ディーラーをやっつけろ! (ウィザードブックシリーズ (109))
おもしろい本。ブラックジャックは、特にカードが残り少なくなったときには、それまでの札の出具合に応じてプレーヤーに確率が有利になる場合があることを指摘してその機会の検出と利用法をルール化、アメリカのギャンブル業界を震え上がらせた一冊。
が、邦訳は現在の状況を書いていないので不親切。ラスベガス(ネバダ州)では、本書にあるカードカウンティング自体が違法。また気に入らない客は理由なしに放り出せるので、カウンティングをしていると思われたらすぐにピットボスから出て行けと言われる。これに対抗するためにチーム式のカードカウンティングが編み出され(詳細はメズリック『ラス・ヴェガスをブッつぶせ』参照)たが、バレるとかなり不愉快な目にあうとのこと。そしてプレーのルールも変わり、シングルデックのテーブルもほとんどなくなり、さらにナチュラルのボーナス得点が減らされたために、長期的には胴元側がかなり有利となってしまっているので、昔のようなうまみはまったくないとのこと。
また本書のルールは結構複雑で、きちんと実行するのはなかなか困難。出版当初は、これで儲けようとしてカジノにきたものの途中でまちがえたり、しばらく負けが続くと本書のルールを守る気をなくしてしまう付け焼き刃の素人がたくさんやってきて、みんなかえって損をしていたとのこと。本書は、確率をもとにした厳密な運用という点では非常におもしろいし歴史的意義もあるが、いまこれを持ってラスベガスに行こうとしている人は、考え直したほうがよろしいですぞ。
ラス・ヴェガスをブッつぶせ!
ブラックジャックのシステムがいかに研究されつくされているか
まるきりのシロートの私にはそれが一番驚きだった。
中でも感心したのはカウンティングの理論(大きく賭けるタイミング
を推し図る方法)だが、生憎とこちらはたとえわかったとしても、
ややこしくてとても自分が出来るとは思えない。だいいち、いくら
勝つ確立を上げたところで運のない自分には無意味であろう(笑)
それにしてもラスベガスの各カジノが、何かあれば勝手に客の部屋に
押し入り、地下に連れ込んで脅したりと、まるで薄汚い下水のような
連中だったのには、一気に夢の萎む思いであった。
思わず「ほんまかいな…」と鼻白んでしまった。
映画化されるらしいが、どうか華やかな成功のシーンのみを
痛快に描いてほしいものだ。いくらあざやかな勝利にあこがれても、
変装してコソコソ賭場にもぐりこんだり、仲間とそれとバレないよう
にずっと無関係を装ってすごしたり、そうした姑息さは、決して
「自分もああなりたい」とは思えない。
読む前、読中の高揚感とは裏腹に、妙に読後感の悪い作品だった。
ラスベガスをやっつけろ!
なんだか妙にいい気分になるアルバム。ちなみにイントロダクションにかかっている曲は、"My Favorite Things"です。>あいうえおさん 映画サウンド・オブ・ミュージックでも歌われています。
ラスベガス・71
自分は誓って違法ドラックのジャンキーではないけれど、これにとても共感できる。できてしまう。 自分の中にそういうものが無い人には、これは、荒唐無稽な不良達の無茶苦茶物語のようなものとして楽しめるだろうし、有る人には、それだけでは片付けられない何かが、読後に残るはずです。ハンター・トンプソンの現在唯一の普通入手可能な、訳本。損はない、と思います。
GONZO -ならず者ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンのすべて [DVD]
今年どうしても観たい映画のひとつだった。しかし震災が起こって、それどころではなくなってしまった。そして今やっとDVDで観る事がかなった。同じ思いの方も多いのではないだろうか。
「ならず者ジャーナリスト ハンター・S・トンプソン」彼の破天荒な生き様は、数多の伝説となって知られている。
ローリングストーン誌編集部で、注射器でラム酒をヘソにぶちこむ(実話)
自宅には20挺以上の銃・常に装填状態。サブマシンガンでイノシシ狩り(実話)
自分が支持する大統領候補の政敵を、捏造スキャンダル記事で追い落とす(実話)
かねての予告通り拳銃で自殺し、息子は敬意を表し、空に向かって3発撃った(実話)
'60年代に「GONZO(風変わり、異常、偏った主観、の意)」という、従来の常識を覆すジャーナリズムのスタイルを確立したハンター・S・トンプソン。
この映画は、ハンターの家族や知人らによる前例のない協力を得、何百枚もの写真に200時間を越える録音テープ、未発表原稿や手紙、秘蔵映像を入手。そして世界初となる私有地での撮影を実現。彼を知る人々のインタビューと、本人の言葉のみで構成された(本人の手記の朗読はジョニー・デップだ!)伝説の実像に迫るドキュメンタリーだ。
トンプソン伝説の中で最も有名なもののひとつに、当時謎の存在だったバイク集団「ヘルズ・エンジェルズ」の取材リポートがある。彼はエンジェルズの中にどっぷり浸かって1年間生活を共にし、一緒にバイクで暴走し、ジャーナリズムの常識だった「客観性」と真逆ともいえる、自らが物語の主人公になるという極めて「主観的」な取材を敢行。これが彼の取材スタイルの原型となり話題を呼ぶ。そして、長年の盟友となるイラストレーターのラルフ・ステッドマンと初めて組んだケンタッキー・ダービーの取材では、いきなり現地でLSDをステッドマンに与え、保守的なコミュニティーで育ったステッドマンは「初めてぶっ飛んだ幻覚状態」で下品な南部の上流階級の観客たちをグロテスクにデフォルメした戯画にし、トンプソンの憎悪に満ちた文体はその狂気のイラストと絶妙に融合し未曾有の世界が誕生。ここに「GONZO」ジャーネリズムのスタイルが確立される。
そして、テリー・ギリアム監督、ジョニー・デップ主演の映画『ラスベガスをやっつけろ』で知られる、ドラッグ漬けのハチャメチャなオートバイレースリポート道中記など、その後の伝説には枚挙にいとまがない。
その奇人・変人ぶりばかりがクローズアップされてきたトンプソン。このドキュメンタリーでは、錚々たる顔ぶれの「知人」たちが銘々の言葉でトンプソンを語る。
トンプソンの最初の妻、2番目の妻、息子(空に発砲した本人)といった家族に、ヤン・ウェナー(ローリングストーン誌共同創設者)、ラルフ・ステッドマン(トンプソンの盟友・イラストレーター)、ソニー・バージャー(ヘルズ・エンジェルズ・オークランド支部長)、トム・ウルフ(トンプソンの録音テープを流用して「クール・クール LSD交感テスト」で売れっ子になっちゃった作家。「ライトスタッフ」の著者)、ジョージ・マクガバン(トンプソンが熱狂的に支持した元大統領候補・上院議員)、ジミー・カーター(第39代アメリカ合衆国大統領。これまたトンプソンが支持)etc.etc.・・・。
彼らの言葉から浮かび上がってくる、トンプソン像は。
時系列でその半生を追い、「伝説」のみでなく「人間・トンンプソン」・・・彼がただのアウトローでなく、ベトナム戦争を、ニクソンを憎み、アメリカという国を変えようともがいていた心の裡、一方でスタージャーナリストとなってしまった事で道化と化していく自分自身への葛藤、を描きだしてゆく。
「アメリカン・ドリームはまだ見つからない・・・」
トンプソンに興味のある方なら、間違いなく必見!である。