Beat Kings - Respect the Architect - [DVD]
制作側の人間にフォーカスしているので、トラックを作りたいと思っている人間にとって
いい内容。クインシー・ジョーンズが今はヒップホップを食いモノにしていることがわかって尊敬するする気持ちがなくなった。
Watch the Throne
サウンドについてはどなたかが解説して下さると思うので、ここではこのCDの装丁について補足の情報を。
ブックレットを見れば一目瞭然なのですが、このCDのパッケージは"スカーフ"を模したものになっています。このCDのパッケージは現GIVENCHYのクリエイティブディレクターであるリカルド・ティッシ(RICCARDO TISCI)による仕事です。彼が手がけたGIVENCHYのメンズコレクションは、エレガントな装飾美の中に男性的でマッチョなビジョンを共存させることに成功したとして近年多大な賞賛を受けており、現行のファッション界における最も重要な人物の一人と目されております。
菊地成孔さんが度々指摘されているように、この10年近い期間、カニエ・ウェストは異様に高いテンションを持ってモード界をフォローしてきました。村上隆の起用によるルイヴィトンおよびマーク・ジェイコブスとの接近や今回のリカルド・ティッシの起用は、ファレル・ウィリアムズとBAPEおよびNIGO氏との接近とは全く別の次元での野心を感じます。それは明らかに西洋の伝統的な芸術文化において全くの新参者である「黒人」の「HIP HOP」ミュージシャンである彼自身を、文化的正統性の中に位置づけようというアプローチに他なりません。
人によっては(というか多くの人は)そうした彼の強烈なエゴイズムに辟易し吐き気すら感じるかも知れません。真っ金金のパッケージ、売れっ子ファッションデザイナーの起用、星条旗や天使や悪魔といったアイコンのセンス...総じて『悪趣味だ!』と切り捨てる方がクールな態度だと言えます。しかし、この数十年の間ポップミュージックが最大の飼料としてきたのは正にそうした強烈なエゴイズムであることも覆いがたい事実です。現行のポップミュージック界における最大の天才、あるいは最強の変態のビッグレースは未だ現在進行形でスリリングな状況を継続しています。その「足跡」としての作品に触れることがつまらないと言ったら、僕は大嘘つきになってしまいます。
最後に、文脈の都合で『悪趣味』という言葉を先述しましたが、今回のリカルド・ティッシのクリエイションは悪趣味を楽しむという上級者的趣味の良さを呈しており、はっきり言って秀逸です。こういう余裕綽々な悪趣味のエレガンスをカニエ・ウェストの作品も持つようになったら...という想像は、思いの他近い将来に想像でなくなってしまうかも知れないなーとニヤニヤしながら駄文を結びます。
(P.S. ファッションについては門外漢甚だしいので、より専門の方がいらっしゃったら是非ご批判下さい。)
パープル・スカイズ
このアルバムを聴いたとき、特に1曲目の「Back Down to Earth」の1小節目のテンポインからぐぐっと惹きこまれる。久々に良質なハスキー&キュートかつリッチな声を聴いた気がする。全体的にミドルテンポ一辺倒で構成的には若干面白みに欠けるかもしれないが、彼女の持ち味は必要十分に表現されている印象。曲調はノリの良い16でベースがぐいぐい引っ張るようなタイプで、特に6曲目「If I lost you」の跳ねるベースラインとシンセの掛け合いは70年代ディスコ調で懐かしい感じがするが、彼女の声との混合により一気にモダンに。お勧めの一枚です。
ピンク・フライデー
このNicki MinajはLil Wayneの一派として注目されてきた頃からのお気に入りでUserや
Ludacrisの客演でもカッコ良さにグッときましたが満を持してのファーストアルバムが
やっと到着しました(実はこれより前にL.A.に注文した彼女のミックスCDの数々が
軒並み品切れで1ヶ月近く待たされ結局本作が先に到着してしまうという皮肉)。
レギュラーアルバムの収録曲に関しては皆様のおっしゃる通りで予想以上にポップな
楽曲が並びます(それはそれで悪くはないのですがちょっと手堅く行き過ぎな感も)。
Eminemを迎えた(2)等では彼女らしい激しいフロウも堪能出来ますが(でもEminemの
前では大人しく感じたりして)、Rihanna参加の(5)もヤングマネー絡みのDrakeとの
(7)も更にはKanye Westとの(9)も非常にポップで聴き易くノーゲストの(4)や(12)
(シングル群)と同じくヒットポテンシャルが総じて高いです。
そして極め付けはwill.i.amとの(8)!あざとい(褒め言葉)というかwillらしいと
言うか私達オジサン世代にはたまらないあの80年代初頭のBugglesの大ヒット曲を
持ってくるとは・・(一時はBlack Eyed Peasの新作のリードシングルという冗談の
ような誤報も流れましたが)これにはしてやられました(ベタだけど好き)。
こんな感じで彼女の(正式な)ファーストアルバムとしては万全の手堅い出来なので
すが、若干の不満が無いわけではありません。
まずデビューシングルであるはずのSean Garrettとの[Massive Attack]が収録されて
いない点(これは大きい)!あの強烈なPVと同様なかなか個性的な曲だっただけに
チャートアクションがイマイチだったとは言えこれは入れて欲しかったところです。
また権利上難しいとは思いますが、かのMariah Careyとの[Up Out My Face(Remix)]も
収録してくれると最高だったんだけど(MariahのRemix盤が立ち消えになっただけに)。
でもその代わりと言ってはなんですがこのデラックス盤には5曲ものボートラが入って
います((17)Wave Ya Hand (18)Catch Meが入っていました)。
まず(14)はシングルにしてもいいような勢いのあるポップな好曲!(15)はミドルから
一転サイレン音と共に一気にテンポアップするGoodな曲(ちょっとMassive〜似?)。
(16)も同様のアップで(17)のイントロと合わせると同じ曲のように聞こえたりもします
・・多分意図的?(でもその分彼女の畳み掛けるようなフロウを堪能出来ます)。
最後の(18)では上記の(15)〜(17)と同じ路線ながらどことなく一時期のMadonnaを
思わせる展開に歌えるところも見せたりして頑張っています(この曲もなかなか)。
そんな感じでこの一連のボートラ群も結構リキが入っていて良い感じです。
正直Lil Kimにディスられながらも明らかにピークに来ていると感じられる彼女ですが
願わくばセカンドも無事発売されて少しでも息の長いアーティストになりますように
想いを込めて星5つ!(日本盤は来年2月だそうですが、遅れた分件のMassive〜や
Up Out〜を入れて下さい。だったらまた買いますからメーカーさんお願いします!)
ブロック・パーティー [DVD]
タイトルや出演するアーティストを見ると一見ミュージックビデオのようですが、実は野外コンサートの準備、キャスティング、舞台裏などを主に収録したドキュメンタリー。R&BやHipHop好きにはたまらないキャスティングなのですが、それ以上にデイヴ・シャペル(コメディアン)のおしゃべりが楽しい。自分の育った町の人をコンサートに招待するくだりでは、本当に田舎町の人の生活が垣間見れ、シャペルのストリート、フッド、R&BそしてHipHopへの愛が感じられる、心温まる内容です。