近現代日本を史料で読む―「大久保利通日記」から「富田メモ」まで (中公新書)
近現代の日本史を膨大な著名人の日記によって読み解く。
と言ってもそれらの日記の詳細を読み解くのではなく、
それぞれの日記の読み方・価値を解説するものである。
『大久保利通日記』
『木戸孝允日記』
『原敬日記』
『後藤新平日記』
『濱口雄幸日記』
『重光葵関係文書』
『高松宮日記』
『梨本宮伊都子日記』
『昭和天皇独白録』
『徳富蘇峰 終戦後日記』
『入江相政日記』
『富田メモ』
『石橋湛山日記』
『鳩山一郎日記』
『佐藤栄作日記』
『大正天皇実録』など。
中の『富田メモ』には「昭和天皇が靖国へのA級戦犯合祀に不快感を示したこと」
「参拝中止が『私の心だ』」と発言したことなどが綴られている。
翔ぶが如く〈5〉 (文春文庫)
台湾出兵について外交的な事後処理を中心に描かれてます。
最終的には、驚異的な粘り腰で国家の体面を勝ち取る大久保。
その手腕に感服すると共に、こんな事態になってしまった展望の甘さも印象的です。
大久保の長所、短所が垣間見れる巻だと思います。
それにしても、なんとも「余談」が多い本だなというのも率直な感想です。
余談の合間に物語が挿入されている感じも受けました。
渋沢栄一「論語」の読み方
論語と言うと、中学のとき漢文で習った漢字の羅列をレ点や返り点で行ったり来たりして読みその結果、なんだか分かったような分からぬような日本語になり、内容も良く分からなかったというのが今までの常で、論語が良いと聞かされても今まで全くピンと来ないのが現状であった。
この本を読んですぐ分かるのは、著者渋沢栄一がまさしく論語一本を人生の教訓、所謂バイブルとして事に当たってきたということ。渋沢栄一は幕末の動乱期から明治大正昭和を生きた人で日本経済の父と呼ばれる。第一国立銀行のほか、東京ガス、東京海上火災保険、王子製紙、秩父セメント(現太平洋セメント)、帝国ホテル、秩父鉄道、京阪電気鉄道、東京証券取引所、キリンビール、サッポロビールなど、多種多様の企業の設立に関わり、その数は500以上とされている。
その同氏が『論語』一本をバイブルとしてきたと言い、その同氏自らその論語の解説に当たっているのだから説得力がない訳がない。私もいろいろなビジネス書を読んできたが、そのエッセンスが全て含まれている。目からうろこである。
加えてこの本には著者の今までの体験に基づく説明が書かれていること、かつ、その当時の著名人たちとの交友からの人物評が事細かに書かれており、それだけで独立して一冊の本ができるほどである。その人物評が実際に著者が会って話をした結果のものだけに誠に興味深い。
昔から子どもに素読をさせるのが良いと言われており、今も一部でブームになっていると聞く。頭の体操程度にしか考えていなかったが、私はこの著書を読み、自分も幼いときに素読をし論語の一部でも良いから頭に残しておけばと思った程である。この本を読んでおけば子どもに素読をさせるときにある程度の説明はできるようになろう。
特にビジネスに携わる人にはお薦めである。
NHK大河ドラマ総集編 翔ぶが如く [DVD]
原作は、司馬遼太郎。僕は、これを高校時代に読んだのですが、いっきに読んだというのが実感です。それほど、面白く飽きませんでした。幕府崩壊から維新まで、そして維新から西南戦争まで。歴史と言うには、まだ浅すぎるという感じですが、これをよくひとつの歴史小説としてまとめられていました。
ドラマは、また一層面白かったですね。西郷の西田と大久保の鹿賀。どちらも、ドラマを超えた迫力がありました。小説というにはもったいないほど、歴史資料に裏付けられた物語で、歴史の勉強も兼ねてみる事ができます。
NHK さかのぼり日本史(4)―明治 「官僚国家」への道
明治維新の「三傑」と言われている木戸孝允、西郷隆盛、大久保利通のうち、現在にまで続く日本の官僚制の生みの親ともいうべき大久保利通にとりわけ焦点を当てた一冊。著者が大久保の専門家ということかもしれないが、同じ薩摩出身の西郷の愚鈍さに比べて大久保の鋭利さ、キレの鋭さを披歴しているようでなかなか小気味よい。
大久保が、当時の日本が欧米の進んだ産業・文化・経済に追いつくためには、この官僚制しかないと考えたきっかけが、岩倉使節団の一行に加わり、彼の地の発展ぶりを目の当たりにするとともに、ビスマルク先生に出会ったことだ、と著者は書いている。
本書は、この岩倉使節団から明治憲法の発布に至るまでの激動の明治時代をさかのぼりつつ、ある時には行きつ戻りつつ、とても分かりやすく書かれている。
(最後の最後に、著者も本書の部分は歴史の年表順に考え直したほうが分かりやすいと思ったのだろうか、その流れで復習している・・・・・)