プライムセレクション 柏原芳恵
デビュー曲+TOP10ヒットだけを集めて\2000とお買い得の『ゴールデン☆ベスト』、ご本人のお気に入りを集め、ファン待望のTV映像のDVDも収録したコア向けの『CD+DVD THE BEST』の2作は、非常によく出来ていて、芳恵さんの表現力の高さも味わえる作品だと思います。
ですが、これはいったいどういったこだわりなんだろう・・。
「第二章・くちづけ」よりも「乙女心何色?」にこだわった理由、名曲と言われる「夏模様」、松本隆-筒美京平コンビで歌謡ファンも多い「ト・レ・モ・ロ」を外してまで、アルバム曲の中島みゆきカバー「アザミ嬢のララバイ」を入れた理由が分からない・・。音が特別、良くなった訳でもないし。これだから、レコード会社はいい加減・・と言われてしまいそうな内容なのが残念。表現力アーティストのカラーがしっかりしているだけに。
教授とミミズのエコ生活
この53歳の女子大に務める哲学教授の独身男性と、12年間に渡るミミズとの暮らしの話は
バツグンに面白い。
教授は生ごみを堆肥にするために、いや、ミミズを飼うために12年間生ごみを与え続け
その間に絶滅や繁栄をくりり返す。
それだけの花無しがなぜ面白いかというと、教授がコレクターという名のオタクだからである。
烏龍茶缶、サプリメント、AV、ドリンク剤、虫、そしてミミズ。
オタクの話というのはさいしょは「へぇ、はぁ」うなづいて聞いていてもそのうち、退屈になってしまうものだが
その理由はたいてい、同じ話を繰り返すからである。
その点、本書は本の分量があるものだから、繰り返しにもブレーキがかかっていてよろしい。
なお、更によろしいのは、ミミズなど見るとつい語りたくなってしまう哲学を語らないところである。
論理パラドクス―論証力を磨く99問
卵が先が鶏が先か、等などを論理学でとらえて99問、知的エッセイとして読める。
著者の小説ファンではかならずしもないが、文学をやってる人間のキレがある。
小生の頭の固さに響いて亀裂も与えてくれた。
ラッセルのパラドクス―世界を読み換える哲学 (岩波新書 新赤版 (975))
ウィトゲンシュタインが指摘した(と私は思っているが)ように、人間はパラダイムによって隔てられていて、相互理解を阻まれているが、それ以前の問題としてそれぞれの人間は自分なりの論理を持たなくては、自分なりに世界を解釈することができない。
ラッセルは、論理学の構築に貢献した人物だと思っていたが、この本でその突き詰めた思想がどのようなものだったかを知ることができたと思う。
数学の集合論で、集合の集合が禁じられている理由、またそれによって起こる矛盾をどう回避できるのかをより深く理解できた。
センシビリアは、観測可能性と置き換えても良いように思うが、観測ではなくて知覚が世界を構築することにつながっていくのだからやはりセンスという観点が重要なのであろう。わかったように思っている、あるいは単純だと思える論理学も、世界を記述する手段として考えるときには深い思索を必要とするのだといこうとを知ることができて良かった。
可能世界の哲学―「存在」と「自己」を考える (NHKブックス)
この著者の考え方に「ほぼ」同意見です。同じようなことを考えている人っているもんですね。
といっても私が「そこ」に辿り着いたのは「今世紀に入ってから」ですけど。
20世紀末に、量子論まで絡めて「可能世界」について哲学的考察を行ったこのような書物がすでに存在していました。
ただ、最後まで読まないと著者の「結論」が見えてこない本ではあります。
でも、その最後の結論部分が実にすばらしい…
子供の頃、「<自分>が死んだら、この世界はどうなるのだろう?」とか「<自分>が食べるたくあんの音と他人の食べるたくあんの音が違うのはなぜ?」とかいった独我論的疑問を感じたことのある人には、ぜひご一読をお勧めします。
ただし、私は「通常使われている意味での」人間原理というものを肯定はしません。
また、今ではシャンカラの不二一元論でこのような独我論的問題を解決できると考えています。