裸の十九才 [DVD]
実際に起きた事件(1968〜69年)をすぐさま映画の題材として取り上げるなど、まだまだこの当時(1970年)の日本映画界には冒険心と活気があったと言えますし、低予算の独立プロ映画でありながら、付け焼刃のやっつけ仕事感がまるで無いなど、さすがに映画撮影所育ちのプロの仕事ぶりは一味もふた味も違うと感じます。
新藤兼人さんの映画は、最前衛のぶっ飛んだ部分と、オーソドックスな古めかしさが同居しているようなところが面白いです。
この映画も、映像だけみると、「最近の若い人が作った映画だ」と言われても納得できてしまうほどの瑞々しさです。新藤さんは黒澤さんと同世代ですが、同年封切りの「どですかでん」での黒澤さんの衰退ぶりを思えば、新藤さんの若々しさはひときわ輝いて見えます。
一方、「青春=故郷=母校=校歌」というなんとも古めかしいスパイスを効かせながら、「親子の情愛の欠如」に事件の解答を求めるあたり、「素材は、とにかく料理してから提供する(素材を、素材のまま放り出さない)」という昔気質の責任感なのでしょうが、「略称連続射殺魔」での足立さんと比べると、やはり古臭いなあと感じてしまいます。最後の面会室での、母親役・乙羽さんの大熱演など、かなり鬱陶しいです。
最も印象的だったのは、車で移動中の主人公(原田さん)が、この時代に多く見られた学生のデモ隊に遭遇して停車を余儀なくされ、「急いでいるのに邪魔しやがって」といった顔で舌打ちする場面。こういう場面をさりげなく挿入するところがいいですね。生活に追われる庶民にとって、天下国家を論じる学生のデモなど、恵まれた子どもの遊び程度に過ぎません。しかしその後すぐに、主人公は、切羽詰った挙句に社会からスポイルされ、犯罪者となって、デモ隊が対峙していた国家から追い詰められる存在となってしまいます。デモ隊を苦々しく思う庶民と、共に立ち上がらない庶民を小バカにするデモ隊。天下国家の為政者たちは、庶民や学生の怒りや焦燥感などどこ吹く風で、下々の分断をせせら笑っています。脱原発を訴える都会の知識人、原発から恩恵を受けている周辺地域の住民たち、この期に及んでもなお利権を守ろうとあの手この手で画策するナントカ村の住人どもの、三者関係にも当てはまる構図です。
トランスフォーマー カーロボット Vol.1 [DVD]
人気アニメ『トランスフォーマーカーロボット』のDVD。日本製のトランスフォーマーと言うだけあって、過去のシリーズにはない独特な感じがある。見逃した人は見ると良いでしょう。
星々の降りそそぐ秋へ
福士さんのZONEは初演されて以来再演の機会がなかったものと記憶しております(一回「題名のない音楽会」で指揮の難しい曲として紹介されたような記憶があります)。しかし、後半部分、指揮者が左手と右手で8(=2×4):12(=4×3)を振り分ける部分、大太鼓とマリンバで呪文のような、心臓の鼓鳴のような気分を醸し出す打楽器群が忘れられず、録音が出るのを長らく待っておりましたがこのたび美しいCDとして世に出たことを知り思わず購入しました。30年待った甲斐はありました。あまたある現代音楽作品の中でも秀逸な作品の一つでした。さて、この作品もさることながら、このCDに収録されたどの作品も素晴らしいものばかりです。演奏も良いです。特に「星々の降りそそぐ秋へ」は音楽そのものが見事に昇華しており、偉そうな表現で恐縮ですが、作曲家の音楽に向き合う姿勢に誤りがないことを実感させてくれます。そして「星々の」最後のパッセージははっきりと「何か美しいものに出会った」そんな気持ちにさせてくれます。今後改めて福士さんの作品が沢山演奏され、また美しいファクシミリのスコアが出版されることを期待しております。(ちなみに最後に収録されているクラッピングによる「ていろ」は元気になる曲です。)