邂逅―警視庁失踪課・高城賢吾 (中公文庫)
非常に評価の難しい作品である。
この内容ならこんなページ数いらないでしょというのが本音。
かといって、堂場のものはもう読まないというかと、次回作を期待してしまっている。
ただ題名が大袈裟であるのは間違いないところである。
作中、アメリカのハードボイルドものをそのまま引っ張ってきたのかと思うようなところがたびたびあり、
それが現在の堂場の迷いを証明している気がしてならない。
どの方向に向かうのか模索中というか、
いままでは、書きたいものがあって、それをひたすら書いてきたのだが、
いまや、売れっ子となり、無理やり頭をひねり出して書いているのが見えてしまっている。
前作のレビューで、どなたかが、料理にまつわる話をあまりにも「うざい」と評していたが、
そうでもしないと枚数が稼げないのかなぁと思ってしまう。
今作品でも、本筋にたどり着くまで240ページを費やしている。
それまではどちらかというと、どうでもいい話が続く。
伏線らしい伏線もない。まったくもって、迷走といわざるを得ないのだ。
今の堂場を見ていると、
「青学」つながりでいうと、
ジャンルは違うが、
尾崎豊が思い出される。
尾崎が「尾崎」足りえたのは、
いわゆる若者の代弁者であったデビュー作「17歳の地図」からアルバム「卒業」までであって、それ以降は、歌いたいことがなくなり、作品に行き詰まりを見せ、
ついには薬に手を出し、挙句あのような不幸な事態となった。
出版社との契約で書き急ぐより、
今の堂場には、休息が必要なのではないか。
高城賢吾という主人公は、じっくり熟成させるべき人物だと思う。
私は堂場が好きだ。
だから3年でも、5年でも待つ。
「8年」という高水準の作品でデビューしたため、
ほかの作家よりも高い地点からの出発となり、
受けるプレッシャーも相当なものであったのだろう。
ここらでちょっと休憩してもいいのではないか。
中公文庫、
書き下ろしとはいえ、
900円は高すぎないか。
謀略 警視庁追跡捜査係 (角川春樹事務所 ハルキ文庫)
堂場瞬一の警視庁追跡捜査係シリーズ。捜査本部が解決できなかった事件を別の視点から捜査し、解決するんですが、当然本部からは煙たがられます。
今回もある2件の殺人事件を半年解決できない本部と、別方面から捜査して解決していきます。
このシリーズの特徴は、冷静な西川と熱血な沖田という刑事の仲がいいのか悪いのか微妙なコンビがそれぞれの特徴を生かして事件を解決に導く所です。
今回はどちらかというと普段冷静な西川が熱くなり、今までとちょっと違った流れです。
堂場作品らしく、一気に最後まで読ませてくれますし、結末も結構いいと思います。
ただ、本来の捜査本部が全然機能せず事件を解決できない様はちょっと強引かもしれません。まあそうしないと話が進まないんですが(笑)。
僕はシリーズ中で一番面白い作品だと思いました。
チーム (実業之日本社文庫)
本書は箱根駅伝の学連選抜チームで走る話である。学連選抜チームは箱根駅伝に出場できなかったチームから選抜された寄せ集めのチームなので、どうやってチームが一体になるかということがポイントになっていく。本書での焦点は、キャプテンの浦が中心となって、個人の記録にこだわる天才ランナーの山城をどうやってチーム一体化に引き込むのかということなんだろう。
三浦しをん著『風が強く吹いている』とよく似ている話である。だから、二番煎じという感じも否めないが、本書は本書で、寄せ集めのチームが一体化したときの強さを感じさせる感動ドキュメントを見れるといういい面もある。そういう点では、こういう視点もありなのかなと思う。それに、箱根駅伝を走っているという臨場感を感じさせる。
七つの証言 - 刑事・鳴沢了外伝 (中公文庫)
帰ってきた。
短編だけど、うれしい。短編ならではの余韻の残る作品に仕上がった。
小野寺冴、懐かしい名前だ。七海、これもなつかしい。
堂場ワールドより高城賢吾も友情出演してくれた。
贅沢な一冊に仕上がりました。
大満足です。
断絶 (中公文庫)
本書は一話完結のストーリーだと思う。ラストがそうだったから・・・
鳴沢シリーズの出来がよかったので、本書を読んでみたが、ラストは後味が悪いものだった。出来は平凡だと思う。次回作に期待する。