ダ・ヴィンチ・コード(下) (角川文庫)
三冊セットで読みましたが、まず言いたいのは三冊にする必要はないんじゃないかってこと。二冊でいいと思う・・・カラー写真は嬉しいけれど。
ミステリーとしてはソコソコの面白さで、ここまで評価されるほど斬新な魅力はないんじゃないかと(^^;)キャラクターに愛着がもてたら楽しいかもしれないけど、もうちょっと知的なミステリーを期待してたので肩透かし。やたらとモナ・リザを強調した表紙はちょっと違うんじゃないかな、と・・・。
宗教、美術の知識ゼロで興味がない場合はあまり楽しめないかもしれませんが逆に詳しすぎるとダメかも。
亡国のイージス 下(講談社文庫)
上巻の最後と同様、読者が『えっ!』というような“どんでん”があります。現実離れしている内容ではなく、実際の政治もこんな感じなのだろうか…と考えさせられます。
また、日本人として、平和についても考えさせられる一冊です。
しかしながら、最後はスッキリと終わってくれるので、後味の良い作品です。
“It”(それ)と呼ばれた子 幼年期 (ヴィレッジブックス)
まず、評価について。
この本に☆で評価っていうのはどうなん?と思います。・・が、
呼んだ時の衝撃がすさまじかったので5つにしました。
あと、フィクションなのかノンフィクションなのかについて私の意見。
wikipediaにて作者について調べました。
すると目次から『批判』のところに目をやると、
『2000年に新聞「ニューヨーク・タイムズ」がデイヴ・ペルザーの弟にインタビューしたところ、「It"(それ)と呼ばれた子」には相当な誇張や歪曲が入っていることを明らかにした。彼は兄のデイヴに関して、「ナイフで刺されたことは事実だが、血は一滴もでなかった」、「里親に出されたのは放火や万引きが酷かったから」と証言した。加えて、デイヴの祖母も「あの本はフィクションとして売るべき」と発言した。』
とあります。この文を読んで思ったことは、作者の家族の発言なので嘘か真か分からず(弟も虐待を受けていたのなら弟が嘘を言うのはおかしいので記事はそのまま真実と受け止められますし、弟は虐待を受けていないのなら、傍観者かもしくは加担者という可能性がある為もしそうなら真実をそのまま述べずに誤魔化したりするかも知れません。本によると酷い虐待を受けたのは作者のみだそうな。)、また記事を書いた者が正しく書いているかどうかも定かではなく、おまけにニューヨークタイムズという新聞はかなり捻じ曲げた表現を持ち入ります。客観性があるとは思えません。残念ながら真実は謎のまま・・ですがそれでもかなり酷い虐待があったのは事実のようですね。上の記事で「血は一滴もでなかった」けど「ナイフで刺されたことは事実」と作者の弟が認めています。結論を言うと誇大表現を用いた可能性はあるものの、虐待があった事やその内容はほぼ事実でしょう。それに読めば分かりますが、これを気分が悪くならずに読める人は異常です。多くの人はこの手の本は気の毒だから読まないし読みたくないと思います。という事はこういう、人が手に取りたくならないジャンル本をわざわざ出しているのだから、売れたくてあれこれ色んな表現を用いて嘘八百を並べている訳ではなさそうです。その反面、誇大表現を用いたとしたら、それの説明は容易に出来ます。より同情をひきたいだとか、ノンフィクションでも一応小説なので表現上そうなったとか。大体小説というのはゴーストライターが居るもので、加筆修正した可能性もありです。
では本題に。。
もう何年か前に読んだのですが鮮明に覚えています。初めは良いお母さんだったし幸せな家庭だったのに壊れていったんですこの家族は・・私は涙流しながら物凄い気分の悪さに悩まされながら「どうして?」という疑問が次々と頭の中に浮かびました。本屋で見かけてから買い、手にとって読んで読み終わり、最初から最後まで「何故?」とずっと心の中で問いかけました。読めば答えが出るのだと思いながら。周りの人間まで何故こんなに冷たいの?助けてくれた人達はどういう人生を送ってきたのだろう?私がこの子だったらこの人の立場だったらどうしてただろう?何故作者はこんなに強くてずっと母親を信じてたのだろう?今この人達は何処でどうしているのか?、など。この本のテーマは難しくないけど難しいんです。この難しさというのは人生そのものでもあります。そしてその難しい道を選ぶのがとても大切な事だと思います。例えば普段感謝している人にありがとうと言えない。でも、言うのがとても大切です。私達の日常には、そういう沢山の難しさが存在していると思います。虐待を止めるのも、しないのも、そういう事が大切なんだと思います。だから、読んで良かったと思いました。
Deep River
ファンではない自分だが、この時期の詞の深さが魅力的に映り、そして今作の
白黒の写真と「DEEPRIVER」という主題を見て、買おうと思った。というのは
2点。白黒写真とは被写体の精神を写しだすものだし、そして「DEEPRIVER」
という題は元々黒人霊歌に有名な望郷の曲があり、その二つから彼女の精神の
深い河を見ることが出きるのではと思ったのだ。(※深い河とはヨルダン川
で、その果てのカナンの地{約束の地}を夢見、天国を夢見た奴隷たちの魂を
歌う曲)
聴けばどの詞も、女の文学的色彩感覚が溢れていて驚いた。幸せに向い顔を上
げて歩くヒロインが描かれても、何処かことばの世界観に「あはれ」儚さや切
なさも感じさせられる。一方でこえの繊細さが、そのことばたちのしなやかさ
に相応しい表現となり、それらにいのちを与えていた。
こうして気付かされたのは、彼女の楽曲が優れているのは、類稀な旋律やリズ
ムのライティングセンスのみならず(ノリだけなら他に吐いて捨てるほどあ
る)、ある種の「暗さ」(しかも極めて女性的な)を奥底に湛えているからで
はないか。普段気丈に振舞う子ほど、内側に繊細な感覚と闇を持ち合わせる。
そこから発する彼女の歌声は前向きな歌でも、きゃぴきゃぴせず落ち着き、詞
は現象を俯瞰した冷静さを秘めている。そうかと思えば葛藤の純粋さも光る。
そういう内省的な詞中のヒロインは、小説の一場面を鋭く切りとった描写力に
生きており、リスナーは目を閉じるとそのヒロインと共に感じ、疾走し、次の角を
彼女と共に曲がりにゆくのだ。
今作は、宇多田という作家が既に大成功を収めた人間なのに、何処かこころ満
たされない空の部分があり、それを埋めようかという風に詞がどんどん深くな
っていることを感じられる。そのストイックな姿、空からの引力に吸い寄せら
れる魅力が今作だ。