職場のメンタルヘルス実践ガイド―不調のサインの見極め方診断書の読み方から職場復帰のステップまで
この本は今までにない切り口で、企業の人事担当者や新米産業医などにとって、大変参考になると思います。意図も明確で、文章もたいへんわかりやすいです。
ただし、おそらくある程度の大きさの企業で、人事部も数人、および、数人の産業保健師・産業カウンセラー・産業医が常勤しているような企業でないとできないことも普通に書いてあり、中小企業での導入についての具体的なアドバイスももっとあるとよかったと思います。
また、実際の体験談では、成功体験ばかりで、失敗体験やその反省などもあるとより参考になったと思います。
著者のスタンスは、「ラインケア(上司によるケア)」がとても大切!とのことで、個人的には賛成です。内容の多くはその上司(管理職)向けのコミュニケーションの具体的なアドバイスであり、わかりやすいです。
しかしながら、ラインケアのもう一つの大切なポイントである「人事部や産業医・産業保健スタッフ等」に”つなぐ役割”にはあまりフォーカスしておらず、この本を読んだ上司(管理職)自身の負担が増えてしまうのではないかと感じました。
安全配慮義務違反のリスクや上手くいかなかった場合の企業のリスク(Medical, Legal, Social Risks)については、「?」と感じる部分もあり、一般企業で真似をして、上手くいかなかったら危ないかもしれないと感じました。
企業のコストリスクについての意識も記載されており、この手の本にありがちな優しいだけの内容ではありません。そこが大変良かったと思います。