少年たちのおだやかな日々 (双葉文庫)
全編を通じて皮肉な話ばかり。
中学生の少年たちが“たちの悪い奴”“変な奴”(主に女性)に日常や自由を奪われ苦悩します。
おだやかな日々と言い切るタイトルはやはり不適当であり、少年たちがおだやかな日々を望んでいる姿が正しいです。
【言いません】
これを読みたくて購入しました。
ドラマ化されたものですが、話の雰囲気やオチの部分が原作と異なっています。
ドラマのほうでは不倫の秘密をバラされることを恐れる主婦の目線で描かれており、少年に口止めを迫り色仕掛けにまで及ぶシナリオと女優さんの演技のうまいことと、色っぽく危険な感じが素晴らしかったです。
この原作のほうは少年の目線で書かれていますが、相手の主婦がなんとも弱々しく最後まで余裕がなく、比べてみると別人のようです。
ドラマの主婦はキャラが立っているというか正に主役といった立ち回りを成し遂げるのですが、原作のほうでは登場人物一人一人の個よりも、偶然のイタズラに翻弄される愚かな主婦と、彼女の頼りなさに呆れ果てる少年、そういった話の面白さが重視されているようです。面倒事に巻き込まれた少年の気持ちとリアリティを味わえます。
ドラマを先に見た人にとっては、原作は枯れ木の趣を眺めるようなものだと錯覚するかも知れませんが、この原作が元になってあんなけしからんドラマが生まれたと思えば喜びもまたひとしおです。
【ガラス】
昔系ヤンデレな女の子。
【罰ゲーム】
キチガイ系ヤンデレなお姉さん。
【ヒッチハイク】
ビッチなおねえさん。
【かかってる?】
勝手な大人に翻弄される男子中生の仲間3人。催眠術。
【嘘だろ】
真面目エリート系の姉を思う弟が姉の婚約者を相手に奮闘する。
【言いなさい】
大人の都合を生徒に押し付ける馬鹿教師とクズ教師に濡れ衣を着せられて
人生を台無しにされそうになる普通の真面目な少年の話。
海賊モア船長の遍歴 (中公文庫)
この本を知ったのはNHK-FMのラジオドラマで放送されていたのを聞いてから。決してお気楽な家業ではなかった海賊たちの生き様。海賊討伐の命を受け海へ出たアドベンチャーギャレーが、苦難の末結局自らも海賊となってしまったこと。モア船長やバロンの流転の人生・・・。世界観が気に入って本のほうも読んでみたがやっぱり原作、ドラマと変わらないくらい良かった。
このたびその放送が再放送されるということで、一人でも多くの人に聞いてもらいたいと思って書いた。モア船長の声を渡部篤郎さんが演じている。違和感も全くない。本の雰囲気を感じ取ってもらえたらいいなと思う。10月いっぱい15分ずつの放送予定。
症例A (角川文庫)
読み終えて、しばし脱力。
今まで、サイコ系のものを色々と読んできたが
この本は、リアルであり 自分がそういう類のものを
色眼鏡で見ていた感を感じた。
先入観を持って読むと、手痛い目にあう。
医師自身の精神が壊れて行くこともありえるという。
自分用に薬を処方するということも。
現実の精神科医の世界とは、こういうものなのだろうと想像した。
ストーリーは、精神医療と古美術の贋作疑惑とが交差して
この全く相通ずるもののなさそうな2つが
一体何処で繋がるのかが気になりながら読み進む。
精神医学にも、色々な分類があり
精神科医である主人公の榊の、精神分析に対しての反感は
読んでいて、難しいことはわからずとも”成る程”と思わせる部分もある。
そして、多重人格。
この部分は、精神医学でもかなりの捏造疑惑があり
それを受け入れる主人公のくだりは読み応えがある。
その話を冷静に、分かり易く語る岐戸医師の話は、特筆すべきシーン。
正直、最初は難解な専門用語が続き小難しい感が否めないが
この岐戸医師が登場する辺りからは、ぐいぐいと引き込まれて行き
読むスピードに拍車がかかってくる。
最後の展開が、賛否両論あれど
精神科医として10年のキャリアを持つ主人公の榊が
多重人格というある意味キワモノを、受け入れて行く過程が面白い。
この本で、精神医療という世界の大変さを少しだけでも
読者に伝えることが出来たなら、作者の意図は成功していると思う。
たくさんの精神病の病名。
言葉は難しくとも、漢字で大抵の意味は想像がつく。
こんなにたくさんあるのに、驚きを感じた。
しかし、後書きにもあるように
巻末に列挙された膨大な資料文献。
これに全部目を通して書き終えたのだと想像すると
作者に、脱帽する。
サイコ系のミステリーをたくさん読んでいる人に
薦めたい1冊だ。
クリスマス黙示録(双葉文庫)
多島FANだったのと、天海の女優になったばかりの頃の
作品ということで興味を持ったことで読み始めました。
舞台はアメリカ。
タミという30そこそこの女性FBI特別捜査官が主人公。
誤ってアメリカ人の少年をひき殺してしまったカオリの
警護を頼まれるところから物語は始まります。
息子を殺されたヴァルダという母親が、カオリに復讐する
ことを誓い姿を消しため、警護をすることになるのでした。
ヴァルダは警察官であり、射撃の名手。色んな面で危機を
感じたキリップ特別捜査官を信じ、彼の指示に従いながら
警護に当たるタミ。無能扱いされ自信を失っているタミは
ヴァルダの恐ろしく執拗な追撃に、自らの知識と経験と勘
を基に、カオリを守り抜こうとする話です。
なんだかグイグイと引き込まれていき、最後まで一気に
読み上げました。
ヴァルダの追撃と執拗さは、まるでジェフリー・ディヴァー
氏の「コフィンダンサー」という作品を思い起こさせる
展開で、ハラハラし、スリルがあります。
タミはさすがFBI捜査官、と思わせる後半のくだりは
ヴァルダとの追撃シーンと合わせて読み応えがあります。
まるで殺し屋か?と思うヴァルダのすごさ。ヴァルダと
まともに撃ち合ったら勝てないと分かっているタミの作戦。
あっぱれです。
もう1回読んでもいいなと思いました。
お勧めの1冊です。