街の灯 [DVD]
腹を抱えて笑い、感動で涙が止まらない。チャップリンが目指す映画の完成作品だと思っています。 何度観ても飽きないすばらしい映画です。映画ってこうでないといけないよねと思います。最近のCGやアクションだけにこだわり、ストーリが単純で先が見えてしまう映画や、レベルが低く、ストーリーのつじつまが合わなくても平気と言うような映画を見飽きた人は、ぜひ原点に返ってみてください。映画の良さを再確認できます。
街の灯 (2枚組) [DVD]
チャップリンは、本作から明確に作り方が変わってきた。
正確に言えば、1917年の「移民」あたりからチャップリンの「思考」は表現されて来たが、
大きなポイントはトーキー時代の到来だ。
英語圏で製作すれば、英語でセリフを録ることになる。映画は全世界共通の「言語」なのに何たることか、と
チャップリンは反発した。ゆえに、本作もサイレントで作られているが、音楽だけはチャーリーとA・ニューマンにより付けられた。
しかし、「サーカス」まで見られたドタバタ感は姿を消し、シニカルな笑いが増えてきたのは、今後のトーキー参画を
意図したものだったのかもしれない。
1931年当時、トーキーは世界中の人々を狂喜させた。おかげで日本の活動弁士たちの仕事も減りつつあった中で、
本作は、現在から見ると「最後の活弁が活きた作品」だった。「街の灯」という邦題も素晴らしい。
盲目の女性に恋をしたトランプが、失意の中で迎えるラストシーンの見事さ(などという陳腐な表現は失礼だね)。
「あなたなのね」と手を握るシーンは、世界映画史上「最上のラストシーン」と言われるが、100%同意である。
サイレントでも、本作は世界中の観客のココロを捉えた。まさにこれこそ「映画」。
今回は紀伊国屋書店からのリリースだが、そろそろHDでのチャーリーも観たいところだ。
未見の方は、人生でひとつ損をしているので、是非観てください。星は100あっても足りない、当然の5つです。
街の灯 [VHS]
この映画を初めて見た時、それまで感じたことが無かった
胸を締めつけられるような感覚を味わいました。
どんな賛辞を並べても、この映画を言い表すことはできません。
ロマンスであり、コメディでもあり、珠玉のストーリーの中に
数々の深いメッセージがあります。
次のシーンへつながる伏線、音楽、ボクシングシーンでの
アクションも素晴らしいです。
がんばって欠点を絞り出すならば、冒頭の銅像から立ち去るシーンが少し長いのと、
大富豪と海に落ちるのは1度で良いかなと感じる程度。
(気にならない位置の、小さなホクロのようなものです。)
物語の冒頭、トーキーをからかうような、資産家たちの
挨拶で始まる「平和と繁栄」の銅像の除幕式。
いざ幕がなくなると、そこには浮浪者の姿がありました。
そして、音楽を笑いに変えるアメリカ国歌。
見せかけの「平和と繁栄」に対する、チャップリンの先制パンチです。
街の灯では、メッセージの一つとして「富豪の孤独」が描かれています。
あの大富豪も、心の中では「人を信じたい」と思っているのでしょう。
酔っている時には、押さえつけている感情が吹き出し、
深い孤独感から死にたくなるのではないでしょうか。
そこに救いの手を差し伸べてくれる人を親友だと感じるようです。
金持ちの都合に振り回される貧乏人の姿にも、
チャップリンのメッセージを感じます。
この映画のクライマックスは何と言ってもラストシーンですが、
それ以外にも素晴らしいシーンが沢山あります。
二人の出会いから始まる勘違いや、再会して車で家に送るシーン。
彼女のために闘うボクシングは、ギャグ満載ですが、
懸命に強敵と戦う姿と、ダブルノックダウンにはシビれました。
思わず心の中で「チャップリン!がんばれ!」と応援していました。
盲目の治療に成功した新聞記事を彼女に話すシーンも好きです。
「すばらしいわ!あなたを見ることができるわ!」と彼女。
いっしょに喜びながらも、ほんの一瞬、表情を曇らせる彼。
あの一瞬の表情だけで、目の治療が成功することは、
二人の関係の終わりを意味している。
私にはそう思えます。
とても繊細な心理描写に胸が詰まるシーンです。
たとえ、二人の関係が終わってしまうとしても、
相手のために、自分にできる最高の真心を尽くす。
見返りを求めない彼の姿は、愛の姿そのものであると感じます。
マフィアが仕切っている賭けボクシングや、
警官の手から大金をふんだくって逃げたりと、
(もともとは大富豪から贈られたお金)
彼女のために、本当に命がけで大金をつくった彼。
そこまでした彼女から、知らないとはいえ、哀れな目で
「花が好きなの?」「それとも、やっぱりお金がいいわよね?」
と、物乞いをしていると思われてしまう再会のシーン。
これほどまでに、残酷でありながら美しいシーンがあるだろうか・・・。
花屋から掃き捨てられたボロボロの花を持つ彼と、
彼女の手にある凛とした一輪のバラ。
二人の今の関係を感じさせる、見事な対比だと思います。
ハンサムな紳士が店に来る度に、恩人が自分を迎えに来たと期待している彼女は、
目の治療に成功しても、夢見る少女のままです。
しかし、彼の手に触れ、その温もりと感触によって、
本当の意味で彼女の眼は見えるようになります。
このラストシーンは、映画史上、最も美しいシーンだと思います。
映画の生み出した奇跡です。
私にとって、街の灯を超える映画は存在しないでしょう。
セリフも、色も、ラストシーンの解釈とその後も、見る人に委ねられています。
これほど懐の深い映画が他にあるでしょうか。
人間が建物の高さを競い合う中で、夜空にやさしく輝く月のような名作です。
「あなただったの?」
「みえるようになった?」
「ええ、みえますわ。」
このチャップリンの問いかけは、映画を見ている私たちにも向けられたものでしょう。
私たちが、日常の中で見えなくなってしまう大切なものが
「みえるようになった?」と、聞かれているように感じます。
街の灯を見終わった時、あなたには、みえるようになったものがありますか?