水爆と深海の怪物 [Blu-ray]
海軍司令官マシューズ(ケネス・トビー)が指揮するアメリカの原子
力潜水艦が、テスト航行中に謎の巨大物体に襲撃される。艦尾に
付いた組織サンプルを頼りに、海軍に招かれた海洋学者ジョン・
カーター博士(ドナルド・カーティス)とレスリー・ジョイス教授(フェイ
ス・ダミューア)が、その「物体」の正体を突き止めようとする。調査
の結果、その組織が、巨大なタコのものということが判明するのだ
が…。
1981年の『タイタンの戦い [Blu-ray]』まで続くことになる、レイ・ハ
リーハウゼンとチャールズ・H・シニアのコンビの記念すべき第1作。
原子力時代における核の恐怖を背景にしたモンスター・パニックも
のの佳品だ。ハリーハウゼン自身が、ドキュメンタリーや本Blu-ray
のコメンタリーで述べているように、予算の関係で、タコの足を5本
に減らしてアニメートしたというのは有名な話。
『絶海の嵐 [DVD]』、『海底2万マイル [DVD]』、『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト [Blu-ray]』
などを挙げるまでもなく、海洋冒険劇では、大ダコ、大イカは、最大
の敵役として作品を盛り上げて来た。英語で”Devil Fish”というよ
うに、くねくねと蛇のように自由に動き回る複数の触手を武器に襲
いかかる姿は、まさに悪魔そのもの。本作では、その悪魔である大
ダコを文字通り主役に据え、ハリーハウゼンが魅力たっぷりに動か
してみせてくれる。海中から巨大な触手が現れ、漁船を海中に引
きずり込んだり、金門橋に巻き付いて押しつぶしたり…力強く、時
に情感さえ漂う画作りは、さすがハリーハウゼンの職人技と思わ
せる。予算的にも、時間的にも無理だったことは承知しているもの
の、もっともっと大ダコのシーンを観たいと思わせるほど映画的興
奮に溢れている。
そういった特撮場面のイメージの豊潤さに比べると、ドラマ部分の
貧弱さが目立つ。ドキュメンタリー調(ストック・フッテージとナレー
ション)で始める硬質の導入部から一転、女性教授を巡る三角関
係の陳腐で無駄な描写は、作品の緊張感を損なうことおびただし
い。特に、本作の原作と脚本が、(やはり原爆実験が絡んだ)巨大
モンスターものの傑作『放射能X [DVD]』のジョージ・ワーシング・
イエーツが担当していることを考えると、そういったシーンを描き込
んだことは(おそらく、成人、特に女性客を意識してのことだろうが)、
なおさら残念だ。国家の一大危機を担当している主要な3人が、
緊急時に個人的な色恋沙汰を演じているのは、何とも真実味に
欠ける。結果、作品全体のドキュメンタリー調の基調が崩れてし
まったといえるだろう。ハリーハウゼン作品の中では、あまり語ら
れることがなく、地味な扱いなのは、そんな脚本の粗が原因なの
かもしれない。
本Blu-rayは、35mmマスター・ポジからHDテレシネ、レストアさ
れたマスターを使ったもの(2010年に発売されたDVD盤『水爆と深海の怪物(1枚組)モノクロ&カラーライズ版 [DVD]』
も同一マスター使用)。オリジナル白黒版とカラーライズ版(ハリー
ハウゼン監修)が収録されている。既発売のBOXからの待望の
廉価単品発売だ。白黒版は、諧調が素晴らしく、グレイン(フィル
ム粒子)が重く乗った画質。フィルムの質感が好みの人には嬉
しい画質だが、嫌いな人には若干ざらついたように感じられるか
もしれない。カラーライズ版は、ハリーハウゼンの監修の下作ら
れたということもあり、80年代半ばの酷い質のコンピューター着
色とは雲泥の差。部分的に平板なところもあるが、全体としては、
丁寧な着色という印象だ。5.1ch True HDの音声も明瞭。
特典には、コメンタリー(ハリーハウゼン、ランドール・クック、ジョ
ン・ブルーノ、アーノルド・クナート)、ハリーハウゼンが同作を語
るドキュメンタリー”Remembering It Came From Beneath The
Sea”、大学でモデル・アニメを学ぶ学生の解説”A Present Day
Look At Stop-Motion”、ティム・バートンによるハリーハウゼン
へのインタビュー、作曲家ミッシャ・バカライニコフに関するドキュ
メンタリー”Movie Music's Unsung Hero"、コミック・ブック、予
告編集…と盛りだくさんで、どれも実に楽しい。
JOY DIVISION (デラックス・エディション) [DVD]
ジョイ=ディヴィジョンの元メンバーである三人のインタビューには、それぞれの際立った個性が濃厚に表れている。
屈折した性格のバーナード=サムナー、豪快なピーター=フック、温和なスティーヴン=モリス。「つきあいは殺人の刑期よりも長い」というサムナーとフックの、長年にわたる確執も所々に窺える。
「今でも、死んだイアンと、それを止められなかった自分自身に対して腹が立つ」とスティーヴン=モリスが語る、怒りと悲しみの感情が、後の二人からも共通して感じられる。三人三様の言葉と表情から滲み出るイアン=カーティスへの思いと、単純な言葉では表現しきれない三人の深い関係が、ストレートに胸を打つ。
未公開のものも含めた豊富な資料映像は、ファンにとって興味深いものであることは間違いない。しかし、それだけではなく、「ジョイ=ディヴィジョンという完璧な素材をできるだけありのまま提示したかった」と監督が語るこの映画は、観る者に生きることへの問いかけを生じさせる。
タッチング・フロム・ア・ディスタンス―イアン・カーティスとジョイ・ディヴィジョン
他のレビューアーさんもコメントされているように
非常に淡々と感情的なムラ等が一切ない本。
ジョイ・デイヴィジョンのイアンであるのは確か。
執筆がイアンが死んでから10数年後に書かれているあたりで
それまでのデボラと他のメンバーとの折り合いの悪さや、
突然にあのような形で自ら命を絶ってしまった夫へのふがいなさや
取り残された喪失感が鈍く残ったまま書かれてるあまり淡白。
イアンの疾患、不倫から起きた崩壊、それについてもあくまでも
静かで核心には触れていないのも否める。忘れ形見の娘への
配慮なのかもしれない。しかし、アントニオ・コービンによる
映画化には前向きに出ていたデボラなので、本心はわかりかねる。
ただ、イアンが書き残した作品とデータがきちんと記載されていて
それに関してはCDやアナログ音源を聴く時の最終テイクに
かなり嬉しい内容。
あまりにも短く消えたミュージシャンだが、詩の才覚は
イアンの魂なのである。
クローサー
まったくルーツが感じられない脅威のアルバム。ここにはパンクもニューウェーブもアートパンクのかけらも無い。リズム一つとっても人々を躍らせる、というより砂漠の中で当ても無く繰り返されるリズムという感じだろうか。たとえば、ジョージ・オーウェルの(1984)の中の街でこのアルバムが流れていたなら、それはピッタリのbgmじゃないだろうか。
ロビンフッドの冒険 [DVD] FRT-063
この映画の物語は上の「商品の説明」に事細かく書かれているのでそちらを読んでいただくとして(笑)、ここではこの映画のウラ話を少しばかり・・・。
この時期のエロール・フリンは美男スターとして、全米スターのランキングでも10位以内に入るほどの人気を誇っていました。35年の「海賊ブラッド」のヒットからは、この映画でも共演している、O.D.ハビランド、監督マイケル・カーチスとのコンビが好評で、この映画もまさに血湧き肉踊る映画として大きな期待を持って製作されたのです。ところがそんなE.フリンも普段はアルコール漬けで、女性問題もたびたび起こしていました。監督M.カーチスはそんな彼を嫌い、ハビランドもプライベートではフリンを全く相手にしなかったといいます。それでも評判の高い映画が何本も出来たというのも不思議なのですが、アルコール依存症のためか、晩年のフリンはボケて短いセリフを覚えることも容易ではなかったとか。
この映画の製作は‘38年。当時としては珍しく色彩映画として製作されています。それまではたとえば、屋外の緑色が‘灰色’だった「砂漠の花園」や色彩が地味すぎた「スタア誕生」、当時の映画雑誌にさえ‘あの程度の色彩・・・’と酷評されていた「翼の人々」(未見)等から考えても、この映画の色彩はバランス上実に鮮やかだと思います。映画の出来としても素晴らしく、これは‘名作’に色彩が加わった、当時としては画期的な映画だったのです。
個人的には世界初の色彩劇映画「虚栄の市」や、アナベラ唯一のカラー作品「暁の翼」等もぜひDVDとして出してほしいと思います。