竹易てあし漫画全集 おひっこし (アフタヌーンKC)
「無限の住人」の沙村広明が描く、90年代中後半以降のリアルな大学、学生生活マンガ(表題作「おひっこし」)。主人公のほれたはれたを主軸にキャンパスの風景、人間関係の距離、実家と一人暮しの金銭感覚の差などから大学時代の空気間をさらりと描いている(ように見える)。「無限の住人」のあとがき等からうける、作者が本来もっていると思われる「ノリ」が全面に押し出され、読者を選ぶようなネタや楽屋落ちなども学生生活の内々のコミュニケーションをうまく表現している。いや、そういうノリがやりたくてこういう設定を選んだのかもしれない。そういうところも、ラストがさらりとでもきっちりラブコメしてるのもいい感じ。
オススメです。
ハルシオン・ランチ(2) <完> (アフタヌーンKC)
「才能の無駄遣い」という褒め言葉があるが、その言葉がぴったり当てはまる作品。
サブカルネタやSF設定、小気味良いギャグや可愛い女の子など様々なフックが盛り込まれているが、本作の柱となっているのは、紛れもなく沙村広明の高い画力である。
仮にこの作品をネームはそのままに、大して画力のない作家が描けば、出来損ないの久米田康治作品のような出来になってしまうだろう。
(けして久米田康治に画力がないという意味でも、その作品が出来損ないという意味でもなく)
ネームの時点ではB級漫画なのに、それを高い画力で描くことによって、いわば超B級の輝きが与えられており、そのため元ネタが判然としないサブカルネタや風刺ネタでさえクスリときてしまう。
作り込まれたSF設定は正直無駄、女の子が可愛いことも無駄(サービスシーンは嘔吐だし)、サブカルネタなんてもともと無駄以外の何ものでもない。しかしその無駄なことに対しての手抜きが一切無いことが素晴らしく、画力によってそれらの全てが輝いている。
大御所の名優がゲスト出演した番組でくだらないコントに真剣に参加しているときのような、無駄な豪華さ、無駄なクオリティの高さが魅力的な一冊。
ただし「無限の住人」が好きならオススメ、とは言えないので、未読であれば先に「おひっこし」を読んで、ノリについて行けたなら買い。
無限の住人(コミックス・イメー
全曲、人間椅子によるサウンドトラックで、詞はコミックの内容に基づいたものです。当然のことだが椅子のアルバムとして聴いても違和感がなく、楽曲もスピーディ~スロー・テンポのものまでバラエティに富んでいて曲の展開も複雑。クオリティも申し分なく、自分は「人間失格」と同じくらい聴き込みました。自分は元々、人間椅子が好きで無限の住人は知りませんでした。このアルバムを聴いてコミックを読んだのですが実に面白い。人間椅子好きな人は絶対にはまってしまうと思うので、コミックも併せて読むことをお勧めしたいです。