血引きの岩 (ソノラマコミックス)
『血引きの岩』連作4篇は、2002年から2004年にかけて雑誌掲載された作品だが、今読むと、東日本大震災を予言しているようにも読めるところが恐ろしい。
作品内容そのものよりも、発表から今日までの間に、現実の日本の状況がどんどん作品の側に引き寄せられていると感じられて怖いのだ。
なぜ、集団登校中の児童の列に車両が突入する死亡事故が後をたたないのか。
近年、児童虐待や、実の親が子どもを殺す事例が急増しているように感じられるのは、気のせいか。
そんなことを思いつつ読むと、とてつもなく恐ろしい作品である。
しかも、現状での結末で浮かび上がってくるのは、あの島の領有問題なのだ。
あの島の実効支配を他国に握られているのは、日本としては非常に危険なことだと暗示しているようにすら、読める。
もし、この先が描かれたら?
それはそれで、一層恐ろしいことになるような気がしてくる。
これほどの作品を漫画として描けるのは、星野之宣だけだろう。
LEGEND OF GIANTS 巨人たちの伝説 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
星野さんがホーガンの世界を描きたくなった理由がよく分かる作品群だ。
地球の氷河期というのは、その克服方法がSF作家の想像力をかき立てるのだと思う。
20年以上の前の昔の作風だけれども、描かれている世界は素晴らしい。
やはり宇宙物を描かせても超一流の作家なのだ。
星を継ぐもの 3 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
・ガニメアンのフネが100万年前間飛び続けていた理由は?
・ルナリアンの抗争の原因は?
・平和委員の正体は?
………。
これだけ書くと、多くの人はその人なりの予想をするでしょう。
でも、話の展開は違うのです。その上で、すべてが一つのストーリーとして破綻無く繋がっています。
常に、読む人の予想を裏切る。展開が読めません。
私は普段あまり漫画を読まないのですが、展開に引き込まれてしまいます。
1巻、2巻と続いてきましたが、最新刊になるほど面白くなります。
これはホントです。第4巻が本当に楽しみでなりません。
THE SEA OF FALLEN BEASTS 滅びし獣たちの海 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
よく諸星大二郎と比較される。お互い、それは意識しているらしく、星野が諸星の家を訪問した際に、自分と同じような蔵書が並んでいるのを見て苦笑したというエピソードは有名だ。
ただ、この二人は画風は両極端といってよい。諸星の絵は手塚治虫をして、「彼の絵だけは真似できない」と言わしめたデビュー以来変わらぬ、ある意味で一生完成しないような画風であり、独特な魅力を持っている。
一方、星野之宣の絵はデビューの頃に既に完成されていたと思う。端正でリアルな絵、そしてスケールの大きなストーリーが魅力的な作家だ。その洗練度はますます高まっている。
作品については両者の空想力は方向が違うにせよ、お互いに引けをとらないと思う。むしろ本作品集収録の「アウト バースト」などを読むと、着地点は同じような気がする。
この作品集は何度目かのリメイク版であるが、大判でカラーページが再現されているのが特徴だ。作品としては海洋、北方の島、南洋のジャングル、宇宙空間とバリエーションにとんだ舞台で、それぞれ思わずうなってしまうような作品が収録されている。もし星野之宣を知らない人がいたら、入門書としては適切だと思う。