愛と狂気と死の物語―ラテンアメリカのジャングルから
クレオールは北アメリカでジャズの誕生に重要な役割を果たした。彼らの複合文化はさまざまな芸術分野で化学反応を引き起こし、花開いた。本書に収められているキロガの短編もそのような複合文化の結晶といえるのではないか。
タイトルにあるとおり、これらの小説の主役は密林であり、大自然である。添え物に過ぎない人間は、しかし、未知の暗闇に翻弄される姿が的確に描かれる。
本書を読んでいて、芥川龍之介を思った。芥川の描く今昔物語の世界が、キロガの密林なのだ。「一粒のダイヤ」のとぎすまされた鋭い描写は、芥川を彷彿とさせる。狂気に陥りかけ、服毒自殺した芥川と、不幸を背負い、同じく自ら命を絶ったキロガ・・・・・どちらも子供向け文学にも長じていた同時代人だったというのは偶然の一致というものだろうか。
狂気の愛 (光文社古典新訳文庫)
シュールレアリスムの中心的存在、アンドレ・ブルトンの代表作。
20年以上前に読んで、「なんだかよくわからないけど凄い」と思ったことだけは覚えている。
今回、古典新訳で読み返してみて、まずわかりやすさに驚いた。
もちろん、シュールレアリスム文学だから、難解で詩的な表現も多い。
全体のプロットも、つかみ所がないとも言える。
しかし、大胆な訳と、詳細な注釈で、シュールレアリスムの世界観のようなものを
実感させてくれる。
愛のどんな敵も、愛が自らを讃える炉で溶解する
いいなあ……。こういうフレーズを書きたいものだと思う。
まさに「詩」だ。
いずれにしても、ブルトンの作品がこんなふうに手軽に読めるだけで感動である。
私の夜はあなたの昼より美しい 〈ヘア解禁版〉 [DVD]
この映画を見て、難しいと思ってしまう人はおそらく「水戸黄門」に慣れすぎてしまっているのだ。残念ながら、最後まで印籠は出てこない。
何度も見ても、その都度異なった自分なりのストーリーができあがるだろうし、またストーリー化されない残余が残るだろう。リュカの脳病なんてなくともストーリーは成立しうるだろうし、リュカ、ブランシュの幼児期の体験についても同様。あるいはあの小人風のギャルソンだって。監督に何らかの伝えたいメッセージがあると仮定し、それを読み取ることが映画を見ることだとしたらつまらなすぎる。
この映画はそのようなストーリーなし(全くないとはいわない)でも十分楽しめるようにできているいるのだ。あるいは単純にソフィー・マルソーの肉付きのよい体を楽しむだけでもいいではないか。
何通りも楽しみ方があるし、何度見ても新鮮。そんな映画です。
幼児性愛―狂気するペドフィル犯罪
幼児を狙った殺人から売春の斡旋、監禁や汚職など
様々な形で幼児性愛という病がからむ十近くの事件の詳細が
載っていて、「幼児性愛の歴史」といった趣になっています。
幼児性愛者の心理などにはあまり触れませんが、
事件を淡々と綴るだけでなく、ひとつひとつの事件に対して
著者の分析や問題点の提示なども含まれているので
幼児性愛という病について真剣に考えながら読み進めることができました。
ヒーローズ〜ヴィヴァルディ・オペラ・アリア集
地味な歌ばかり歌っているカウンターテナーのフィリップ君ですが、これは英雄たちのアリアということで、輝かんばかりに華々しいアリアのオンパレード!こんなアルバム待ってました!フィリップ君の歌声は、、まさしく声のストラデヴァリ!この身長、この体格、この声帯、すべての偶然が重なって,みずみずしく、清涼で、繊細で、極上のシルクのようなこの歌声が生まれるのでしょう!歌声には「もののあわれ」があり、それでいて母音の逃がし方がなんともいえず温かく、お母さんの子守唄のような温もりがあるのです。ファルセットとはとても思えません。極めて自然な歌声です。今回は内ジャケも開けてびっくり!毛並みのよい、いかにも上品なお育ちのフィリップ君の写真がたっぷり。ルックスもいいもんネ。次はヘンデルのヒーローズを期待します!