立松和平とゆく 奥の細道 心の旅 [DVD]
このDVDを観てから、実際に松島へ旅行に行きました。日本三景として有名な松島ですが、DVDの中で作家の立松和平さんが旅しながら現地で解説していた「芭蕉の思い」を知ると、旅の趣きは数段深まるように感じました。また芭蕉が訪れた瑞巌寺をはじめ、多くの文化遺産の施設内では写真撮影が禁止されています。このDVDには、そうした美しい映像が多数おさめられており、「映像」の記録としても秀逸だと感じました。俳聖・松尾芭蕉に詳しい人でも、奥の細道の初心者でも楽しめる作品だと思います。
芭蕉 おくのほそ道―付・曾良旅日記、奥細道菅菰抄 (岩波文庫)
この芭蕉のおくのほそ道は紀行文として最高峰に位置すると聞く。成程紀行文に付け入る隙はなく、俳句の推敲に匹敵する力の入れようで創作したもののようだ。また、芭蕉の人生観を端的にこの紀行文で示したとも聞く。序章はその表れであろう。一方、旅の最中に読まれた俳句が紀行文中に差し挟まれているので、俳句の生まれた経緯も理解し易い。なお、古語が読む上での抵抗感になるが、比較的短文であること、この紀行文の醍醐味を味わうことができるなら我慢したいものだ。月並みだが、人口に膾炙した序章の一部を引用しておこう。
月日は百代の過客にして、行かふ年もま又旅人也。舟の上に生涯をうかべ馬の口とらえて老をむかふる物は、日々旅にして、旅を棲とす。古人も多く旅に死せるあり。
また、この紀行文に差し挟まれた俳句のいくつか引用しておこう。
夏草や兵どもが夢の跡
五月雨の降のこしてや光堂
五月雨をあつめて早し最上川
荒海や佐渡によこたふ天河
蛤のふたみにわかれ行秋ぞ