Live in Concert
これが出た時(96年)は驚いた。盆と正月が合わさったような幸せな気分を味わった。今聴いてもすこぶる興奮する。なんと言ったって天才スティーブ・マリオットの絶頂期、Band自体もPeakを迎えていた1973年5月6日のサンフランシスコでのLiveであり、この2日後に初来日を果たしている。
ハウリング寸前の音を出して激しく弾きまくるクレム・クレムソンの1959GibsonLesPaul+Marshall、モコモコ音で自由自在にリズムをサポートするグレック・リドレィのFenderPrecisionBass、シンバルを必要以上に叩きまくるジェリー・シャーレイのドラム、どれを取ってもRockBandはかくありきの演奏である。ここにあのスティーブ・マリオットのsoulfullなVocalが、これでもかと耳に突き刺すんですから堪りませんわ。この時期ならZEPもStonesも敵わなかったんじゃないでしょうか?彼のようなHi-ToneでシャウトするVocalは他に類を見ない。と言うより唯一無比。誰も到達できない人類未踏の世界を彼は間違いなく自分のモノにしていた。惜しい実に惜しい、不慮の事故で91年に没。だから本作が発売されたとは思いたくないが、他にも素晴らしい録音があるのではと下衆の勘ぐりも入れたくなってしまう。Bassのグレック・リドレィも03年に没した。再評価を期待して止まない。
Humble Pie [DVD] [Import]
他のDVDの宣伝が多く、実質的には4曲入り。いずれも初期の今で言うPV集で、ピーターフランプトン在籍時のもの。#1、#2は白黒で口パク。#3、#4はテレビスタジオライブで実際に演奏している。映像が少ないハンブルパイだけに、この2曲はとても貴重。スティーブマリオットがすでに異彩を放っているのが興味深い。個人的にはSマリオットは歴代のロックヴォーカリストの中でもNO.1だと思っているのだが。DVDとしての中身は薄いが、値段を考えれば満足か。
スティーヴ・マリオット・ストーリー [DVD]
91年寝煙草による火災で焼死したスティーヴ・マリオットを回顧するDVD。インタビューが主体でライブ映像は少ないが、クレム・クレムソン在籍時ハンブル・パイの映像があるのがうれしい。「アイ・ドント・ニード・ノー・ドクター」が丸々1曲収録してある。このライブ映像は本当に凄い。スティーヴの火の玉シャウトとパフォーマンスは、今まで見たスモール・フェイセスやピーター・フランプトン在籍時のパイ、また84年のパケット・オブ・スリーの映像とは比べ物にならない。160cm強の華奢な体から発せられる強烈なパワーはまさにダイナマイトだ。スティーヴの絶頂期がこの時期であることがはっきり分かる。この時期のものはもう1曲「ブラック・コーヒー」が収められている。スタジオでの映像と思われるが、ブラックベリーズとの息の合った掛け合いが聴ける。インタビュー映像に寸断されてしまっているのが残念。他にもこの時期の映像があるのだったら、ぜひ演奏をきちんと収録したDVDを出してもらいたい。
インタビューでは、スティーヴとの友情と確執の想い出に思わず目を潤ませるピーター・フランプトンが印象的。「こいつ友達思いのいいヤツだったんだな」と思った。頭も薄く地味なおじさんになったフランプトンを見て時の流れを感じる。他にインタビュー出てくるのは、ジェリー・シャーリー、クレム・クレムソン、グレック・リドリー、リック・ウィルス、サイモン・カーク、スペンサー・デイヴィス、クリス・ファーロウなど。
インタビューから見えてくるのは、浮き沈みの激しいロック・ビジネス、アルコールとドラック漬けの生活、その結果としての常軌を逸した行動・・・スティーヴも60~70年代のロック創成期を駆け足で生きたロック・スターの一人だったのだとあらためて思う。
※輸入盤のため字幕無し。日本でパッケージされたものは対訳ブックレットが封入。
Smokin
音楽性の違いから、ピーター・フランプトンが脱退し、スティーブ・マリオットの趣味嗜好を前面に押し出した作品。ハンブル・パイで最も売れたアルバムだ。マリオットと言えば、黒人顔負けのソウルフルなボーカルが売りだが、彼の嗜好を推し進めるにあたり、新たに迎えたギタリスト、デイブ・クレム・クレムソンはまさにはまり役!。ハンブル・パイのイメージ通りの熱〜いロックが、(1)「Hot & Nasty」から展開されていく様は小気味いいばかりだ。
バンドは次作「Eat It」以降、マリオットのワンマンバンドとなってしまい、急速に勢いを失ってしまうのだが、今作でのバンドとしての一体感は素晴らしく、奇跡のような“バンド・マジック”を堪能できる。なにか、嬉々としてギターをかき鳴らし、シャウトを繰り返すマリオットの姿が想像できる、熱いロックアルバム。