カティンの森 [DVD]
■人が、同じ人に虫けらのように殺される絶対零度の殺戮の現場。
ドイツとソヴィエトのポーランド解体は、まさに民族の解体、
人間の解体へと、死のエントロピーを拡大させていく。
そこには、恐怖の感情すらなく、死をもたらす人間と、
もたらされる人間が存在するだけだ。
ここまでの死の純化・静謐に触れたのは、
ホロコーストを描いた「ショアー」以来である。
■21世紀の今、ワイダ監督が生きていて、この映画が、
このような精度で完成されたことを、本当にうれしく思う。
虫けらのように殺された人間に、意味を与える偉業だ。
政治や文化が歴史を描く際には、よくとんでもない過ちを創り出すが、
こうしたプロパガンダの犯す過ちを恐れつつも、
文化が、恐怖の感情、意味すらも凍りつくような
絶対零度の死の事実、現実を再現し、失われた歴史を修復することが、
本当に大切なことだと思える。
■ワイダ監督は、文化、映画という方法を用いて、
この歴史的事実を描くことの畏れを受け止め、
エンディングのクレジットを「絶対零度」の静謐にふさわしく
死者、残された家族への鎮魂もふくめ、
静寂で埋め尽くしたのではないかと思える。
本当に、このように真摯で、意志の強い監督だからこそ撮りえた、
奇跡的な「映画」だと思う。
A26 地球の歩き方 チェコ/ポーランド/スロヴァキア 2011~2012
5年以上前に「チェコ・ポーランド・スロバキア編」が独立した頃に比べると、チェコとスロバキアに関しては非常に情報量が増え、特にチェコに関しては非常に完成度が高くなりました。事実、今回、チェコの地方都市を廻る際、殆ど不自由は感じませんでした。(強いて言うなら、プラハとオストラバを結ぶ高速鉄道PENDOLINO(車両はイタリア製)をもっと紹介しても良いのではないでしょうか。非常に快適で、便利な上、他のEU諸国の高速鉄道に比べ、割安です。)ポーランドに関しては旅行していないのでコメント出来ませんが、チェコ旅行にはお勧めの一冊です。