ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯
梨木香歩さんがスズメの話を訳されるとあっては、飛びつかないわけにはいかない。
ひとり暮らしの寡婦が、助からないと思われたスズメの雛を拾い、育て、看取るまでの物語。飼い主になつき、愛の巣をつくり、せいいっぱいの長寿を享受し、鳥自身の人格というべきものをはっきりと表し、人と鳥のあいだに純粋な愛情をうみだす。偶然だが、同時期に読んだ『フクロウからのプロポーズ』にもひじょうに似通った関係性があった。とすると鳥類の行動はけっきょく同じパターンに従っているのかもしれない。そうだとしても、本書のクラレンスには(他の本の登場「鳥」物にも)、愛着を抱かせる、個性と呼びたくなるものが確実に存在している。
梨木さんも訳者あとがきに書いていらっしゃるが、事実と考察を簡潔な文章でつづっているにもかかわらず、そこには愛情があふれている。他者から愛を受けるのは素晴らしく嬉しいことだが、愛を注ぐことができるということは、それを上回る幸福なのだ。この短く美しい本を読んで、あらためてそう思った。
夏の庭―The Friends (新潮文庫)
無邪気で残酷な好奇心から始まった出会いが、1つの幸せと、大きな悲しみに帰結し、夏の光にさらされた少年時代が終わる。 本のページ数が残り少なくなり、物語の終わりが近づいてきて、この魅力的な登場人物たちとの別れが非常に残念に思えてきた。そしてラスト。通勤途中の地下鉄で、僕は涙をこらえるのにとても苦労した。
とても悲しく、だけど満たされた気持ち。 さあ、もう一度、最初から読もうか!
西の魔女が死んだ (新潮文庫)
現在山梨県の清里で映画化のための撮影が行われているとの記事を見て読んでみた。
凄く身近な出来事(不登校、里山、老人、家族)なのだけれど、凄いです。
児童文学などという枠の作品ではないと思います。
池田晶子さんの「14歳からの哲学」が全部織り込まれているようです。それも非常に分かりやすく。そして心と身体性の問題である心脳問題までも。。
生きる事、死とは何か。
主人公の「まい」とイギリス人なのだが、より日本人らしいおばあちゃんとの心の交流と自然の中での生活を通して人間全てが良い魔女であるべきただと語りかけているのだと思う。
通勤電車の中では読まない事をお勧めする。
西の魔女が死んだ [DVD]
「まずは早寝早起き」からの魔女修業。けして強制せず、自らの意思で。不登校になって半狂乱の母親と自滅していく逃げ場のない子どもと違ってなんと恵まれていることか。死してもなお、伴侶を思い異国の地で生涯を終える祖母。ほぼ自給自足で他人を許し、多くを望まず生きていく。このような人が隣にいたら自ずと見習って生きていけそうです。
ドアにはりつけた「着地成功」のメモもおちゃめ。まいは気まずく別れた祖母が自分を許していたことをこのメモで知ります。同時に容姿や行動で忌み嫌っていた男性が祖母をとても慕っていたことを知り、反省します。この男性を悪く言ったことが祖母との仲を気まずくさせる原因だったのです。年齢を経ても「可愛い」人でありたいものですね。