死神の谷 [DVD]
本来「死滅の谷」と云われている本作をわざわざタイトルを変えた事については賛否両論ありそうですが、
ドイツ語「Der Mude Tod(疲れた死神)」を英語で「The Weary Death」と訳し、
それを日本の公開会社が誤って、(当時はフィルムを見る前にタイトルを決めなければならず、仕方なかったのだが…)
Deathを"死"あるいは"死滅"と訳した為にこのタイトルがついたと云われている。
その為、今回の「死神の谷」はむしろ本来のタイトルだといえる。
それにしても、すばらしい映像美、そして誰もが納得できるよく練られたストーリー、
完璧な映画とはこの事だと思います。
若かりしラングの最高傑作にして、もっとも待ち望んだ映画です。
これが日本で、しかもこの価格で観れる事は奇跡としか言いようがありません。
また、今までのWHDのDVDとは比べ物にならない美しい画質に納得。
1980円はお得な買い物と謂わざるおえません。
よく落語「死神」の元ネタといわれていますが、それはネット情報の間違いで実際はグリム童話「死神の名付け親」が原作です。
カリガリ博士【淀川長治解説映像付き】 [DVD]
新しくパッケージがリニューアルし、“IVCベストセレクション”と銘打っているので、少々期待していました。
一応、IVCに問い合わせたところ、やっぱり中身は以前と変化なし。
もう少し努力をしてほしかった…(値段的に努力したという見方もできますが)
この作品、ドイツ表現主義の理解によって随分と見所の変わる映画だと思います。
乱暴ですが、一応自分の理解に基づいて説明を。
表現主義は、端的に言って、見たままを描くのではなく、どう感じたかを主観的に描く表現方法です。
ですから、いろいろなものがデフォルメされて描かれているのが特徴といえると思います。
この作品は精神病患者の語りを映像化したものですから、精神病患者の不安や恐怖や混乱がどう表現されているか(特に美術)を意識して見ると分かりやすいように思います。
監督はロベルト・ヴィーネですが、もともとはフリッツ・ラングが監督をする予定だったようです。
また、脚本はカール・マイヤー、他にもムルナウの「最後の人 (F.W.ムルナウ コレクション/クリティカル・エディション) [DVD]」「F.W.ムルナウ コレクション フォーゲルエート城 クリティカル・エディション [DVD]」「サンライズ クリティカル・エディション [DVD]」「F.W.ムルナウ コレクション/クリティカル・エディション タルチュフ [DVD]」などがあり、それぞれ紀伊國屋から素晴らしいプリントでDVD化されています。
IVCらしく、映画は最高ですがプリントは悪いです。
紀伊國屋がサイレントをあれほど美しくDVD化している今となっては悲しいくらい。
興味のある人は必見の映画ですが、ストレスは覚悟が必要です。
この映画、ホラーの原点というように言われていますが、個人的には少し違う印象を受けました。
なにか狂気と哀しみが同居するような怖さというか。
それは精神病をモチーフにしているところに鍵があるようです。
現実と妄想が入り混じり、どこまでが現実なのか分からなくなるような感覚。
映像は古いのですが、全体のスタイルは非常にモダン。
カール・ドライヤーの「ガートルード [DVD]」、フリッツ・ラングの「フリッツ・ラング コレクション/クリティカル・エディション ドクトル・マブゼ [DVD]」を強く想起させる映画です。
興味があればこちらも是非。
ホラー映画の世紀 (別冊宝島 1577 カルチャー&スポーツ)
マニアというものはよりコアで重箱の隅をつつくような内容を求めるものだ。だが、分かりやすい内容で幅広く映画を紹介するガイドブックがあってもよい。だがら、マニアが入門書を取り上げて、「こんなのみんな知っている内容だよ」などと言ってみたところで仕方がない。
本書は多からず、少なからずのホラー映画を取り上げている。それをいくつかのジャンルに分類したうえで、そのストーリーと解説を掲載するというベーシックな構成だ。そのなかに各ジャンルのトピック的な記事が挿入されており、パラパラと興味のあるページだけを読んでも、はじめから通読しても楽しめるような作りになっている。
例えば、本書で紹介されている映画のうち、自分の見ていない作品を最初のページから見ていくというのも面白いのではないか。
「カリガリ博士」と「フリークス」のDVDが付録となっているのも入門書として手取り足取りの感がある。
カリガリ博士 新訳版 [DVD]
製作されたのは、なんと88年前。ヨーロッパでいえば第一次大戦が終わった年、日本の大正8年(明治が終わって7年目)。それでいて、めくるめく斬新さ。
今日ではよく目にする筋書きですが、二転三転してラスト、これで本当に終わりなのか? と思わせる、その表情がミステリアス。
歪んだ街並みなどのセットは私には童話的に見え、同時代の作家カフカの「変身」なんかの雰囲気を連想しました。
サイレント映画で、英語字幕入り。日本語字幕をON/OFFにすることができます。
古い映画にありがちな、表情や動作が唐突に変化して違和感を与えるところもあります。しかし、この作品がいつでも好きなときに鑑賞できるのはすばらしい。
怪人カリガリ博士 [DVD]
「サイコ」の原作者ロバート・ブロック脚本によるサスペンス、ホラー まちにまった国産DVDの登場です。私は、パル方式の輸入盤DVDで観ていましたが、字幕がないと、こういうミステリー調映画は、魅力半減です。今回、字幕付きの国内版が観れるので、今から楽しみです。この映画の見所は、ラストのハッタリのきいたドンデン返しもそうですが、ドイツ表現主義を思わせる回転扉や斜めになったゲート等の凝った美術 、そして劇中挿入されるシュールレアリスティックな場面等、怪奇ムード満載の必見映画です。
今後は、ウィリアム・キャッスルの諸作品 「第三の犯罪」「血だらけの惨劇」等期待したいところです。