神、この人間的なもの―宗教をめぐる精神科医の対話 (岩波新書)
初めて、なだいなださんの本を読みましたがとてもわかりやすく面白かった。また、対談集なのでその辺も「こうである」という形にしないで、「こう思う。」に対して、「いやこうだ」などという対話が生まれていることによって、読み手からすると著者の気持ちの迷いや、考えが正直に現れておりとても読みやすい書物だった。
内容は、現代の精神医療と宗教に関するもので、振り返りながら精神史を振り返るところなんかとても勉強になる。
対話者の方となださんの宗教に関する考えの違いから、宗教に関する新しい発見が生まれてきてるところなんて、そうとう面白い!!!
こういった迷いや葛藤は僕自身も精神医療に感じていたので、こういう風に対話集にしてくれるととてもわかりやすく、自分の頭の中を整理するのにとても役に立った良書である。
教育問答 (1977年) (中公新書)
教育は大切だ。
人は皆そう言うが、教育とはそもそも何のためのものなのか?
という根源的な問いに始まる対話型の本。
日々漫然と勉強している学生の自分には、ドキッとさせられるようなことばかりでした。
人が教育を受けるのは「自分のため」だが、国が国民に教育を施すのは「国のため」。
そのことをきちんと認識して、「自分のため」に必要なことを”主体的に”学んでいかなければいけない。
教師はそれをサポートする、”見守る”のが仕事なのだと。
これは教師はもちろんですが、学生である自分にこそ必要な考えかもしれません。
後半はしつけについての話もされます。本書によると、しつけと教育の根本的な違うのだと。
教育(学習)は本質的に「自分のためのもの」で、しつけは「他人のためのもの」。
だから、混ぜこぜにして考えてはいけないと著者は指摘します。
言われてみればその通りです。
「誰が」「誰のために」「何を」自明のことと思われていたことをよく考え直してみれば、実に多くのことが見えてきます。
それを足がかりに、現在の教育制度、受験戦争、高校・大学には行くべきかなど、様々な批判が展開されていき、どれも興味深いものです。
内容に少し古いところが散見されますが、本書の本質的な問いかけは現代でも通用します。
教育はすべての人に関わりがあることです。古い本なのでなかなか見ないかもしれませんが、対話型なのでさらっと読めますし、機会があれば、一読してみることをオススメします。
権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)
なだいなださんの書籍は、本当に本質を穿った内容が書かれていて、
なださんの洞察力には学ぶべきものが多いです。
本書籍もそういった書籍の一つ。
出版された年月をみると日本ではなにやらゴタゴタが色々起こってい
た時期と重なっています。(知らない人は、高校生向けの歴史資料集
の年表でザクッと歴史の経緯を眺めてみてください。)
「〜主義」という言葉は物心ついた時から何かと耳に入ってきていま
すが、「民主主義」「社会主義」などその他諸々の「〜主義」につい
て、その本質はどこにあるかを対話形式で語りかけてくれます。そし
て、それらは根っこのところで同質のものだという認識に至ります。
(どういう風に同質なのかは本書を読んでくださいね。)
ついには、日本の天皇制にも言及しています。右翼、特に極右の人が
読んだらどういう反応を示すでしょうか。なださんのさり気ない戦い
ぶりには感心させられてしまいます。
読む人によっては、本書の内容が受け入れられない人もいるかもし
れません(受け入れたくない??)が、よく読めばとても大切な、そ
して、とても積極的な境地に至ることができると思います。
ついでですが、本書を読み終えてマルクスさんの書物も一度読んで
みたい気持ちになってしまいました。「マルクスさんの精神」を理解
するために。とにもかくにも、権威と権力の関係にきちんと目を向け
るきっかけを与えてくれ、痛快な読後感を味わうことができました。。。オワリ
こころ医者講座 (ちくま文庫)
病気の治療云々にかかわらず、聞き上手というのはとても貴重な力だとおもう。
よい聞き手さえいれば、混沌の中にいる話し手は少しずつ問題解決の糸口をみいだせる。
話しているうちに思いもかけない目標や本当の望みがはっきりしてきたりもする。
だれもがみな聞き上手だったら、せめて一家に一人くらいは聞き上手がいて、
自他の心の声に絶えず耳を澄ませていれば、世の中全体がもっと生きやすくなるだろうと思う。
ここでいう「こころ医者」というのも、いってしまえば聞き上手な話し相手だろうと思う。
この本は、個々の人が「こころ医者」の心得をもつことで、不安や病気とつきあいながら成長していけることを教えてくれる。
著者の専門の「アルコール依存症」の治療の歴史や示唆に富んだ症例を軸に、
社会や時代と精神病の関係、「正常」とは、「異常」とは、「常識」とは、「治る」とは、
といったことが(講座というだけあって)わかりやすく書かれている。
「こころ医者」にできる役割は、ただ「話を聞く」ことで、忍耐力さえあればだれでもなれるというけれど、
その「忍耐力」が簡単そうで実は難しい・・・と思いつつ、生きる上での大事なお守りを得たような気持ちになれる。
私も「こころ医者」になれるように心がけてみよう。
そして、自分のこと、周りの人のことで、ちょっと袋小路に迷い込んでしまったら、また読んでみよう。
心の底をのぞいたら (ちくま文庫)
中学生くらいを対象に書かれています。子供向けの心理学入門書というよりは、心理学そのものに興味をもたせるための本です。この本を読んで、心のしくみについてもっと勉強してみたいと思う未来の心理学者が現れるかもしれません。子供に分かりやすいたとえ話で進められていますが、内容は本格的で、大人でも読み返してしまうところもあります。「友情とか社交性とかは、人間が自分の本能的に持っている攻撃性を抑えるために、強められていくものだ。」と言う箇所など印象的でした。