助け人走る/必殺剣劇人
「助け人走る」と「必殺剣劇人」は同じ必殺シリーズというだけでほぼ無関係。曲数合せのカップリングの感が否めません。
メインのBGMは「助け人」の非の打ち所がありません。他のシリーズにあまり流用されていないので後期の必殺シリーズファンには多少違和感があるかもしれません。
欲を言えば、「助け人」の主題歌「望郷の旅」はレコードと放送版では歌詞が一部違います。このCDにはレコード版しか収録されておらずモノラルでも放送版が収録されていれば良かったかも。
「剣劇人」主題歌「ついて行きたい」はシングルで発売されていたバージョンではなく別テイクの未発表バージョンです。一部アルバムバージョンとの情報がありますが誤りでシングルとアルバムのバージョンは同じです。このCDが発売された当時は原盤が紛失とされていましたが、現在はテン・リーのアルバム「熱唱」で聞く事が出来ます。
俳優のノート
具体的な記述の役作りに関する本は今までなかったと思う。
他の演技の本は曖昧な表現が多く、解釈の仕方次第でどうともなるのが欠点です。
日本を代表する俳優の役作りを知ることができる本です。
香川照之氏が教科書として薦めるのは当然のことだと思いました。
ザ・商社-全集- [DVD]
これを小学生のときに見て商社マンに憧れました。ならなかったけど(笑)。
ハゲタカのDVDを見てから数年前に購入したザ商社のDVDを改めて見直そうと思いました。どちらもNHK製作ドラマです。でも、全然違うね。
昔は良かった的な話に日ごろは鼻白んでしまうのですが、ハゲタカとザ商社を続け見すると、昔の人は凄かった!
まあ原作者の格が違うというのありますが、やっぱ高度成長期はパワーが違う。
兎に角、ザ商社は出てくる人が全員暑苦しい。エネルギー満載です。山崎務は言うに及ばず森本レオ、大和田獏、片岡仁左衛門等等、最近のドラマでは迫力があるほうのハゲタカと比較してもエネルギーの次元が全く違います。なんといっても、主要人物が全員甘くない。人情話をモチベーションの核にするような甘い人間は出てきません。一方、ハゲタカに出てくる人は甘い甘い。上杉二郎にかかれば鷲津政彦なんてメじゃありませんよ。
そして、このドラマの最大の見せ場、サッシンンとのネゴシーン。敵対するネゴの相手と不思議な友情が生まれるのはドラマの世界のことだけではないことを知った上で改めて見てもこのシーンはリアルです。
現代の若手ビジネスマン、というか中年ビジネスマンに是非見て欲しいドラマです。
八つ墓村 [DVD]
今まで見た中で最も恐かった映画は何か、という話題で盛り上がったことがあります。この『八つ墓村』をホラーにくくってしまうのは暴挙ですが、子どもの頃に地上波で見て、しばらくは夜恐くて1人で寝ることが出来ませんでした。私にとっては等身大の「最も恐かった映画」です。その場でも絶大な賛同を得ました。みんなあの落ち武者殺しや山崎努の殺人鬼、そして鍾乳洞での豹変・追いかけられるシーンを強烈に覚えていたのでした。
この映画では推理小説としてのロジックな面は後退していると言えます。でも我々が金田一シリーズに持っている印象は、旧家の因襲と愛憎と「おどろおどろしい」事件の数々であり、この『八つ墓村』こそ最もそのイメージに近いものなのだと考えられます(当時あれほど怪奇趣味で喧伝された『犬神家の一族』は今見ると案外スマートな切れ味です)。戦国時代から続く怨念の輪廻。芥川氏による重厚な音楽もこの作品世界にぴったりです。
主人公の辰弥の体験は当時の若者が求めて彷徨した「自分探しの旅」に他なりません。その結果日本の原風景とも言えるものに出会うのですが、同時にそのカタストロフィの現場をも目撃することになるのです(『悪霊島』での古尾谷雅人の役柄も同じです)。当時日本の各地で大小こそあれ同じ現象が起こっていたのではないでしょうか(田中角栄の「列島改造」論で日本中に高速道路が作られ出すのもこの頃)。この様な1970年代の若者こそが真の主役であり、映画館に訪れた人達が自己投影したのだと思うのです。賛否両論ある渥美清の金田一耕助ですが、私は何か刑事コロンボみたいなこの感じが、合理性で情念世界を切り分けるトリックスタートしての狂言廻し役を見事に演じていて、本来の姿のようにも思うのです。あの頃あれほどまでに横溝ブームが巻き起こったのはこんな時代の心象があったからなのです。もうこんな美しく恐ろしい映画は作られないでしょう。