許されざる者―佐高信の政経外科〈5〉
相変わらず切れ味鋭い批評を味わえるのですが、後半部分の「筆刀直評
日記」のコーナーで興味深い一文を発見。このコーナーは自身の日記と
読んだ本の短い感想を12ヶ月分載せたものです。
■西村京太郎『女流作家』(朝日文庫)
いささか薄味。モデルの山村美沙については、
もっとドロドロした話を聞いている。
これでは何を言いたいか分からないと思います。著者もややセーブして
書いたのでしょう。昔少しだけ報道された、山村美沙が自宅で縄で縛ら
れた状態で娘の山村紅葉によって発見された騒ぎを思い出して頂けれ
ば、誰が縛ったかある程度想像がつくのではないでしょうか。
許されざる者 上
今年に入って、『闇の奥』『翔べ麒麟』、そして本作と著者の作品を続けて読んだが、本作がもっとも読み易く、面白かった。
要因としては、日露戦争を背景としているところ、主人公がいわゆる“不倫の恋”におちるところ、明治終り近くの世相を巧みに組み込んだところだろう。
簡単に言えば、読み易い『戦争と平和』とも言える。森宮(新宮)を舞台にした庶民の暮らしだけではなく、戦場の戦闘シーン、脚気に関する軍隊内での論争など多様な場面が描かれている。
しかし、本書を読んで、恋愛小説は“不倫”を題材にすると魅力が出しやすいことが改めてよく分かった。
本来の読み方ではないが、登場人物のモデルを探すのも面白い。あまり気づかれない人物を一人だけ。熊野病院の佐藤さんというお医者さん。佐藤春夫のお父さんだろう。
許されざる者 特別版 スペシャル・エディション [DVD]
内容に関しては他の方のレビューを参考にしていただくとして、DVDならではの特典について書くことにします。
まず、音声はオリジナルの英語版に加え、タイム誌(ワーナーの系列会社ですね)の映画評論家による音声解説と、吹き替え版があります。イーストウッドの声はもちろん山田康雄。「ルパンとイーストウッドは山田康雄に限る」というファンにはたまらないことでしょう。
さらに、映像特典と称した2枚目のディスクは、合計180分の長尺で、ドキュメンタリーやメイキングが収録されています。中には「真夜中のサバナ」公開時に作られたとおぼしきテレビ特番がそのまま入っているだけのものもありますが、一番の目玉はなんといっても、テレビ番組「マーベリック」(数年前にメル・ギブソンとジョディ・フォスターでリメイクされたアレです)で、イーストウッドがゲスト出演したエピソードがまるまる収録されていることです。
値段も2枚組としては安いですし、「オリジナル予告編」くらいしか映像特典のないDVDが数多いなか、この商品はかなりお得な内容でした。