はつ恋 [DVD]
I.ツルゲーネフの小説「初恋」を、昭和50年の日本に置き換えた作品。若き日の仁科亜希子が、儚い生涯を終えるヒロイン「るお」を演じている。17歳の主人公・一彦には当時大人気だったというアイドル、井上純一が抜擢された(演技のほどはともかく、初々しさでいっぱい)。
フランス映画を意識した映像と音楽で、クリスチャン・ルグランによるバロックのスキャット音楽が効果的。しかし、白い船、白いパラソル、白いドレス、そして白い海・・・。否が応でも、この物語の最後にあるのは死と別れであると分かる。しかも、「るお」と、一彦の父・直彦との禁じられた関係に結びつく鍵が、ペットの犬であったり、昆虫たちの動きであったりと、台詞や音楽をなるべく押さえた作りにも幸せな結末は訪れないと分かる。
「るお」は自由奔放だが、何をどうやって毎日暮らしているのかは描かれていない。また、女友達はひとりも出ない。学生時代の様子も伺えない。それが余計に、「るお」が直彦にすべてを賭けたことを匂わせる。ゆえに、一彦の心の傷みも大きい。
「あの夏の記憶を消し去ることー」 愛すべき存在を一気に失い、大人へ変わるろうとしている一彦の姿に、「Yesterday When I was young」のメロディーが重なるとき、こちらも心が傷くなる。
「るお」のすべてとなった直彦には、45歳ながらも既にロマンスグレー、ナイスミドルとなっていた二谷英明。日活のアクション時代や特捜最前線しか知らない方には、貴重な作品かもしれない。
ヒカリサス海、ボクノ船 [DVD]
一度負った深い傷は、勇気を出して苦しい治療に取り組まないと、本当に治ることはないという話。(傷つくことを恐れていては先に進めないという、まぁありがちなテーマ。)
仁科仁美さんは笑顔が可愛いのだけど、残念ながらこの作品ではほとんど笑わないので、彼女の魅力や美しさが十分に伝わってきているとは言い難い。
初主演とは思えない上手さと安定感があり、女優としての才能があることは随所で感じられるが、ただその才能を開花させるほどの演技は要求されずに終わった感が否めない。(彼女の才能に見合う役でも、作品でもなかったことが残念。)
3回あるヌードシーンは、作り手としては奈々子が心の殻を脱いだことを表現したつもりかも知れないが、ほとんど伝わってこない。寒い中、意味なしに脱がされた仁美さんがちょっと可哀想…。(ただこのシーンがなければ本当に何も残らない作品になる。)
というわけで、仁科仁美さんの大ファンの方々以外の方には、購入はオススメしません。レンタルで十分でしょう。
いつか読書する日 [DVD]
駅の広告でポスターを偶然見かけて、観に行くぞと思っていたのに。
見損ねてしまいました。
本が出ている事を知り、即座に購入しました。
読み終わった後、頭の中で想像すると情景が浮かんできました。
映画を見ると、また違ったイメージが頭の中に浮かんでくるかもしれません。
二人の役者のやりとりが、本の中の台詞を通して、ふわりふわりと浮かんでくるのです。
本が小説という形でなく、シナリオ形式だから、そう思うのでしょうか。
歳月をかけて甘い果実が実ったとき、人は幸せになれるのか。
それが、ほんのわずかな一瞬であったとしても。
哀しいとはいえず、けれど幸せとも言い切ることもできませんが。
これは大人の物語なのだと、自分に言い聞かせる、もう一人の自分がいました。
「子宮頸がん」―経験したからこそ伝えたい!
この2〜3年、マスコミが取り上げ、多くの人々にその名を知られるようになった子宮頸がんだが、検診の大切さや術後の後遺症など、まだまだ余りにも知らないことが多いことに驚かされた。
そもそも、子宮頸がんの細胞診が、がんになる前の異常な細胞を発見できる画期的な検診だということを、どれだけの女性たちが知っていただろうか。ましてや子宮頸がんは、性交渉をもった女性ならば、8〜9割が原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)に感染するということも……。子宮頸がんは女性が最初に出会うがんかもしれないのに、多くの女性は予備知識をもっていない。命にかかわる大切な情報をぜひ、教育の現場でも伝えてほしいと思う。
著者の仁科さんは、38歳で子宮頸がんを発症。発見がもう少し遅れていたら2年の命だったという。子宮のほかにも卵巣やリンパ節などを切除し、今も多くの後遺症をかかえていることに驚いた。本書のなかでは、口をつぐんでいたい後遺症についても言及。その体験は、すべての女性に読んでほしい。
巻末には約30ページの「子宮頸がん予防読本」がついている。読本には、子宮頸がんの原因や、素朴な疑問に答えたQ&A、子宮頸がんをめぐる海外の最新情報なども満載。アメリカでは、10代でも性交渉をもって3年がたつ女性たちには、検診を受けるよう勧めている(HPVががんになるには、5年以上かかるので)ことなど、日本の検診の有り様についても考えさせられた。予防読本の内容は、女性はもちろんだが、教育現場や行政の保健事業に関係する人たちにもぜひ読んでもらいたい。