日本史七つの謎 (講談社文庫)
松本清張他、などといってますが彼はあくまで対談者の一人ですので彼の歴史推理を期待して買うとがっかりします。しかし参加者が歴史学者と作家半々という構成は良い。ゴリゴリのアカデミズムでもなく、作家の垂れ流し座談会でもない興味深い読み物になっている。
ひどい感じ──父・井上光晴 (講談社文庫)
幼少の頃から「嘘つきミッちゃん」と呼ばれた井上光晴氏は、ご自分の経歴を偽り、家族も知らなかったそうです。長女の荒野さん(本名)の名前も、人と変わった劇的な一生を送るようにとの願いから「嵐が丘moor・あれの」と名づけられました。荒野さんによると、経歴詐称や数々の嘘も、何事もドラマチックな展開や結末を図る天性の作家であるサガによるものとかばっていらっしゃいます。お母様も毎日3度、居酒屋のような食事を誂え、食事中にあれが食べたいと他の物を所望すると、それに答えるという献身ぶり。瀬戸内寂聴氏ご本人が、出家の原因は井上氏であると語っているように、女性関係も多々あったご様子ですが、家族が献身せずにいられない井上氏の魅力的な側面が伺えます。
全身小説家 [DVD]
井上光晴という作家を知らなかったのですが、この映画を見て小説を読んでみたくなりました。井上光晴は女性と見れば容姿年齢区別せずに口説き、ウソをつきまくります。「えり好みせず来たたまはみんな打つのは偉い」「ウソつきみっちゃんが小説家になった、天職だ」「ウソでも表現してしまえば勝ち」という埴谷雄高の説明に思わず納得。しかし、あんなに難解な小説を書く埴谷雄高が、こんなに解りやすく話ができる人であったとはおどろき。ウソをつかれようと、利用されようと、井上氏とのふれあいを本当に喜んでいる回りの女性達(瀬戸内寂聴も含めて)が美しい。小説を書くとはどういう行為なのか、この映画で初めて知りました。原一男監督万歳!
運命じゃない人 [DVD]
誰もが知る有名俳優ばかりをこれでもかと揃えた豪華キャスティング、
あるいは大名海外ロケ、時代錯誤の物量誇示、子供だましのド派手なCGやワイヤアクションのオンパレード…
洋の東西を問わず、そんなんばかりが跋扈する昨今の映画界に一石を投じた作品だと思います。
これを見て、映画というものは優れた脚本がなによりも大切なのだという至極当たり前のことに
あらためて気づかされた人(私のような素人のみならず、作るのを職業としているギョーカイの
人たちも含め)
はかなりいたのではないでしょうか。
もちろん初メガホンとは思えない絶妙な演出、随所で光るシャレた台詞も見逃せないのはいうまでもありませんが。
ひどい感じ―父・井上光晴
『虚構のクレーン』というタイトルに惹かれて読んだのが、井上光晴という作家を知った最初だった。無骨な文章なのだけれど、その分力があって、ひ弱なインテリなんて問題外、そんな圧倒的なパワーで押しまくられ卒業論文は井上光晴を選んでしまった。しかし、この本を読んで、やっぱり井上光晴に騙されていたか・・・という想いを強くした。でも、実際には炭坑で働いたことはなかったなんて、それはあんまりじゃないと毒づいた。「嘘つきみっちゃん」の面目躍如である。