第四巻でカトリは家畜番なのに奥様を元気にしたということで休みをもらったり、服を作ってもらったり、果てには
羊をひろったりとかなりラッキーです。でも、羊に「シロ」というありきたりな名前をつけ、かわいいでしょ?
という辺り、いかにも実際的で堅くて笑っちゃいます。麻の刈り入れの手伝いで、何度も麻を一纏めにするのに失敗した後、「できた!」と地味に喜んでいる辺り、カトリらしい。
また、カトリは独立運動に携わる青年アッキから勉強する大切さを学び、毎晩毎晩本を読み始めます。
本当に真面目一辺倒な女の子で、あぁ、がんばらなきゃな、という気にさせられました。
そんな、地味ーな話なんですが、どうしておもしろいんだろう?というのは相変わらずでした。
地味で真面目で何の面白みも無いはずなのに何度見てもあきない、おもしろい、というの、カトリ全巻に渡る共通のテーマです。
また、主人公の声優さんはアニメチックなアニメサイドの方らしく、世界名作劇場の中では新鮮で好きです。
風景にも温かみのあった第三巻とは違い、ここから数巻、太陽のほとんど出ない冬に向かって次第に厳しさを見せていきます。
フィンランドの素朴な、わびしい情景と静かな迫力のある音楽が、冬が近づいてきてより一層の調和を見せ始める
第4巻です。20世紀初頭のフィンランド、刈り入れの秋、なんだか厳しさが妙に伝わってきて、一層
真面目な登場人物たちの描写がリアルに見えます。
世界名作劇場『牧場の少女カトリ』の原作である。
結論を先に述べれば、アニメ版「カトリ」を観た方にとって
原作「カトリ」は拍子抜けするかもしれない。 拍子抜けする理由は二点ほどある。
原作の中の登場する人々たちは人を“大きな冷淡”を持っているように感じた。
他人を不審の目で見ているようであった。
アニメ版「カトリ」のような“温かさ”が欠如している。
原作において親切な人・不親切な人を含めて
普遍的な“人間の温かさ”があったどうか私は疑わしく思っている。
宮崎晃脚本によるアニメ版の方が人間らしさが現れいた。
原作とのアニメとの違いはカトリの努力である。
アニメではカトリはいろいろな人に出会って“夢”を持ち、
その“夢”に向かって仕事の合間をぬって必死に読書や算数に励む。
しかしながら原作においてはその“夢”を持つきっかけというものが与えられず
カトリが努力する姿勢は描かれていない。
最終的に原作のカトリに与えられるのは“結婚”である。
原作のカトリは“家庭”に押し込められてしまった。
原作が書かれた当時の社会では“結婚”することは女として「当然」と見られていたのであろう。
しかし現代において女性の将来は“結婚”だけではない。
その点で原作はアニメ版よりも魅力の点で下位に位置していると思う。
以上のように原作「カトリ」とアニメ「カトリ」を比較した場合、
私はアニメ版のほうが魅力があるようと思っている。
原作に対して過度な期待はしないほうが良い。
買うとすれば、アニメ版と比較する程度で望むほうがベターかもしれない。
・≪余談≫・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*アニメではシベリウスの曲が流れるが、原作では(当たり前だが)流れない。
*アニメ版「カトリ」を観た者にとってカトリと接する場合シベリウスの曲は不可欠である。
*アニメ版が“優”でありえるのは“偉大な”シベリウスの曲が
*流れるからだと私は思っている。