ピコーン! (IKKI COMICS)
私は青山先生の作品繋がりで本作に入った人間です。
舞城先生に関する知識としては
敷き詰めるように文章を書く作家であるという程度の認識です。
本作の感想ですが端的に言うと
あまり肯定的な見方は出来ませんでした。
原作ファンの方々のレビューを御見受けする限り
きっと漫画化そのものには大方成功しているのどうろうと思いました。
メディアミックスで良くある「○○化による駄作への変貌または退化」の様な事故は
起きていないようです。
キャラクターも青山先生独特のエグイ心理描写も相まって
とても躍動的に描かれていたと思います。
しかし、ストーリーを漫画の流れから読み取る事が非常に困難です。
え?と思ううちにおいてけぼりにされているような感覚を受けます。
多分ストーリにおける要所要所を荒削りしていることから
こういった事態になっただと思います。
文章のビジュアル化という点で原作ファンの方にはおおむね高評価ですが
青山先生の作品から入る方は要注意です。
世界は密室でできている。 (講談社文庫)
ノルウェイの森の帯に村上春樹が「これは100%の恋愛小説です」と書いていたけれど、
それを借りて言うなら、これは100%の友情小説です。
男と男の、男と女の。
謎解きの要素は確かにそれ自体楽しめるのですが、僕はこの小説の醍醐味は終盤のたたみかけるような主人公の叫びにあると思います(p185)。
本を読んだのは3年もまえですが、この主人公のセリフのインパクトは消えないで残っています。力強くて、熱くて、気持ちが沸点まで高まって、涙のように溢れだした言葉。
そのセリフを読めるだけで、この本は一読の価値があります。
そしてこの本をして舞城氏のマスターピースであることを確信します。
好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫)
デビュー時から読者の顔色を伺う事無く、独自の疾走を続けている舞城王太郎だが、その作品の根底には常に様々な形の「愛」が書かれている。
タイトルからして直球勝負な今作は、愛ゆえの喜び苦しみをさらけ出していて、世界の縮図を、恋人たちの世界を覗き込んだ気持ちになる。
また、舞城自身の描いたカラーイラストも掲載されていて、より深く内容に引き込まれる気がした。
煙か土か食い物 (講談社文庫)
疾走独白ミステリィ。一言で言えばそんな感じ。確かに今までこんなスピード感のある小説は読んだことがなかった。もっと早く読めば良かった。そして物語の進行と同時に一人の男がありのままの自分をさらけ出していった。…それは裏を返せば、失踪毒吐くミスリード。ひとつ間違えば読者を置いてきぼりにしかねない勢いで、えげつないくらいに人間の内面を畳み掛けていることにもなる。でもそこでギリギリ裏返らない絶妙のバランス感覚がこの本には備わっている。と、思う。
途中で笑いがとまらなかったし、最後まで読むのを停められなかった。そしてこの物語の主人公であるところの奈津川四郎は最初っから考えるのをやめられなかった。微睡みの中でさえ。パターンを考え暗号を考えトリックを考える。犯人について、自分について、セックスについて、兄弟について──その先にある家族について。そうやってたどり着いたところには何があったのか。そこで得たものは果たして真実正しいのか。それは読んでのお楽しみ…。
ディスコ探偵水曜日〈中〉 (新潮文庫)
迷子探偵、ディスコ・ウェンズディを主人公としたこのミステリ(SF?)の中巻は、名探偵が登場する本格探偵小説のパロディっぽい感じ。
でも、探偵小説とは異なり、時間の経過に伴い謎が解けていくという感じではなくて、ますます謎は深まるばかり。
事件としては、ミステリー作家である暗病院終了(なんかこんな作家がいたような気がする)の謎の死とその舞台となる建物「パインハウス」の謎を解くというものだけど、その謎を解いていく過程で、パインハウスに集結した名探偵たちが、またまた倒れていき、主人公のディスコ・ウェンズディが、その謎を解いていくのだが、時空を超越するような設定があって、どうもまともなミステリではない。
カバラや北欧神話という道具仕立てもミステリっぽいんだけど、なんとも言えない展開で、分かりづらい内容になっている。
でも、その割には読みやすく、また物語に引きこまれていく。主人公を初めとする登場人物も魅力的だし、なかなか楽しい1冊だ。