら、自分と向き合うために聞くと、
さらに世界が広がる素晴らしいアルバムだと思います。
ひこうき雲
処女作にはそのアーティストのすべてが含まれているものだ、などと言います。
このアルバムでデビューして以降、荒井由実から松任谷由実となり、若い女性のカリスマのようにいわれた時期もあり、
いろいろな色合いを見せてきたユーミンですが、私が思うには、最高傑作はこの1枚のような気がします。
「ひこうき雲」で感じる透き通った空気の上にある空、
「曇り空」で感じる湿った空気の中、とても低いところを流れる雲、
「空と海の輝きに向けて」で感じる夜の海の上を滑る船の上の月、
「雨の街を」で感じる傘を持つ手にかかった雨粒の冷たさ。
パワフルな女性の代表のようにいわれるユーミンではありますが、このアルバムには、
一人の女性としての孤独感、というか世の中との微妙な距離感が表れています。
鈴木茂、細野晴臣、松任谷正隆、林立夫といった最高のミュージシャンと織りなす繊細な色彩の数々。
特に鈴木茂のスチールギターのトーンが生み出す空の広がり感と細野晴臣の
あまりにもすばらしいベースプレイはこれだけでも絶対に聞く価値ありです。
もしあなたが、音の色彩感というものを感じてみたいと思っていらっしゃるなら、
あるいは手練れのミュージシャンの紡ぎ出す空気感というものを味わってみたいとおっしゃるなら、一度お聞きになってはいかがでしょうか。
本当にすばらしい一枚です。