Romeo and Juliet (Shakespeare, Penguin)
これほど古典的で新鮮な恋愛物語は二度と出て来ないと思われます。シェイクスピアに最高の賛辞を送らずにはいられません。この戯曲中に登場はしないが気になる人物が一人います、ロミオがジュリエットに会う前に恋焦がれていたロザラインです。このロザラインについて素性を知る唯一の手がかりはジュリエットの父キュピレットが記した舞踏会の招待者リストに my fair niece Rosaline (我が麗しの姪ロザライン)と書いてあることです。なんと、ロザラインはジュリエットの従姉妹にあたるのです。当然、ロミオのモンタギュー家と対立関係にあるキュピレット家の一員です。また、ロミオが殺したティバルトとは義理の従兄妹関係である可能性は高いのですが、血の繋がった妹であった可能性もあるのです。ここまで考えるとシェイクスピアの術中に完全にはまってしまった感がありますが、ついでにもう少し。ロミオがロザラインに求愛していることはキュピレット家では知られていません。もし、ロザラインがロミオを嫌う性悪女だったら、彼女はロミオのことをキュピレット家じゅうに言いふらし、物笑いの種にしていることでしょう。こうなるとロミオの悪評はジュリエットの耳にも入るでしょうし、舞?会からも締め出されていたかもしれず、この恋愛も両家の和解も無かったでしょう。ロザラインは天使か、もしかしたら両家の不和のために自分の気持ちを胸に封印して本当はロミオのことを愛していたのではないでしょうか。これは単なる深読みのしすぎでしょうか、シェイクスピアはここまで計算していたのでしょうか。
マクベス (新潮文庫)
シェイクスピアの悲劇中最も短く最も劇的に話が展開していく。陰鬱な暗殺劇からマクベスの有名な独白「人生は歩く影に過ぎない・・」に見られる後悔の凄まじさなど、読者を話に引き込み、あっという間に読めてしまう。
少し前の精神分析批評に、魔女の予言はマクベスの隠れた無意識の願望を代弁しているに過ぎないという論がある。その通りに解釈するかは人それぞれで、そこに面白さがあると思う。
シェイクスピア全集 (2) ロミオとジュリエット
この作品を下地にした映画やドラマなどでは家族同士の確執による悲恋物である点を強調しているので、かなりロマンチックな物語と思いきや、他のシェイクスピア作品と同じで登場人物は直接的な猥雑さに溢れている。むしろ、それがあるので純粋さが強調されていると言えようか。
出会いや逢瀬、有名な最後のシーンなどはテキストで読むとあまりにもあっけなく、舞台上での演出家の腕の見せ所と思える。
物語を語る単調なドラマではなく、いわゆる「ボケ」「突っ込み」などが溢れる喜劇的なやりとりの中に、真情を吐露する独白が混じったり、セリフに文化的な教養や時事性、痛烈な皮肉があるのには驚いた。さらにセリフに溢れる罵詈雑言、猥雑さに驚き、「ライブ総合芸能」としての演劇のエネルギーというかエンターテイメント性に感心した。実際には衣装、舞台装置や照明、そして客の反応を見るような間が演出されたりするのだろうが、あまり馴染みがなかった「演劇」にがぜん興味が湧いてくる。
原典が古いうえ何通りもあること、さらに解釈が色々あるのが古典の常だが、国内外の前例を踏まえた丁寧な脚注や解説がそれらを補ってくれている。こちらは文学という学問ジャンルへの取り組み方の認識が改まるところだ。
天保十二年のシェイクスピア [DVD]
シェイクスピアに少しでも興味を持たれたなら是非このDVDをオススメします。シェイクスピアの全作品の面白い要素を全て盛り込んだ劇ですが、簡潔にまとまってるのがすごいです。
堅苦しいイメージのシェイクスピアを歌と踊りとチャンバラと下ネタでみごとに打ち破ってます。これでもかと繰り出されるスケベボキャブラリーは圧巻。
シェイクスピア初心者なら、これからシェイクスピア劇を読んでいく中で、あのシーンはここから来てるんだな、と楽しみながら読むことも出来ますよ。
もちろんシェイクスピアオタクにもニヤリなギャグがあちらこちらに散りばめられています。
ただ、このDVDの欠点はというと、少しだけですが大人の事情で音声がカットされている部分があります・・・。やっぱり曲の使用料って結構かかるんでしょうか。