ベスト・オブ・10cc~ヒストリカル・ヴァージョン
10CCの本国イギリスでのヒット曲を集めた文字どおりのVERY BEST。全18曲中17曲がシングルヒットです。「パリの一夜」だけはシングル化されていませんが、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」に半年先駆けてロックオペレッタに挑んだ曲として、今も語り継がれています。
またこのベストには、10CCから分裂したゴドレー&クリームの曲も「アンダー・ユア・サム」「ウェディング・ベルズ」「クライ」の3曲、加えて10CCの前身であるホットレッグスの全英2位ヒット「ネアンデルタール・マン」まで網羅されています。
今年2005年7月にメンバーのグレアム・グールドマンが来日公演を行いましたが、渋谷duoで演奏した17曲中の12曲がCDに収録されている曲でした。アーティスト本人にとってもベスト選曲になっていると言えるでしょう(他の曲は彼のソロ「ザ・グレアム・グールドマン・シング」等から)。
スタジオでの音作りの見事さが語られることの多い10CCですが、技術だけではなく、根底に楽曲のよさもあったと思います。歴史入門編として、ぜひお聴きください。
ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか
思うに、我々は『心』を人にだけ与えられた『ギフト』と考えがちである。しかし、ヒトは『人として』<神>に作られたものではなく、他の総ての生き物と同じく40億年をかけて進化し続けた結果であるのと同様、心も始めから『心』として人類に備わっていたのではなく、進化によって手に入れたものであると思う。
そして、『HUMAN――なぜヒトは人間になれたか』というこの本に出会った。NHKが番組として取材したものの記録である。ホモサピエンスはアフリカで約20万年前にサルから枝分かれした。その時点ですでに身体的にはほぼ現代人と変わらぬ姿であったという。それではなぜそれから今までの間、人類は身体的に進化しなかったのか。その答えを「それは人類が『心』を発達していた為」と考えて、この取材班は調査を始める。
本は「協力する人」、「投げる人」、「耕す人」そして「交換する人」という章建てになっている。取材班はそれぞれの項目で、世界中のその種の研究をしている学者にインタビューを試み、人類がどのように徐々に『心』を手に入れ、その他の地球上の生物を押しのけて、最強の生物として繁栄していったかの道程を検証する。人類の進化の過程、あるいはなぜ他の生物には見られない発達過程を経たかという調査や学説は多々ある。しかし、この調査はそれを『心』と結びつけたところに新味を感じる。
また、『心』を論じると、追々哲学的方向に傾いていくが、この本は科学的スタンスを保ち続け、かつとても分かりやすい。と言って単純にはならず、各章で「なるほど!」と言った感想を持ち得る。例えば、第一章「協力する人」では、狩猟採集時代にはヒトがお互いの獲物を分けあって、共に協力しながら家族・部族全体としての発展を成し遂げていくと述べられている。しかし、一方、対立が「殺し合い」にまで発展していくのは、ヒトだけの特徴であると。一見矛盾するようなこの行為が、実はお互い裏腹の関係にあるという説明は、とても納得のいくものであった。もうひとつ、第4章「交換する人」で述べられるギリシャ、アテナイでの世界通貨と言うべきコインの発現が、『アンティゴネ』などのギリシャ悲劇を産み出したという指摘はとても興味深い。
『心』とはなんぞやと構えることなく、全体として、とても分かりやすく、読みやすく、興味どころ満載といった感想である。
アフリカで誕生した人類が日本人になるまで (ソフトバンク新書)
人類学的な見地から日本人のルーツを検証する本ではなく、硬軟織り交ぜた各種説を紹介し且つ自説の概要を披露するエッセイ的な本。昨今多い教養書的であるが中身はいまいちな新書の一つに過ぎない。新説が展開されている訳でもなく、難しい要素もなく、気軽に読むにはいいのではないでしょうか。
昔の新書は教養の宝庫的な存在でしたが、今の新書は軽くタイトルだけやたらキャッチーなものが多いので、食傷気味ですが、この本はそれらの中では平均以上のものだとは思います。