再現・昭和30年代 団地2DKの暮らし (らんぷの本)
昭和20年代後半の生まれですから、本書に掲載されている写真の生活そのものが懐かしかったですね。
「団地」という概念がやっと日本に広まった頃です。憧れの文化生活が送れるということで多くの人の希望と夢がそこにありました。
「2DK」という今からみれば狭い空間ですが、結構工夫された生活様式が営まれていましたね。
様々な懐かしい生活用品と当時の写真と再現された数々のアイテムを見ながら、今から半世紀前の生活を振り返らせていただきました。
好著です。
和家具三昧―下北沢・アンティーク山本商店、小さな安らぎと和みのかけら、売ります (MARBLE BOOKS)
最近の住宅は便利な収納が壁に付き、突起が少ないスクエアな部屋の作りになっているが、それは部屋自体が狭いからに他ならない。「家具」を置くことのできるスペースや生活空間があることはこの上ない贅沢だとおもう。そしてその家具だが、現在の日本では佇まいが誇らしそうな家具類は姿を消してしまった。それは大量生産がもたらした負の部分だろう。
本書の主役である「山本商店」は生活骨董(和家具)に重点を置き、仕入れ、リストア、販売までを手がけているアンティークショップだ。
本書でも何点か紹介されているが、もう手に入らない手業の和家具はある意味一点ものである。
是非訪れてみたいお店である。おっとこれは本のレビューだったな。
不動産絶望未来 ―これからの住宅購入は「時間地価」で探せ!
衝撃的なタイトルに引かれて購入しましたが、期待を裏切らない収穫の多い本でした。
マイホームが欲しくなると、かなり高い買い物なのに、家族の幸せを期待したり、また見栄もあってか、不動産業者に勧められるままに時間をかけずに購入してしまう人が多いと思いますが、それではいけないという事がよく分かりました。
これからのマイホーム購入は「時間地価で探せ」とか「マクロ買いで」とか力強く説得力のある言葉で、筆者がご自身のマンションを購入されるまでにがむしゃらに調査してきた事が、おもしろおかしく書かれています。マンション購入も考えていますので、筆者の言うように「住宅地の価値をブランドではなく通勤時間の短さで評価」したいと思います。
昭和住宅メモリー―そして家は生きつづける。 エクスナレッジムック―X-Knowledge HOME特別編集
パラパラとめくるだけでも面白い。サブタイトルに「そして家は生きつづける」とあるが、人が生きつづけるからこそ、その「場」に記憶が宿るのだ。
しかしながら、ちょっといやみな感じのする本である。
はじめにノスタルジーありきで作った本という印象を受けるのがもったいない。
そうそうたる面々が参加しているので期待が大きすぎたのかもしれないが。
「月給百円」のサラリーマン―戦前日本の「平和」な生活 (講談社現代新書)
決して悪い本ではないのだが、新書のページ数を考えると対象範囲を広げすぎで、そのためすべての章において深みを欠いている。表面的にデータを網羅しただけに見えなくもない。余計なエピソードの紹介も多く、社会全体の中における俸給生活者の位置付けを考究しようとしているのか、それとも俸給生活者に軸足を置いて世相全体を見渡そうとしているのか、あるいは学生も含めた中産階級(の祖形)の意識を探ろうとしているのか、それらの間にブレがあって著者の意図がよくわからない。読み進めていくうちに、だんだんテーマがずれていくような気がする。終章の主張は、それ自体は理解できるが、本書のテーマと論の進め方から見ると突飛というか、蛇足の感が強い。
どうせなら、タイトルが『「月給百円」サラリーマン』なのだから、俸給生活者に絞って論を深めた方がよかった。
すでに昭和戦前期の社会風俗に関心を持って追っている人にとっては、読んで当り前の本を多く参考にしているので新たに得られる知見は少ない。また、参考文献の中に、いささか疑問符の付く著作が含まれているのも残念。そのくせ、読むべき先行研究を外しているのは気になる。たとえばこの種の本としては一度は参照するであろう今和次郎の『新版大東京案内』を見ていないようだが(参考文献として挙げられていない)、都市生活者の経済を追う本として如何なものか。
厳しいことを書き連ねたが、この時代の都市生活者の風俗を書いた本としては、さしあたって今読める本としては手頃。そういう意味では、昭和戦前期の都市風俗に関心を持つという人には悪くないだろう。