BOX~袴田事件 命とは~ [DVD]
歪んだ法治国家の権力の暴走と言うべきか、冤罪は、今の時代でもおこってしまう。悲しい現実だ。この映画は袴田さんは無実であるという立場に立って、ぶれることなくしっかり描いている。睡眠時間を奪い、暴力的で無実の人を犯人に仕立て上げてしまう恐ろしい取り調べが実際に行われていたのではないかと思ってしまう。裁判員制度が導入され、一般の人々が人を裁くというとても難しく、責任重大な事にかかわっていかなければならない。是非、一人でも多くの人にこの映画を観てほしい。そして人生の大切さや命の重みをじっくりと考えてほしいと思います。
おくりびと [DVD]
この映画は、1納棺師について 2「生死」について 3石文(いしぶみ)についてという
3つのテーマで構成されているように思う。
1について、納棺師という職業を「汚らわしい」と妻がなじる場面がある。この設定だが、
この場面に至るまで広末涼子演じる妻がいつもニコニコして物分かりが良さそうだった為に、
演技の問題なのか台本の甘さなのか、インパクトが強いというより違和感が残る。
「納棺夫日記」(青木新門著)を読んだが、夜床で妻を求めた際、「汚らわしい」と拒否
されるのだが、この方が物語としては深い。
また山崎努の演技は最高だが、妻の亡骸を納棺してこの仕事に就いたという動機は甘い。
納棺夫日記の作者には、満州で死体置き場に知らないおばさんと一緒に幼い妹と弟の死体を
捨ててきた記憶があり、この浄罪の気持ちがあったのではと考えると、より奥が深い。
また本木雅弘は、この作品自身の真の生みの親でありその情熱は素晴らしい。また彼は納棺師の
所作自身を美しいものとして捉えている。確かに演技者としてその打ち込み方には頭が下がるが、
その所作が日本の文化的・伝統的に果して意味があるのか私自身は疑問を感じた。
近親者が亡くなったばかりなのに、遺族が納棺師の所作に心を動かされ変化するのは如何なものか?
あくまで納棺師は黒子でなくては。
2について、「生」と「死」をハレとケに区別するのでなく、「生死」という生きとし生けるもの
の一連のサガとして捉える表現としてタコ・サケ・フグの白子・トリ等が出てくるが機微まで描き
切れていない。もっとも描くには宗教や日本人の死生観にまで言及せねばならず、それでは
アカデミー賞は獲れない。その辺のことは久石譲の美しいチェロで味付けされ、私たちは解かった
気になるしかないのである。
3については、ネタばれになるので書かないでおく。映画的で良いエピソードだと思う。
アカデミー外国語賞受賞を見事獲得ということで期待が大きかっただけに、若干、私の感想も
厳しくなったことをお許し頂きたい。しかしこの作品が受賞なら、本選ノミネートまで行った
「泥の河」や「たそがれ清兵衛」にも是非獲得して欲しかったと感じるのだが、アメリカ人から
見るとこちらのほうが理解できたのだろう。