Aクラス麻雀 (双葉文庫)
雀聖阿佐田哲也のあまりにも有名な戦術書。かって、古川凱章、小島武夫、大隈秀夫、青木王位、灘麻太郎、大橋巨泉等々、数多くの戦術書を読んだが、内容においても読み物(読者を退屈させずに読ませる技術)という点においても本書に並ぶものは一つもなかった。五味康祐の著作を含めてもそう思う。初読の時は、「麻雀は運のやりとりである」という部分に目が行ったが、長年この遊びになじんでみると最終章の「麻雀とは何であるか」の部分が実に味わい深く身にしみる。麻雀は運のゲームであり、常に正解という打ち方はない。但し、同種の場面で100回打った際に、ある打ち方が55回有利で、他が45回有利だとすれば、常時55回のやり方で打ち、45回は失敗しても、その差の10回のメリットを取ろうとする。これが麻雀のフォームであると著者は説く。従い、1局、半荘、あるいは一晩の勝利に必要以上に拘泥するべきではないということをこの本で学んだ。そういう意味で、極めて実戦的という点でも、このジャンルでは他に類のない、今後もおそらく出ない名著だと思う。
狂人日記 (講談社文芸文庫)
自分は幻覚を体験したことはないけれど、「狂人」になってしまった本人(色川さん)にしか苦しみはわからないだろう。
わかろうとしても、彼自身の私小説的で、圧倒的な描写に、おそれおののきつつ、読み進めるばかりでした。
ただ作品全体が病に覆われているかというとそうでもなく、時間の流れがおだやかな場面もあり、それ故その後の彼の苦しみが増幅されるのかもしれません。
麻雀放浪記(一) 青春編 (角川文庫)
麻雀はかじった程度ですが、こんなに奥が深いとは知りませんでした。
登場人物の個性が光って、セリフの一つ一つが生きているように感じて、
不思議なくらい引き込まれる力を持った小説です。
娯楽小説としては最高の一冊のひとつでしょう。
おかげで通勤途中に降りる駅を乗り過ごしてしまいました。
うらおもて人生録 (新潮文庫)
「生きている、というだけで、すでになにがしかの運を使っているんだな。けっして、権利で当然生きているわけじゃないからね」(P134)
この本の中には「運」という言葉がよく出てくる。「運というのは、実力以外のすべての要素」で、「セオリー化されていない(我々にとっては明確になっていない)部分の総称」とのこと。
誰でもいい運に恵まれたいと思う。できれば人生の勝ち組に入りたいとも思っているはずだ。
しかし、この本を読んで目から鱗。「不運だ」「ついてない」と嘆いていた浅はかな自分が恥ずかしい。人生に対する認識を改めさせられた。読んで腑に落ちることばかり。素晴らしいの一言。
麻雀放浪記 [DVD]
戦後の荒廃した東京でうごめく、ばくち打ち達の日常。癖のある俳優陣とモノクロームの画面が、物語の陰影も浮き立たせている好作品。男と女、悪意と貧困、そして生と死が湿りすぎず描かれているため、余計リアリティがある。そのリズム、心地よかった。