一般気象学
気象予報士試験の、一般知識問題は、これ一冊で十分でしょう。How to ~ものでは、物足りなく、気象庁関係のものでは、実践的でなく、どうしても、この本をしっかりこなしておく必要があります。(中の問題は、あまり実践的ではありませんが。)10日から2週間あれば、 十分だし、この本をこなしたあとで過去問をやると、まるで試験問題がこの本にあわせて作られているかのように思える程。(もちろん気象業務法などは、他で勉強しよう。)
地質学〈1〉地球のダイナミックス
楽しい本である。網羅的に記述されている内容は平易で読みやすく、各章末の問題や文献の案内も充実していて、初心者や体系的に学びたい読者にぴったりである。特に文献紹介は一般的な新書本から論文までがピックアップされていて簡単なコメントもついているので、著者のねらいである独習者には非常に役立つ。
全三巻の「地質学」教科書の第一巻となる本書では、地球という惑星の成り立ち、他の惑星との比較から始まって、地球の内部構造、プレートテクトニクスの解説などが続く。このあたりは個々の知識はあったものの時系列でまとめて読み直すことで非常に納得がいく。
後半は水、エネルギー、元素、そして生命の循環という内容で、物質の転換・循環による生きている地球の仕組みを知ることが出来る。化学式の登場回数が多いが、図も適度に掲載されているので、反応自体にとらわれずに原因と結果を追っていけば中高生でも理解できると思う。
著者曰く、このような「広範囲な内容を一人で執筆するのは、ほとんど暴挙といってよい」ということだが、第二巻は三年半後に無事上梓された。第三巻が待たれる。
地質学〈3〉地球史の探求
「地質学」3巻目の本書は地球深部探査船「ちきゅう」での堆積物の試料採取という印象的なシーンからはじまる。そこから地球の環境変動を読み解く気候変動に一番影響を与える「炭素の地球圏内循環」の解説が始まる。時間軸で長い循環と短い循環の複数のメカニズムの説明の中で、「循環」という概念が「閉じた系」を対象としており、地球というシステムが閉鎖系であるという事実に改めて思い至る。
2章の氷期−間氷期の気候変動は、現在議論が盛んな大気中の2酸化炭素濃度上昇による地球温暖化にも関わるのだが、過去に起きた急激な気温の上昇降下と現在の比較など特に興味深く読める。
3章は人類進化の話である。地質学なのに何故?、と意外であった。しかし人類の進化が、住む場所という環境と、他の動物、植物との共生関係によってもたらされていると理解すれば、総合学問である地質学に扱われてしかるべきということだ。このあたりに著者の主張する複雑な現象を読み解く力が必要なことがわかる。
4、5章では、大陸移動や環境変動による、いわゆる地質学的な地球の成り立ちの解説で、個人的には一番面白かった。
6章は、著者の個性が溢れた章である。著者の思想と人類や学問への期待が述べられている。シリーズ3巻の掉尾を飾るにふさわしい内容と言えると思う。
3巻通して、十分な理解にはほど遠いのであるが、満足感が得られる内容だ。
惑星地質学
太陽系全体について、広範にわたって解説されています。最近の成果も反映されており、日本語で一般の書籍ではこれほどのものはそうないと思います。地質に限らず、大気や磁気についても書かれており、たとえば、タイタンの気象については惑星気象学よりも詳しいくらいです。また、普段見向きもされない小惑星や、微衛星についてもけっこう書かれています。ただし前提とする知識が多く、書かれていることすべてを一般の方が理解するのは大変かも知れません。また探査機が実際に訪れたことのない天体についてはほとんど触れられていません。冥王星の出番は1ページだけです。
富士山大噴火! 不気味な5つの兆候
木村政昭さんの名前を聞くのは、かれこれ10年以上も前のことだったか。当時を思い出すと、久米宏のニュースステーションに出ていのが印象に残る。的確な解説は、当時話題になっていたはず。だが、第一線から姿がなくなって久しい。なぜか。それは学会というものがそうさせたのだろう。
だが、当時から一貫している地震に対する地質学と海洋学の統合評価はゆるぎないものと思うのは私だけではないであろう。
さて、本はこう言っているように思われて仕方がない。
忘れたころでは、もう遅いのだ、と。
東北大震災を予知しえたその揺るぎのない「地震の目」による分析は、火山の「噴火の目」という評価を導入しえた。富士山はまもなく噴火する。みな備えを怠らないようにする必要を感じてほしい。
著者の人を思う、揺るぎのない「心の目」は、訴えている。一刻も早く本を読んでほしい、と。