リトルトウキョー殺人課 [DVD]
何よりも注目すべき点は、「ロッキー4」のドラゴ役で一躍有名になったドルフ・ラングレンが日本育ちのデカという難しい(?)役どころを演じている事よりも、故ブルース・リーの遺児ブランドン(故人)が出演しているという点ではない。
注目すべきは、日本文化を理解したと勘違いしてしまった製作者たちが、作中に登場させる日本文化へのオマージュ(?)にある、とへそ曲がり映画ファンの私は思うのです。
登場人物の怪しげな日本語、非常に聞き取りやすいカタカナ英語をしゃべるジャパニーズ・マフィア(彼の「地獄に堕ちな!」という日本語セリフは英語字幕では「ヘビー・メタル・スシ!」と訳される)、どう見ても日本人に見えないヒロイン(ハラキリを試みる)、闘魂鉢巻を締めヤクザのボスとの最!終決戦に向かうドルといい、日本人には決して狙って作る事の出来ない天然映画になっているので、深夜に友達と菓子食べながら見るには最適のもの、と私は思います(時間も90分未満ですし)。
念のために言いますと、肝心のアクションは全く問題ありません。普通にアクション映画ファンにも楽しめる水準を保っていると思います。だから星五つというのは、アクションの出来と笑えるポイントを両方を加味してのものなので、そこんとこ注意してください。
クラシック・アルバムズ:勝手にしやがれ!! [DVD]
アンチ・ヒーローを掲げてロック界に殴り込みをかけ、お騒がせ発言、相次ぐレコード会社の契約破棄、メンバー襲撃事件などなど過激な話題を振りまき、嵐のように去っていったグループ、セックス・ピストルズ。
その短い間に出されたたった一枚のアルバムが、NEVER MIND THE BOLLOCKSである。話題ばかりが先行してこれまで音楽的な評価をあまり聞くことがなかったが、クリス・トーマスのプロデュースにより一種こだわりのある音作りがされたことや、スティーヴ・ジョーンズのギターを抱えての一曲一曲のエピソードが語られていくところは、興味深い。
あと必見はストックホルムでのライヴ映像や、”EMI”を歌うロットンのパフォーマンスの妙。彼らの生の叫びを聴け!!
Tono-Bungay (Penguin Classics)
語り手であるジョージ(ウェルズと同じ名前)の半生記である。貧しく息苦しい幼少時代、叔父のエドワードを手伝い、インチキ強壮剤『トーノ・バンゲイ』で大儲け、成功によって垣間見た階級間の違いへの戸惑い、恋愛結婚と新しい恋人と離婚騒動、飛行機への熱中、破産に至るまでの一連のドタバタ悲喜劇、等々、様々な浮世の出来事が豊かな筆致で綴られてゆく。ウェルズの文芸的作品の中でも脂の乗った傑作で、例によってウェルズ自身の分身とも言うべき登場人物達の様々な表情を鏤め乍ら、新たな社会形態、新たな人間関係、新たな技術・発明がどんどん世の中を変えて行ったエドワード朝時代の移り変わりが、一個人の体験と云う形で、実に生き生きと活写されている。時代を代表する示準化石的名作と言うべきであろう。
この新しいペンギン版は、従来の決定版とされるアトランティック版のテキストを使用しており、16頁分の解説、25頁分の註の他、著者略歴、文献案内、テキスト註解が付いていてお薦めである。