炎の蜃気楼(ミラージュ)(1) (コバルト文庫)
長い長い全40巻の第1巻。
怨霊と化した武将達による闇戦国を消滅させる為、軍神となった上杉謙信の名代として、時を超えて戦い続ける上杉景虎とその部下達の物語。
と書くと非常に簡単ですが。中身はそんな一筋縄ではいかない極太の魂の話です。
400年間生きるという事が、どれほど重い事か。愛することや生きることへのひたすらな懊悩が、桑原作品独特のみっしりした内面描写でこれでもかと描かれた世界。
ミラージュを始めて読み始めた時、私はまだ中学生でした。本当に、青春の一部でした。
まあ、1巻は武田氏とか出て来ますが、まだまだ序章という印象が拭えません。直江と景虎の関係は400年でこじれまくっているせいで、この後どんどんハードになって行きますが、まだこの巻では「過去に何かあったな」ぐらいにしか感じられません。
文体も会話もややソフトで、サイキック・アクションのライトノベルという体裁をまだ保っていると思います。
BL作品としての世間の認知度があまりにも高い作品ですが。シリーズ累計600万部という圧倒的な数字を成し遂げ、多くの同人作家を生み出し、武将ブームも生み出したこの作品の要素が、とてもそれだけとは思えません。
完結から大分経ってしまいましたが、気になった方はゼヒ。
炎の蜃気楼 SPECIAL CD COLLECTION
最高です!
最近ミラージュにはまりましたが、原作者が詩を書いていて、原作のイメージで曲が進んで行きます。
歌手の方が途中で変わりましたが、同じ曲が違うイメージで聞けるので得した気分です。
真皓き残響 神隠地帯 炎の蜃気楼邂逅編 (炎の蜃気楼シリーズ) (コバルト文庫)
待ちに待った框一族との対決が再開です。
今回は子どもたちが神隠しに会い、数日で戻ってきたときには、千里眼や読心能力など不思議な力を身につけており、しかも身体の一部には鎖鱗のしるしが・・・
という事件を夜叉衆のそれぞれが探りに出かけます。子どもたちは、こことそっくりな「あちらの世界」に行き、そこにいる自分に出会わぬうちに、ある尼さんにそちらの自分と体の一部を交換してもらうことで、無事に帰ってきたのだ、と言います。
このあたり謎が謎を生み、また前の巻に出てきた「楊貴妃」「蘭陵王」の正体がすこしずつ明らかになりかけます。「十六夜鏡」の趣向とも少し似ていますが、「あちらの世界」にかかわる重要な宇具奴神は、こちらがわの神仏を消してしまう力を持ち、景虎たちは毘沙門天の調伏力を使えなくなる・・・
しかも予言の力を得たひとりの少年は、直江と景虎それぞれの未来を予言し、不吉な雲行きになってゆきます。
直江は先回の「仕返し換生」の重い体験を引きずっていて、換生はしたくない、自分たちはいつまで怨霊調伏を続けるのか、と景虎にせまります。景虎がさらに換生するのかどうかを含めて、このあたりは次巻のテーマとして切実にひっぱってゆきそうです。ふたりの間にはあいかわらずもやもやと微妙な空気がたちこめ、直江目線では、意外な景虎の歩み寄りとも見える行動に、感動する半面、騙されてはならぬ、といつものように悩んでいるのが読みどころ。
色部勝長と楊貴妃のふしぎな関係、ひとり先駆けの功を狙ってあちらへ飛ばされる長秀、そして直江、景虎、晴家、それぞれがゾンビのごとき不死身の框に追い詰められ、絶体絶命!というところで、殺生にもこの巻はおわってしまいます。
作者があとがきに書いているように「夜叉衆かなりの崖っぷちで、待て続刊」。
框一族とのバトルアクションだけでなく、「換生」問題に夜叉衆たちが初めて真正面から向き合うことになりそうな次巻、とにかく早く読みたいです。
【追記】
今回なんだか組み版が違うのかな、と思い、行数を数えてみたら、従来どおり17行でした。ページが黒く、びっしりと書き込んである感じです。改行が減っただけではなく、『十六夜鏡』のあたりの少しスカスカした感じが消えて、重厚なたたみかけで、目の詰まった文章という感じがしました。
また、直江が九郎左衛門から託された「生きよ、直江」という言葉に死人である自分の行く末を重ねあわせて、換生に慣れることの罪悪感に思いをめぐらすところにも、今までにはなかった深みが加わっているように思います。
これからの邂逅編は、直江と景虎の間にたちこめるものを通して、一段ふかい次元に降りてゆくのかもしれません。
炎の蜃気楼 みなぎわの反逆者 第2章 [DVD]
第1章より、人物の表情が綺麗です。人物が遠景に引くと煩雑さが見られるのは同様ですが、シーン毎に顔つきが違って見えた前作のアニメや第1章より、安心して見ていられます。高耶の可愛らしいキャラデザインも「景虎」に豹変する時にかえって印象的です。
京都のホテルでの、高耶と直江のシーンは、原作小説で30ページあまりのシーンをほんの6~7分に収めているのでカットされた台詞もかなりあり、原作ファンには物足りない部分もあるかもしれませんが、主要な部分は多少場面は前後しても描かれており、際どいシーンも綺麗にまとめられて満足のいく仕上がりだと思います。
原作の台詞にはない、高耶と直江の心情を表す文章がここでは、2人の表情と台詞、音楽だけで表現されています。高耶と直江のお互いに対する怒り・憎しみ・哀しみと、高耶の動揺・屈辱、直江の高耶に対する憎しみを孕んだ愛・諦めが胸に迫ります。特に、直江の冷たく自虐に満ちた表情から怒り・哀しみへと変化していくところは見所で、1つ1つの場面に惹きつけられ目が離せません。声優さん2人の声が本当に素敵です。欲を言えば、直江が高耶から身を引く場面は、原作通り丁寧に描いてくれると嬉しかったですが、贅沢かな。直江役の速水さんが高耶役の関さんと「目を見交わすだけでピタリと合う」という調伏シーンも注目。高耶のタイガース・アイを強調するところで、目が金色に光るのはどうかと思いますが…。
で、何故星4つかというと、何せ本編が31分は短い。直江役の速水さんのインタビューも今回は11分ほど。直江と同じ柔らかな低音、直江が座ってるかのような演出は素敵ですが。アニメのリテイクではないので難しいのかもしれませんが、もうちょっと本編が欲しいところです。
真皓き残響 仕返換生 炎の蜃気楼邂逅編 (炎の蜃気楼シリーズ) (コバルト文庫)
コバルトに掲載された短編3つ+描き下ろし中編(仕返換生後編)という構成です。
描きおろし中編が秀逸です。
どちらかというとキャラや出来事を描く方に重点が置かれていた再開・邂逅編ですが、これは違います。
人物を描く方にぐっと力点が移ってきたという風に感じました。
景虎様と直江、互いへの想いが輪郭をもちはじめてきた、という印象です。
萌うんぬんを別にしても、作者様が込めたメッセージや本編へのつながりを考えると、胸が締め付けられる思いです。
またミラが一層好きになりました。
まだまだ熱いです。