乱の王女―1932愛と哀しみの魔都・上海 (中公文庫)
日中戦争下の上海を舞台に、戦火の中に咲いて消えたあだ花とでもいうべき登場人物たちが織り成す、短くも激しい物語。
主人公宗好は日本育ちだが、抗日のために中国に渡り、父の遺産を元手にゲリラを組織。ある日、彼は清朝復興のために日本軍のスパイとなった美女・川島芳子(清朝粛親王皇女)に出会い、不思議な魅力を感じる。争乱の中に若い命を賭けるみずみずしく一途な主人公と、男装の美女でありエキセントリックな行動を取るが女性としては深い哀しみを抱える、正に”乱の王女”芳子を軸に、戦いは激しさを増していく。その行き着く先は-------
主人公もさることながら、この作品は川島芳子の描写にすぐれている。いたずらにエキセントリックに、表面的、興味本位に描く作品が多いのに対して、こ!の!!「乱の王女」は、日中両国に利用され、そのはざまに取り残された立場という歴史的事実をきちんととらえて人物造形を行なっている。
ハッピーとは言いがたいラストだが、志に命を賭けた青年は幸せだったのかもしれない・・・と思う。
ぎゃんぶるハンター (集英社文庫)
読み手のレベルにあわせて書くのが娯楽小説作家なのでしょうから、こんな程度のものでよいのでしょう。その意味で★5つとさせていただきます。
娯楽作品としてはそこそこ面白いです。しかし、
しかし、人生を変えてしまうような哲学的なものがまったく感じられません。
(ギャンブルを通して哲学的な悟りさえ得ることもできるものです)
たとえ娯楽作品とはいえ、小説には作者の思想、発想、考え方、生き方、というものが必ず反映されてしまうものです。
僕は生島治郎氏とお手合わせをしたことはありませんが、かなり弱い方のようにお見受けいたしました。おそらく本質的な部分は何も分かっていらっしゃらないようにお見受けいたします。
作者の生島氏、また、ギャンブルを愛するすべての皆様が破滅に向かわぬようにと思わずにはいられません。
以下は皆さんのギャンブルと人生のご参考にどうぞ。
何かに賭けるという意味でギャンブルの出来ない人間には、その手で何かを獲るということなど出来ません。
さてその際、これはギャンブルに限らないのですが、ツキと呼ばれているものは単なる偶然でしかないのです。
単なる偶然が起こることを人は奇跡と呼びますが、偶然を必然的に起こすことが出来ればどうなるでしょうか。
これはツキだとか、潮の流れだとかという次元での勝負ではありません。
さてどうしたら、偶然を必然的に起こすことが可能になるのでしょうか。
それはとても簡単で単純なことです。皆さん自身で探してください。そして見つけ出してください。
法というのは、自らの力で見つけ出したときに、自らのものにすることが出来るのです。
黄土の奔流 (双葉文庫)
冒険小説第一次世界大戦後の上海で、紅貿易公司を営業していた
紅真吾は、一流商社の進出で会社が大打撃を受け、倒産してしまう。
そして、車夫と二人で、最後の豪華な晩餐に繰り出したとき、
一人の日本人を助けることになる。
これをきっかけに、紅は、豚毛を重慶から上海まで運ぶ仕事を
頼まれる・・・。
冒険小説らしく先が読めない面白さ、キャラクターの多彩さ、
そして中国のこの時代を踏まえた史実性などが興味をひいた。
スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎002 (講談社文庫)
推理小説代表作選集 71年、81年、91年のなかから作家の宮部みゆきさんが選んで編んだ、短編集です。
生島治郎 森村誠一 小松左京 佐野洋 都筑道夫 原りょう 夏樹静子 の7作品どれも珠玉でした。
とくに、面白かったのが小松左京の「闇の中の子供」
「歌舞伎の演目の不自然な筋運び」についての洞察が素晴らしかったです。
また、佐野洋の「暗い窓」は
短くて「会話だけ」がサラリとかかれているのですが、
情景や心情がはっきりと伝わってきて、
トリックも面白く楽しみました。
選者が
「エル・ドラ・ドのなかでダイヤモンド鉱を掘るようなこと。」と表現しているとおり、
どの作品も面白くて、あっというまに読み終わってしまいました。
乱の王女 1932愛と哀しみの魔都・上海 (集英社文庫)
日中戦争下の上海を舞台に、戦火の中に咲いて消えたあだ花とでもいうべき登場人物たちが織り成す、短くも激しい物語。
主人公宗好は日本育ちだが、抗日のために中国に渡り、父の遺産を元手にゲリラを組織。ある日、彼は清朝復興のために日本軍のスパイとなった美女・川島芳子(清朝粛親王皇女)に出会い、不思議な魅力を感じる。争乱の中に若い命を賭けるみずみずしく一途な主人公と、男装の美女でありエキセントリックな行動を取るが女性としては深い哀しみを抱える、正に”乱の王女”芳子を軸に、戦いは激しさを増していく。その行き着く先は-------
主人公もさることながら、この作品は川島芳子の描写にすぐれている。いたずらにエキセントリックに、表面的、興味本位に描く作品が多いのに対して、こ!の!!「乱の王女」は、日中両国に利用され、そのはざまに取り残された立場という歴史的事実をきちんととらえて人物造形を行なっている。
ハッピーとは言いがたいラストだが、志に命を賭けた青年は幸せだったのかもしれない・・・と思う。