Rubicon Beach
この小説に時間という概念は存在しない。生の同時性、運命の並列性、話者の視点に応じて絶えず変化しつづける世界。そこは我々の知るアメリカではない。というか我々の知る世界ですらない。その変化に翻弄されながら、生を超えて互いを求め続ける男と女、それは愛なのか?それとも壮大な混沌を秩序付けるたった一つの鍵なのか?
読んだ者は間違いなく混沌の世界に取り残され、しかし力づけられることでしょう。傑作です。
クライド・ザ・キャット
『Melodica』や『When Gravity Fails』の頃に比べると、ヘヴィ&ダークだった楽曲も明るく爽やかな路線に戻り、シンセが多用されオーバープロデュース気味だったサウンドプロダクションも(まだ奥行き感が乏しいものの)より解消され、多少ライトなサウンドに戻った前作『212』に続いて、名作『Staring At The Sun』路線に回帰しつつある印象が、より一歩推し進められています。
楽曲クオリティは、Neil節が炸裂する"超"良質な楽曲が目白押し!
特に"Endless Highway"、"Higher and Higher 2012"、"Jewel"、"Violet Twilight"、"In My Dreams (Live Studio Version)"といったところは期待を裏切らない最高レベルの完成度を誇っています。("Jewel"、"Violet Twilight"ではSteve SmithがDs.で参加して素晴らしいプレイをしてくれます)
テクニック的にもアルバムごとにどんどん正確さを増し、高速フレーズでの音の輪郭やアタック感は素晴らしい。
作品ごとに進化を続けるNeil Zazaは本当に素晴らしい。
ワールズ・コライド
なんといってもお帰りなさい、マーシー。きっともうシーンに戻ってくる気はないと思って諦めていたのに、それがこんな…最高の形でのカムバックとは、ただもうそれだけで奇跡です。アンルーリー名義ではその後2つのアルバムが作られ、それはどちらもなかなかに優秀なアルバムではあったけれども、今こうして本家のアンルーリーチャイルドとして帰って来てみれば、それらはアンルーリーと呼ぶわけにはいかない作品と思えてしまう。実際、2ndにも3rdにも、Basement Demoに収録されていた曲がいくつかあり、マーシーをVoに擁したそちらのヴァージョンの方が、デモでありながら遥かに良い出来だったという事実もある。そして本作において戻ってきたマーシーの歌は、透き通ったハイトーンでありながら、決してキンキン響いて耳障りになることなく絶妙のバランスで抑えられ、シャウトにおいてすらぶれることのない確かな音感と、感情表現、声の抑揚にいたるまですべてがかつての輝きを失うこともなく、感嘆と感動を与えてくれる。なによりあれから十数年経っているのに声のトーンと強さにまるで変化がないのが驚き。きっとずっとトレーニング続けてくれたんだろうね。ありがとう。アルバムの曲に関しては、かつての1stと比較すると、若干プログレ的な曲の展開になっている感じがした。そういう意味では全身のワールドトレイド的な部分が少なからず感じられるのかも知れないが、あくまでプログレ的に過ぎないので、聴き易いハードポップ・ロックの佳曲がつづく。3,4,5,6,9は文句なしの名曲。特にタイトルトラックの6とPvの9の出来の秀逸なこと。1stの、あの感動がよみがえります。