アンブレラ・アカデミー ~組曲「黙示録」~
アメコミを集めるきっかけになった作品です。
初めて読んだとき、
いわいる「アメコミ的」と感じました(DrターミナルとNo3とのシーンや最後の一コマなど)。
ヘルボーイやウォッチメンを読んだ後だと少し物足りなさを感じますが、続きを読みたい一冊です。
巨匠たちのハリウッド 生誕百周年 ニコラス・レイ傑作選 危険な場所で [DVD]
フィルム・ノワールの傑作として日本では名のみ高かった本作、待望の国内初ソフト化(のはず)。評者が久しくお世話になっていたのは粗悪な画像に日本語字幕なしのフランスEditions Montparnasse盤だったが、これでどうやら言葉や映像への欲求不満もなく落ち着いて鑑賞出来る…
と思ったのも束の間、まずはその日本語字幕に失望する。字幕翻訳について誤訳・悪訳をあげつらうことの愚は重々承知ではあるけれども、意訳の度が過ぎて会話とドラマ進行の間に軋みを感じさせる箇所が多々あるように思う。開巻間もなくのウィルソン刑事とドラッグ・ストアの売り子の会話(「刑事なんかとデートしたって知ったら…」)、犯人を痛めつけるウィルソンの苦悩(「なんで俺にこんなことをさせる!」)、それを諌める先輩刑事「いやだいやだと言いながら、お前はこういうことが好きなんじゃないか!?」、アイダ・ルピノ「他人を信じないで済む人は幸せね」、ワード・ボンド「子供じゃないか…子供だったなんて…」等々(以上、拙訳)のシンプルでいて味のある台詞の数々が、個々に見ると滑らかで雄弁な日本語に意訳されているものの、前後のやり取りから浮いていたり、演出・演技と微妙にずれていたり。例え意訳・超訳(あるいは意図的な誤訳)であろうとも、少なくともドラマ進行上の違和感を感じさせないのが字幕翻訳の必須条件だと思うのだが。
かと思えば何の捻りもない機械的翻訳で会話の雰囲気に水をかけているところも。北へ捜査に赴けと命じられた主人公が「シベリアにですか?」と皮肉に答えるくだり、字幕では「サイベリア?」と発音までそのままの直訳、「ああ、そうさ…ウェストハムって土地だ」と返す上司のイラつきもごく普通の会話として処理されている。全体に、意訳すべきところ、直訳が望ましいところを掛け違えているのではと思わせる部分が目立ち、気になった。
そもそも本作、カルト・フィルムの類が怏々にしてそうであるように、決して完成度が高いわけではなく、全体にBピクチャーらしく粗けずりな仕上がりで、それだけに作品の肝となっているのが脚本。シンプルかつ含蓄豊かな台詞(これぞノワール)が際立つところであるのだから、隈なく行き届いた翻訳はどうせ無理と開き直るのではなく、もう少し丁寧な仕事を望みたいと思った。
よく聴き取れない台詞を英語字幕で確かめようにもそちらはなし、画質も特に鮮明になったというわけではなく、チャプターもわずか五つと、特典映像や日本語吹替まで欲しくはないが、ワイコインDVD並みの仕様でこの値段はいささか高過ぎると感じた次第。
以上はパッケージ商品としての本ソフトについてのレビュー。作品自体は他レビューにもある通りニコラス・レイの異色の佳作。ロバート・ライアンの、鉄仮面のような無表情の下に秘めた苦悩と癒しの演技(繰り返される彼の手のアップ)と、ご贔屓バーナード・ハーマンの音楽を特記しておきたい。特に音楽は、これがあったおかげで本作は確かに三割がた底上げされた。ヴィオラ・ダモーレ独奏のヴァージニア・マジェフスキーはタイトル・クレジットに名前が掲げられるほどの名演奏。
追記:上に「日本では名のみ高かった」と記したが、その後ご教示をいただき、我が国でも80年代末に単館上映されたことがある旨うかがった。