メトロポリタン・オペラDVD タン・ドゥン:歌劇『始皇帝』
とっても、豪華な、METらしい、見応えのあるオペラです。
新作オペラでも秀逸だと思います。
この「始皇帝」METのライブ・ビューイングを新橋演舞場で観たのが最初でした。
中国人のタン・ドゥン、チャン・イーモウのコンビがスケールの大きなオペラをMETと共に作ったと思います。
その2006年以降再演されたとは聞いていないので、今、見られるのはこのDVDだけ。
ドミンゴ・フアンも必見ですが、箏、踊りなど中国の名人達も素晴らしく、
舞台装置がさっぱりしすぎているオペラにご不満な方、どうぞご覧になって下さい。
音楽も、舞台もメイン歌手も脇役も新しさを感じさせながら、美しく、力強くて鑑賞の
喜びを与えてくれるでしょう。
始皇帝陵と兵馬俑 (講談社学術文庫)
始皇帝は司馬遷の史記によって悪の権化のように伝えられそう信じられてきたが、本当のところは良く分からない。最近はチャンイーモウのHEROにあるように極端に美化されたりと実像がつかみにくい存在だが、その陵墓と俑から解き明かされる姿はまた別のものだ。今まで兵馬俑をただたくさんの陶製の人形位にしか考えていなかったわけだがそのスリリングな発掘史から解き明かされたものは古代史の面白さの醍醐味だといえる。また馬鹿の故事で知られる二世皇帝がこの陵墓建設で果たした役割の大きさからも中国古代史はもう一度書き直されるべきだろう。それは決して漢帝国の官僚だった司馬遷の目によっていがめられたものとはずっと違ったものなはずだ。
感銘深い点は今なお始皇帝の墓自体はまだおそらく誰にも暴かれておらず(地下30mのところに眠っている)そしてそれを発掘するのは現代の考古学者の仕事ではないと彼らが信じていることだ。彼らはまだなお堀尽くされていない兵馬俑を地下から現代へよみがえらせることが彼らの使命だと理解し、それがなされてから陵墓の発掘が始まると考えている。つまり自分たちの生きている時間の間にそれを見ることはできない。それは後世の仕事であり彼らは自分たちの仕事をこれから来る者たちのためになされているものだと。兵馬俑は毎日掘り進められているが全貌が明かされるのはまだまだ遠い先のこと。兵馬俑が中国人の学者たちにとってそんな存在であるということを知ることができたのは幸いだった。
囲碁皇帝 烏鷺 3
グラフィックがフリーソフトのようで、この値段を出した気分に
なれません。盤、石、ボタン類が安易に粗雑に作られているように
思います。思考アルゴリズムは相当なものがあるのですが、
対戦するたびにグラフィックのせいで少しゲンナリしてしまいます。
グラフィックが良ければ星4~5を付けたいのですが…。
よって、あえて厳しく星3つとさせて頂きました。
我が名はネロ (1) (中公文庫―コミック版)
紀元一世紀の帝政ローマが舞台。最近でこそ塩野七生のローマ史シリーズなどで通史として紹介されているが、ローマ史自体のなじみが薄い一方で、皇帝ネロは暴君として比較的知られた名前のひとつではないだろうか。
安彦良和はここでネロの生涯を描く。第一巻はネロが16歳で皇帝になり、皇位継承のライバルであった義弟を毒殺、友人の妻を奪い、逆に彼女に唆される形(と描かれている)で、実母アグリッピナを謀殺するまで。
作者は複雑な係累と人間関係、文化的・時代的背景についてある部分捨象し、ネロと母親アグリッピナの母子関係を中心に現代的な視点で描いている。
ネロに相対する存在として、奴隷身分の剣闘士が登場するが、それ以外は史実に忠実な展開。
安彦良和独特のタッチで描かれる光と影の画面。漫画化にあたって、服装、近衛兵の装具や食事の寝椅子、闘技場の様子など生活・習慣などの細かい点まで、ひとつひとつ考証がくわえられたであろうことが想像される。ストーリーだけを追うのではなく、こうした絵も楽しみたい。