発電・送電・配電が一番わかる (しくみ図解シリーズ)
タイトル通り、発電・送電・配電について図入りで分かりやすく説明されており、電気に関する業界の方、(電力会社・電気工事・電気材料卸販売等々)の方にはぜひ読んでもらいたい一冊です。
平和のエネルギートリウム原子力II 世界は“トリウム”とどう付き合っているか?
「世界はトリウムとどう付き合っているか?」とあるように、
なぜ今トリウム原子力なのかと言えば、2010年以降世界でトリウム原子力を巡り様々な動きが見られるからです。中国ではトリウム原子力を開始することを決めたそうです(トリウム原子力の「検討」ではなく「開始」)。トリウム原子力に興味を持つ国として本書で挙げられている国々(インド・中東など)をみていると、エネルギーが必要であること、ウラン資源の入手性の懸念、化石資源の生産量の先細りの心配、などの共通点があります。
それに加えて、既存の原子力発電がNPT核不拡散の問題、立地に自由度が低い(地震国では使えない、大量の冷却水が必要なので水源が必要)、需要地近くのコンパクトな発電設備という需要に応えられない、などの理由で上記の国々の要求と合致しない事情が存在します。
トリウム資源については資源確保と環境問題(放射能汚染)について多く割かれていました。著者はあるシンポジウムで、海外の研究者から「トリウム原子力を始めるに必要なプルトニウムの資源量が充分でないことは知らなかった」と言われたエピソードを紹介しています。案外専門家でもそんなものかと思いました。レアアース資源を採掘すれば必ずトリウムが発生すること、発生したトリウムについては日本は国内企業に対して埋め戻すように指導しているが、トリウムを発電手段として利用するしないに関わらずトリウムという環境問題は必ず解決しなければならないので、日本はトリウムを資源として責任をもって回収する方が良いと提案されています。
日本の原子力関連メーカーは、海外諸国(インドなど)への原発関連輸出を模索しています。著者によれば、日本側には相手国のニーズを客観的に評価することをせず交渉しようとし、結果的に失敗しています。簡単にしか触れられていませんが原子力関連輸出というのは燃料交換以外は単発のビジネスで、売り上げが大きい割に利益がないようです。世界からみて日本技術として興味があるのは、日本製鋼所の圧力容器(世界シェア80%)だけのようです。
個人的に著者の意見と異なったところ。
・女川原発は震源に近かった。津波発生も福島沖と同様だったが、冷温停止し、その後の運転にも問題はない。従って今回の福島事故が技術的問題だとは言えないし、そのまま原子力発電(軽水炉)の否定に繋がるのは短絡的だという意見。技術的問題でないのは津波や地震という自然現象であり、どの程度発生するかは確実にはわからない。ただ、堤防高さ、原子炉の設置高さ、発電機の配置、これらから想定される津波に対する危険度にはなんら不明瞭なところはなく、「技術的な問題」だと思われます。もちろん、他の全ての発電設備やあらゆる機械・設備と同様、「たまたま」壊れることがある。だから、原子力発電を受け入れるにせよ否定するにせよ、事故や損害の存在を受け入れた上で得失を評価しなくてはいけません。
より詳しい情報が欲しい点。
・トリウム燃料について、着火源としてプルトニウムかウランが必要であるとあります。古川和男さんの「原発安全革命」では、トリウム=
燃料、着火源は核スポレーション反応の増殖炉で生産されるウラン233でまかなうとなっていたと思います。これだとトリウムだけで燃料のサイクルが出来るということだったと解釈しています。本書でも加速器とか未臨海炉の研究とかいう言葉が出てきますが、著者自身は着火源の入手に関してどういうプランなのでしょうか。
・現状では日本の原子力政策は高速増殖炉というプランと燃料再処理を放棄していません。しかし、トリウム原子力へ移行する場合、少なくとも高速増殖炉は高価な無駄でしかないように思いますが、どうでしょうか。
・トリウム原子力と今の原子力政策+原子力産業の関係。今の原子力政策のままだと発電単価が安くても所謂電源三法の交付金などが上乗せされると安い単価はそれに上乗せ出来るマージンとしての意味しかなくなる可能性があると思いますが、その点はどうでしょうか。あるいは、日本は原子力発電を半ば国策で進めていると思いますが、他の産業と比較して、現状の政策のままでトリウム原子力の開発が上手くいくでしょうか。
平和のエネルギー―トリウム原子力 ガンダムは“トリウム”の夢を見るか?
第四世代の次世代原子力発電のひとつトリウム原子力の解説です。
トリウム原子力というとプルトニウムを核燃料として利用できるということや、
溶融塩炉の場合は炉心溶融の心配の無いことなどがよくいわれます。
それに加えて経済性のメリットも解説されています。
たとえば燃料交換の手間が無いため運転維持費が約3割抑制される見込みであること。
エネルギー利用効率も高く、4割超あるそうです。
最新の火力発電にはまだ及びませんがそれでも約3割の現在の軽水炉よりはずっと
良好です。
注目したのは現在のMOX燃料のウランの代替としてトリウムが利用出来る
らしいこと。現在のMOX燃料は、プルトニウムを消費出来るのですが、
発電中にウランがプルトニウムに変化するので、プルトニウムの消費速度は
遅いそうです。
また、トリウムはペレットに焼成しても耐熱性能がウランより高く、
これが燃料棒の温度が高くなり過ぎた時に放射性物質が漏洩することを防ぎ、
かつ溶融塩炉と同様に高い温度で蒸気を利用することが出来るために
エネルギー利用効率の向上に貢献しているらしいです。
後半部分は各国のトリウム原子力の取り組み状況についての解説です。
アメリカやインドなどはかなり積極的に取り組んでいると想像されます。
日本はまだまだ政府も認識がなく、積極的でなさそうです。
グーグルやビル・ゲイツのテラ・パワー社も興味をもっているらしく、
アメリカはさすがに目端がよく効くと思いました。
イノベーションの節目で置いてきぼりをくらいがちの日本がもたもたしていると、
知らぬ間に周回遅れになりそうだという印象を持ちました。
図解でわかるはじめての電気回路
こちらの本は、電気回路の基礎がとってもわかりやすく書いてあります。
はじめて電子回路を学ぶ人や、高校や大学でこれからはじめる人にも
オススメできます。
電気回路の基礎の基礎から、数式を使ってしっかり電気回路が学べます。
読む人のレベルによって、数式は覚える必要がない人でも、
図を用いた説明はとってもわかりやすく、買う価値のある超オススメ本です。
コンピュータを使わない情報教育アンプラグドコンピュータサイエンス
情報教育やコンピュータサイエンスというとどうしてもコンピュータを使わないと教育ができないと思われがちである。一部の先進的な取り組みではコンピュータを使わない情報教育などが取り上げられたりもするが、授業の組み立てには情報科学への深い見識が必要であり、そこまでのレベルに達していない授業者ではコンピュータの使い方学習しかできないのが現状であろう。
本書は題名そのまま、コンピュータを使わずに情報教育を行おうという試みである。その内容は二進数、アルゴリズム、コンピュータ言語など、情報教育の基礎的な内容をほぼ網羅している。そしてテーマごとにゲーム的要素を含んだ取り組みを紹介している。「小学生にもわかる」というくらいなので学習内容としては簡単であるが、情報教育の導入としては全く問題のないレベルである。そこにとどまらず、さらに高度な内容に取り組みたい時にはさらに発展させやすいように工夫されている。
また、コンピュータを使うとコンピュータという機械に幻惑され、それ以上学習が進まないことも多いが、この本に紹介されている取り組みを活用すれば、コンピュータでなく、情報に焦点を当てた授業を行うことがより容易になると感じた。
翻訳書であるため、文章が硬く読み解きにくいと感じる部分が間々見られたのが残念である。そのあたりが星を減らした理由。