Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)
『SFが読みたい! 2008版』国内篇第2位に選ばれた話題の作品なのに、誰もレビューを書いてないことに驚いた。でも書いていないことに納得してしまった。なぜならこの小説は誰かに紹介しづらい作品であるからだ。
18の短編で綴ったこの連作集は、専門用語が溢れる数理的かつ複雑なSF小説だ。
深読みすればどこまでも深読みできる難解さと綿密に練られ過ぎてる構成を完全に理解できるかというと、それは難しい。だからこの作品はこうだよと人に勧めづらいのだ。
畳の下からフロイトが続々出てきたりと内容もかなり奇抜である。
実際、私自身も何が書いてあるのかよくわかっていない。それでも軽妙かつ饒舌な語り口とひねくれたユーモアに引かれて、スラスラと読んでしまえる面白さがある。深読みも軽くも読める作品だ。
この奇妙さをどう表現して、人に紹介すればいいのかわからないが、一読の価値はある作品であることは間違いない。真っ黄色い綺麗な本の装丁につられてジャケ買いするのも悪くない。
あと、誰かレビューを書きましょうよ。せめて5、6個ないと作品のちゃんとした紹介ができない・・・。
完全読本 さよなら小松左京
小松左京の死によって僕の中では、改めて昭和が終わった感じがする。
昭和の巨人の死だ。
雑誌にしても新聞記事にしても通り一遍の記事で、村上春樹がノーベル文学賞をとるかどうかという記事とは正反対な扱いだ。
手塚治虫が死んだ時に感じたように、社会が先駆者に与える冷たい仕打ちに、今回もがっかりさせられていたところだった。
手塚の追悼号の白眉には朝日ジャーナルの「手塚治虫の世界」や、宮崎駿氏の熱い追悼文、手塚治虫に『神の手』をみた時、ぼくは彼と訣別した」が掲載された『COMIC BOX』があった。
小松左京氏にもそんな本が出ないだろうか待っていた所、徳間書店からついに真打ち登場である。
この本は、小松氏への愛と尊敬が溢れている。
これから、小松作品(含む映画)に触れようという人にもとっておきの入門書となっている。
発見された新作原稿や未収録作品も素晴らしいが、
小説のみならず、映画の論評を集め、さらに70名近い人に追悼アンケートを行い、好きな作品を紹介している。
また、追悼対談や、寄稿も、小松氏の身近な人から3段組、所によって4段組で300ページという
尋常じゃない量を集めており、内容も本当に心のこもったものだ。(CDは未聴、これから、ゆっくりと楽しみたい)
そしてなにより、1967年SFマガジンに載った小松氏の「”日本のSF”をめぐってミスターXへの公開状」、はじめて読んだ文章だが、
朝日新聞の匿名記事におけるSF批判に対する反論記事だが、この火の塊のような情熱はすごいと思う。
手塚や、小松等の第一世代のSF作家らは、道なき所に道を作り、まさに寝食を忘れて、SFや漫画という表現に打ち込んだだけに、
尋常じゃない情熱が溢れている。
とにかく手にとって、読んでいると一緒に熱くなってくる本で、こんな本を待っていたんだ、と語る自分がいた。
いまや、マンガやアニメは日本を代表する「文化コンテンツ」で上手に利用するとどれだけでも金を生み出す打ち出の小槌だそうで、政治家も省庁も国をあげて積極的に支援をしていきたいそうである。
僕らは、子供心に、親や新聞がマンガの事を低俗な分化として糾弾していた時のことを思い出す。
手塚の漫画が低俗で悪質だと聞いた時の理不尽な糾弾に対する怒り。
SFがくだらないものと蔑まれ、世界文学や日本文学と称する作品名や作家の名前を上げ、それと較べていかに低劣で、くだらない読み物にSFが属するのかを諭す教育者や親たちの無理解。
だからこそ、僕達は、漫画を応援し、同様に低俗な読み物であるSFを愛したのではなかったのか。
日本のマンガやアニメには必ずといっていいほどSF的なフレーバーが加えられている。
戦後漫画の無意識を生み出したのが手塚治虫であるのならば、
クールジャパンの無意識を生み出したのは、小松氏等のSF作家たちではなかったのか。
3.11後の現在だからこそ、小松氏やその他の先駆者に追悼の意を表し、作品を読み返し、未来を見据えて、やれば出来るんだという気持ちを心に据えて、力強く進みたいと思う。
この本は手に入れたその日から「僕の宝」なりました。
首都消失《デジタル・リマスター》 [DVD]
実は、この作品大好きです。(星は個人的点数
子供の頃テレビで見たとき、都市を怪物のように稲妻を轟かせながら覆う灰色の雲。
衛星から見た、関東地方にかぶさる異常なまでに丸い雲。
そして政治的な事をバッサリ切り取り、正体不明の雲と戦う人々。
その攻防に、ドキドキしながら観てたものです。
何より、ただの雲が怪物に変わるその怖さは一種のトラウマになっていたときもあり…。
そんな事を思い出しつつ、DVDが出たというので購入。昔の印象そのままでしたね。
パッケージも、当時のポスターの図柄を使い迫力満点。ある意味、このパッケージ通りの無意味な迫力の映画です。
当時原作を買って、中身が大人の世界に入り込むやいなや「つまらない」と放り投げたのもいい思い出。
原作ももちろん面白いのですが、映画はコレで決まりです(笑
日本沈没 [DVD]
日本が本当に沈むのか?どんな風に?日本人はどうなる?全てにエンターテイメントとして答を出しながら、国家、人間、地球、それぞれのありようを観客に問いかける傑作です。
特撮映画の集大成と呼ぶに相応しい迫力ある画面、丹波哲郎の首相はもとより、役名が定かでない一般人、警察、自衛隊等々の迫真の演技。
日本沈没が明らかになってからの情報の統制と失敗、海外の感情等々群像劇としてもとてもリアルです。その他全編通して切れまくる田所博士(小林桂樹)や、仮面ライダーを終えたばかりの当時の藤岡弘、さらに本人役で登場の竹内博士(東大)などなど、映画として「熱い」。多くの人にぜひ観て欲しい映画です。