グレイヴディッガー (講談社文庫)
購入したのは約1年ほど前。現在までに3回読んでいます。
他のレビューアーの方もおっしゃっていますが、とにかくノンストップ痛快アクションです。
最初の40ページですっかり虜になり、それ以後読み切るまでこの本が離せません。
何を読んでいいか悩んでいる方、熱くなりたい方、すべての方にお薦めします。
気の利いたエンディングまでノンストップで読みましょう。
絶対に読んで損のない本です。
13階段 (講談社文庫)
時間が経つのを忘れて夢中に読んでしまった。推理小説の中に盛り込まれる「死刑制度」や「死刑囚の冤罪」といった社会性の高いテーマが、この小説に理知的な重厚さを加えている。複雑な人間関係と時間の糸が最後には一本の糸に絡んでいく。ここに推理小説の醍醐味を感じた。
あとウィットに富んだ会話は、イギリス人ぽくて、日本人がこんな会話しないよなーとぶーぶー言いつつ、日本人にこの茶目っけがあればと勉強になった。
絶賛できないところが一つあるとすれば真新しさに欠けた点。
被告人が記憶を忘れてしまい、10年前の殺人事件の捜査にスポットがあてられているあたりが『レベル7』ぽさを感じ、『ショーシャンクの空に』を彷彿とさせるような獄中の描写や展開があった。そういう意味では真新しさはない。
とにかく時間を忘れて小説を楽しみたいときにはお薦めです。
幽霊人命救助隊 (文春文庫)
著者の「13階段」が好きで、本書も手に取りました。
…が、読み始めは、死語やくだらないジョークの連発で
正直、苦手な作品だと思いました。
しかし、読み進むにつれて、どんどん作品の世界に引き込まれました。
著者は、4人の登場人物の言葉を借りて、
いろいろな局面で、様々な問題で悩む人たちに対し、
「死ななくていいんだよ」「やり直せるんだよ」
「居るだけでいいんだよ」と、
時には具体的な解決策を示し、
時には自殺の恐ろしさ、割に合わなさを伝え、
ひたすらにエールを送り続けます。
そして、随所では、弱者が救われない社会や、
強者ばかりが肥える体制への批判も、
決して押し付けがましくなく
シリアスになりすぎずに主張しています。
根底に流れるのは、ひとりでも多くの
自殺志願者を救いたいという筆者の強い想いと
「一つ一つの命が、この世界を支えている」という、
人に対するあたたかい眼差しです。
最後のエピローグもまた気が利いています。
形としては長編小説なのですが、
たくさんのエピソードが詰め込まれ、
内容としては連作小説のようなイメージです。
個人的には、
「愛ちゃん」のお母さんの話、
指揮者を目指す少年の話、
空洞な自分を抱える若い女性の話、
そして100人目の救助対象者の話が
特に心に残りました。
いまいま自殺を考えている方は、
「本を読もう」という気持ちになれないかもしれません。
しかし、ひとりでも多くの方が本作を読み、
それをひとりでも多くの方に伝え、
結果として、自ら命を絶とうとする方が
ひとりでも減ってくれればと思わずにいられません。
非常によい作品です。
ジェノサイド
おおむね良作でした。台詞回しはちょっと少年ジャンプ的な臭さで
厳しいものがありましたが。
以下注意。ネタバレになるかも知れません。
気になる点1点目。
他のレビューでも書かれていますが、作者の歴史観。
日本人傭兵の描写に関しては特に違和感を感じませんでした。イエーガーは
ミックを殺した後に「一同を危機から救ったミックに、汚れ役を押し付けて
申し訳なかった」と反省し泣いています。戦争狂ではなく、適切な仕事を
こなしただけであった、と。
しかし南京事件などに関しては、今日まで流通してきた情報が多分に
プロパガンダを含んだもので非常に疑義があるもの、と明らかになって
きています。物語を語る上での必然性もなく、この辺の事情に詳しい読者には
違和感だけを残しています。
2点目。2人目の進化者が現れた時点で「あれ?主人公がこんなに苦労する必要は
なかったのでは?」と思います。例えば日本の進化者が主人公の父をもっと直接
支援したりできたはずです。まあそれをすると物語にならないわけですが…。
サプライズを狙い過ぎて(確かにサプライズではありましたが)破綻してしまった
感があります。
3点目。医療現場でのリアリティのなさ。謝辞を見るとなるほど臨床医への
取材が足りてなかったように思います。一定のスピードで進行する疾患であっても
「あと○時間」なんて正確に死亡日時を推定することは不可能です。また
死亡30分前ともなると低酸素による臓器障害が重篤な状態であり肺だけが改善
しても結局死亡は免れないでしょう。「退院の手続きをすれば薬が飲める」と
いうのも非現実的。ここは両親を説得して投与を強行する、という描写の方が
現実的だろうなと思いました。低酸素で死亡寸前なわけですから、本文では
描写がありませんが気管内挿管は当然されていると考えられます。となると
経鼻的に吉原ないし看護師が直接手を下して投与するしかないわけです。
(両親に薬だけ渡して「勝手に飲ませて下さい、僕らは倫理的に投与できません」
ってわけにはいかない)
医師としてはかなり違和感がありました。
13階段 [DVD]
エンターテイメント色の強い作品の多いフジTVにしては骨太の作品を作ったものだと関心した。死刑制度、えん罪などについて考えさせられる。加害者と被害者家族たちの様々な思惑が交錯し、意外な結末を迎えるサスペンス。
反町は傷害致死により3年間の服役後出所した内向的な青年、服役時に看守だった山崎とえん罪調査の仕事を一緒にすることになる。これまでのイメージを変える押さえた演技が印象的。特筆すべきは宮迫の死刑囚、犯した罪の後悔と執行を待つ心情を見事に演じ、死刑制度の賛否を問いかける。山崎から母親のことを聞かされるシーンでは涙を禁じえない。クドカンがえん罪による死刑囚を演じているが可もなく不可もなく、ミスキャストか?(こんな死刑囚助けたくならない。by山崎)。
CGにたよらない増願寺は撮影所の天井制限のためか少々立体感に欠けるが、不動明王を含めたセットは素晴らしい。ネタばれになるので書かないがご都合主義でリアルでないと感じる部分もある(ストーリー上仕方ないのかも)。
反町と恋人の顛末は評価の分かれるところだが、私は救われた気がした。未来に希望を持てる暖かいシーンだ。タンポポの押し花(生花でないのでわかりにくいかも)も人間の業の深さを改めて実感させる。傑作とはいえないがその心意気や良し、今後の期待も込めて星4とした。