パガニーニ:24のカプリース
「DVD付」の方で多くの方がレビューされているとおり、難しい曲を難しいと感じさせない自然な演奏で、「ヴァイオリン」のストラディヴァリウスのはずなのに、低音楽器かと感じさせるような野太く暖かい音色に、心が温まります。
他の「大御所」のも何枚か聴いてみましたが、やはり神尾さんの自然で暖かい音色のこのアルバムが、一番安心して聴けると感じました。...高速の重音奏法、左手のピチカートなど、格好良い技巧のオンパレードですが、実は曲自体はメロディがきれいで不協和度も低いと思われ、神尾さんの歌うような弾き方によって、曲の美しい面が引き出されている印象です。
名曲や難曲を「自然に弾く」「さりげなく弾く」...実は、一番難しいことかもしれません。神尾さんは、それができる技術と才能の持ち主だと思います。
PRIMO(初回生産限定盤)(DVD付)
幼少の頃から数々の賞を取ってきただけはありますね。テクはさすがですが、弾き方にやや乱暴なところがあるような気がします。ハイフェッツやミルシテインのように正確な音を出すタイプではなさそうで、どちらかと言うとオイストラフ風でしょうか。音はふくよかで大らかな感じですね。将来が楽しみです。
アート・オブ・ヴァイオリン [DVD]
オリジナルの映像は素晴らしいのひと言ですが、とにかく日本語訳がひどすぎます。まったくの素人が日本語訳を書いたとしか思えないほどひどい。
具体的個所を全部あげるのはあまりにめんどくさいので、とくにまったく違ったことを言っている個所をいくつか指摘してみます。
シデティーの演奏についてパールマンが解説している部分
「昔は弓をいちいち前後に動かしました」「流行遅れの運弓法です」
パールマンは左手のシフティングについて話していますが、日本語訳は何故か弓(右手)となっています。ご丁寧に「運弓法」などと、まったく言ってもいないことを勝手に「日本語訳」しています。
ハイフェツの演奏についてヒラリー・ハーンが解説している部分
「特にハイフェツの音はクリアで音符が一音ずつはっきり聴き取れます。完璧じゃありません。良く聴くと時々音符が抜けています。勢いよくすっ飛ばした感じ。なのに完成されています」
この「日本語訳」だと、どう読んでも、ハイフェツが音符をすっ飛ばしているのだと思いますよね。でも、実際はまったく違います。この部分でハーンが言わんとしていることは、
(早いパッセージなど)一見凄いと思える演奏も、よく聴いてみると、音が抜けていたり、すっ飛ばしたりしているという演奏家がいますが、ハイフェツはどんなに早いパッセージでも一音一音すべての音をくっきりと、完璧に演奏しています」
とまあ、こういった感じで、トンチンカンな事や、まったく逆の事を言っている「日本語訳」には呆れるばかりです。
せっかくの素晴らしいDVDなのですから、日本語訳も、予算をけちって素人などに頼まず、ちゃんとプロを使って、しっかりした物を作ってもらいたいです。
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲(初回生産限定盤)(DVD付)
神尾の粘っこくドロ臭くもも、抜けるような演奏は見たこともない私にもロシアの大地を思わせる素晴らしい演奏です。
ただ、惜しむらくは録音が悪い。彼女の、ヴァイオリンの限界と戦ってでもいるような一音一音を踏みしめる様な筋力の強い演奏が生み出す迫力が半減してしまっています。