文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
下巻の第12章では、文字の発明発展を考察する。文字は単純で限定的な使用から借用やヒント模倣などを経ながら伝播して形成されてきた。 紀元前1700年のものとされるファイストスの円盤はクレタ島で発掘され、印刷技術を推測されるが、今の印刷技術はその約2000年後の中国からである。
社会や集団の地理上の役割と技術の自己触媒的な発達において人口の多い地域でもっとも発達する。
このように、社会や集団によって文字や技術の受容が異なる事実からそれらの発展や衰退を考察している。
第16章では言語による人間集団の拡散を考察している。食糧生産や優位な技術を持った集団が殖民・拡散していき、もともとの小集団の地域を占拠同化していくプロセスを検証している。
部族社会から国家へと集権的な社会を形成すると他の首長社会を戦争等により呑み込んでいく。1492年の新世界発見とその後の旧世界による支配が示すように、食糧生産や技術を発展させた社会は常に勝者となっている。
金属器や文字システムや複雑な社会システム発達させ、食料生産を行い、労働の分化が進んでおり多くの人口を擁している集団が、勝ち残っていき、逆に狩猟採集民や地理的に孤立した集団では技術の後退や放棄が起こっている。
アメリカ原住民やアステカ・インカ帝国がなぜヨーロッパを発見して植民地化できなかったか。当時最強の技術を誇る中国はなぜアフリカ・中近東まで船で訪れていながらヨーロッパまでこなかったのか。
著者はその答えを大陸の大きさ、地理的条件、人口の密度などから解き明かしていく。本著は医学部教授である著者が、人間の歴史や技術史という観点ではなく13000年前からの人類史としてまとめている。
各章ごとに考察をまとめているためか、翻訳本のためか、フレーズの重複を感じる向きもあるが、社会科学の好著である。
EMIKA (ZENCD156)
ユニークな存在であることは間違いない。
刺激的なジャケットとともに、数種のシングル・リリースの後、
遂にデヴュー・アルバムをリリースした。
何となくデヴィッド・リンチの映画の色彩だとかのイメージと、この
ジャケットの感覚が似ていると思うが。
「proffesional loving」のPVなどは、ホラー映画か同じくリンチ映画のよう。
既発シングルに収められていた、リミックスは当然収められず、
オリジナルのみが網羅された。という意味で、若干、というかかなり
「寄せ集め」感の強いアルバムとなった。
いい解釈で言えば「ショー・ケース・アルバム」、つまりお披露目。
ベルリン在住だとか、pinchやmary anne hobbsなどが注目している、
など余計な話題が豊富だが、肝心の音の方は、、、。
どうにもスケールが小さく、宅録好きの連中が集まって、その上を
抑揚の少ないヴォーカルを乗せて、、、何だかそんな印象を持った。
珍しくオリジナルよりリミックスの方が面白い、という稀有な結果に
なった。
テクノっぽい、ダブ・ステップっぽい、でも何だか決定的に違う。
間違いなく、ユニークな音楽であるし、唯一無比の音楽ではある。
なのに、何か平板なイメージは最後まで。
強烈なインパクトは、そのルックスのみか。
つまり、プロダクション・スタッフに能力が欠けていた、ということだ。
繰り返し聞く気が起きない、というのが致命的。
ルックスも初期は、キャッチーなルックスで魅力的だったが、
随分ふくよかになって妖艶になったのはいいが、顔が怖い。
Guns, Germs and Steel: A Short History of Everbody for the Last 13000 Years
人類の歴史を複雑系の視点から科学的に解き明かそうとした試みの先駆けとしての名著。歴史物に必ずしも興味がなくても、ビジネスマンや研究者を知的に刺激し充分に楽しませてくれる傑作。環境、生態系、地理的条件、技術、社会体系など様々な要因が絡み合って歴史の行方を決めたと洞察する著者のアプローチは今後も様々な場面で応用されることだろう。