風魔(中) (祥伝社文庫)
早いテンポの展開に登場人物の裏切りや騙し、策略等が交差しうかうかしていると展開を見失うほどだ。史実を尊重した中に大胆な展開があり読み応え十分な作品だ。ただ、小太郎が強すぎてなんでもありのような作品にはちょっと抵抗を感じないわけではない。歴史小説341作品目の感想。2011/10/29
虎の城〈上〉乱世疾風編 (祥伝社文庫)
昔の史家の個人的な解釈によってあまり好ましい評価を得られていなかった藤堂高虎を好意的に取り上げて頂いた事はありがたい事だと思います。
若い頃に憧れを抱いた女性を守る事を出来なかった高虎が、
愛する女性と一緒になる為には地位も経済的にも相応に充実していなければならないという事を学び、
それを信条として切磋琢磨して成長していく若き日々から
次第に、単なる武の功績ではなく建築・土木技術の実績をその時々の権力者に認められながら有力大名となってゆくその生涯を描いた物語です。
周囲に認められ出世するにしたがって対立者が出てくるのは避けては通れない事で、
石田三成との駆け引きには読む方も熱が入ります。
個人的に読んでいて展開に胸が躍った場面は、
目をかけてもらった信頼する羽柴秀長が病死し、後継者・秀保の家臣となるものの、
その秀保も石田三成の謀略によって亡き者にされて主を失ってしまい途方にくれる一連の場面に関しては、流れるような展開で良かったです。
しかし、全体としては、
「〜年にはこういう戦いがあった。ここでは例の黒漆塗唐冠形兜を身に付けた高虎が奮起して活躍した。」というように
ただの年代記のようになってしまっている部分がままある事も否めません。
また、作家というのは文体、即ち言葉・言い回しや本人なりに解釈した世界観を描いてこそ、それに対して読者は共感したりまたはその反対であったりするのではないか、
作品を通してその作家の頭の中を覗いたり、
その人の人間性から滲み出る、いわば染み付いた「クセ」のようなものを見つけ、感じ取る事が読者の愉しみなのではないかと個人的に考えています。
そういう点では、言葉の選択も世界観も全体的に無難に無難にしすぎてしまっているようで、正直あまり面白みは感じませんでした。
この作品の帯には
「『誰々(巨匠とされる作家名)』・『誰々』・『誰々』達に迫る!藤堂高虎の生涯を描いた力作!」のような感じで本作品の謳い文句が書いてあったのですが、
誰かに「迫る」のであればそれは皆自由であるし、なにも巨匠に「並ぶ」とは言っていないので確かにそれなら語弊は無いな、と妙に納得してしまいました。
上杉かぶき衆 (実業之日本社文庫)
上杉景勝、直江兼続に係る、上杉家の人々の短編集です。
有名な前田慶次郎や、直江兼続の弟の話など、それぞれとても興味を持って読めました。
中でも、私が一番よかったのは、謙信の後継者争いに敗れた三郎影虎の話です。戦国時代の過酷な運命の中で、自分の立場に苦しんだり、納得しながら生き抜いていく姿に引き込まれました。
それぞれの短編が単なる史実をなぞるだけではなく、その人物の心の中にまで生き生きと描かれていてよかったです。
風魔(上) (祥伝社文庫)
純粋に面白いです。上・中・下と長いのですが、苦にはなりません。文面も読み易いのに決してチープではありません。
他にも忍者を主人公にした物語を多く読んできましたが、これはお勧めです。
虎の城〈下〉智将咆哮編 (祥伝社文庫)
己の才能と評価を殺し、世間の荒波を乗り切る高虎の生きざまは、まさに経営の修羅の道である。地道な功績を上げる作業と行動は、戦国時代という中でも重要視され発揮される。
才がありながら人の心が読めなく没落していった秀吉や三成を、己の事のように反省し、成功している家康からも、多くの反省を見つめる高虎の姿勢。
この本から学ぶ点は多くある。