“本物”を見極める ~3億円のヴァイオリンはいかに鑑定されるのか?~
ストラディヴァリウスなどに代表される、
300年前に造られたヴァイオリンが、現代でも最高峰の質を誇っている。
現代の技術をもってしても、このイタリアン・オールド・ヴァイオリンを越えるものは造れません。
永い時間をかけて受け継がれてきた造形技術、木材やニスの熟成の織り成す成果には、
いかに科学が発達したとしても、万能ではないという現実を教えてもらえます。
そんな繊細な楽器を、買取から販売まで一貫して商売にしている人は、世界中でも殆どいないそうです。
それは何故か?
ヴァイオリンの銘器と呼ばれるものは、実に市場価格5000万円以上。
300年という月日の中では、贋作や模倣品、弟子や一派の作によるもの等、その真価を問うのが非常に難しい世界です。
移動や保管にしても細心の注意を要します…
何にしても、生業にするにはリスクが高過ぎるというのがその理由なのでしょう。
そんな背景をもつこの業界で、リスクを負いつつも一貫した買取・販売にこだわる
数少ないヴァイオリン商が、本書の著者です。
著者がこの道に入ったきっかけ、失敗談、銘器との出会いなど、
数多くない仕事だからこその、稀少な体験談が大いに魅かれます。
詳細は本文に譲りますが、著者の役目のひとつは、
不運なヴァイオリンを救うことだといいます。
また、良いヴァイオリンは売ろうと思わなくても、その楽器を選ぶお客さんは決まっている。
そして自ずと、その時期に現れるという話には興味を覚えました。
人と人が偶然巡り合うというのは、よく聞く話ですが、人と楽器にもそういう巡り合いがある。
さらに、ヴァイオリンは人よりも永く活かされ、次の主へと引き継がれていく…
愛された楽器の価値は、そこで再び上がっていくそうです。
そんな銘器を仕入れる際、鑑定にはどれ程の時間がかけられるのでしょう。
鑑定は1秒。買うか買わないかは一瞬で決まります。
銘器にはひと目で「それ」とわかる一流のオーラが出ているそうです。
「本物を見極める」 ハイリスクなヴァイオリン商の鑑識眼。
楽器とヒトとの切磋琢磨な関係を、そこに見出すことが出来ました。