南極物語 [DVD]
この映画の一方の主役である人間たち――犬を置き去りにした彼ら越冬隊にも確かに理由はあろう。高倉健の抑えた演技はその葛藤をよく表現していると思う。
しかし、この映画においてはやはり犬たちが本当の主役だ。流氷に流される犬。シャチに食われる犬。白夜とオーロラにおびえる犬、犬、犬・・・・。大自然は過酷であり、容赦など微塵もしてくれない。そこには剥き出しの生と死があるのみだ。しかし、そんな中にあっても彼ら犬たちは決して諦めない。仲間がどんどん減っていっても、生に対する執着は微動だにしない。集団で行動する犬も、そうでない犬も、それぞれが自立しており、逞しく、孤高ですらある。
この映画のテーマは生きることの厳しさと素晴しさだと思う。躍動感あふれるヴァンゲリスの雄大な音楽と聴き合わせると、それを感じざるを得ない。それぞれの命を輝かせ、人間の都合などものともしない犬たちの強靭さと純粋無垢なる高貴な姿に、ただただ生命賛歌を感じるのみ。しっかりせーよ、人間様よ。