グアム戦跡完全ガイド―観光案内にない戦争の傷跡
この本は、今年2月に発行された著者の『サイパン&テニアン戦跡完全ガイド』との姉妹編といえる。サイパンやテニアンでの戦争がグアムと同時期に始まったことは言うまでもないが、著者によるとこれらの島々の戦闘は、日米ともに戦闘の指揮・作戦状況などのほとんどが一体的に進行していたという。
さて、このグアムの戦跡は本書によると、サイパンよりも一段と管理され、整理されているということだ。サイパンはどちらかというと、大半の日本軍の兵器類がさび付き、朽ち果てつつあるということらしいが、グアムではほとんどの日本軍の兵器類は、特殊な技術でしっかりとさび止めの塗装がなされているという。
しかし、グアムでは、このように戦跡が管理されている割には、実際、その戦跡を訪れる人々は、サイパンよりも遙かに少ないという。著者が島の中の多くの戦跡を訪れても、日本人よりも外国人のほうが多いという。現実に、グアムの最大の繁華街・タモンには、日本人の若者たちがたくさんいるにもかかわらず、戦跡周辺には人影はほとんどないというのだ。「戦跡ツアー」も、サイパンほど盛況ではなさそうだ。
やはり、ここにも韓国・中国などのような現地の人々と日本人の意識の違いがあるようだ。グアムの先住民・チャモロ人たちは、自らが殺され、大きな被害を受けた「戦争の記憶」(著者によると日本軍占領時代の「大宮島」の記憶)が鮮明に残っているという。にもかかわらず、日本人たちは、その戦争の記憶のかけらさえ思い起こそうとしていないというのだ。
こういう現実の中から、この本が重点的に取り上げようとしたのは、グアムの南部に残されている「先住民虐殺のメモリアル」や「戦時下での先住民たちの収容所跡」であるという。ぜひ、現地を訪れる日本人たちが、これらのメモリアルや収容所跡を訪ねてほしいという著者の想いからだ。
また、この本で取り上げられたのは、戦跡だけではない。グアムの米軍基地の最新状況も取り上げている。沖縄・普天間基地のグアム移転を巡って、グアム島では島全体が揺れているのだ。そして、移転を巡っては、すでにグアムの基地拡張工事が急ピッチで進展しているという。この「軍事要塞の島・グアムの今」についても、アンダーセン空軍基地・アプラ海軍基地を中心に、最新状況が報告されている。
この本をガイドにして、多くの人々がグアムを訪れ、これらの残された戦跡から、平和について学んでほしいと思う。戦争体験者が少なくなりつつある現在、これらの島々の戦跡は、まさしく戦争のリアルな状況を伝えてくれる。
グランドジョラス北壁 (中公文庫BIBLIO)
冒頭にて、いきなり足の指全て10本切断する場面からこの本は始まっている。
普通に考えたら、それだけでクライミング人生が終わったと考えてよいのだが、この著者(小西 政継)が凄いのはそういった逆行を物ともせずに、引き続きクライミング人生に没頭していくこと。
クライミングや旅というのはある意味麻薬みたいなものであり、酔狂者の特権ともいうべき遊びなのかもしれない。
しかし、そんな著者もやはり登山を続けていてはまともに人生をまっとうできるはずもなく、短く激しく命を燃やし最後は山にて倒れてしまう。
登山家にしては文章が上手く、引き込まれるようにして読んでいった。
山を始めた人、これから山をやろうとしている人に、登山とは何かを教えてくれる良書。