NHK スペシャルドラマ 坂の上の雲 第2部 DVD-BOX
年末恒例のNHKスペシャル・ドラマの第2部DVDボックスセットです。
このドラマを去年初めて見た時の感動は今でも鮮明に覚えています。
第1部は3人の主人公の青年期の躍動感や昂揚感を明治の時代の空気と共に
鮮やかに写し取って見せてくれました。
本作:第2部は日本が初めて直面する世界史的な大きな時代のうねりの中で
安易に翻弄される事なく、主人公たちはそれぞれの立場で迷いそして
悩み多き日々をそれでも懸命に送ります。殊に軍においての将星たちは
ベテランの俳優陣が演じ、窮地に追い込まれる日本の決断と覚悟を
時に熱く、時に冷静に披瀝します。山本権兵衛役の石坂浩二氏、
東郷元帥役の渡哲也氏・・この両氏の演技は実に見事なもので、
堂々たる中にも行間やその奥行きを感じさせて余りあるものです。
三国干渉の後、ひたひたと中国大陸を南下する強国ロシア。
帝国主義が跋扈するアジアで唯一独立を勝ち得た日本はロシアに宣戦し
この絶望的ともいえる戦に、上下を問わず全知全能を振り絞って立ち向かいます。
《一将功成りて万骨枯る》・・・戦場での勝利は夥しい英霊の尊い犠牲によって
実は得られるものです。この現実を秋山真之は作戦に活かそうと苦慮します。
もうひとつ、香川照之氏演じる正岡子規が本作で遂に幽明境を異にします。
苦しい病床で子規は生への執念を句作に昇華させるわけですが・・・・
これはもう香川氏の圧巻の演技力に拠るところ大です。第1部でもそうでしたが
正岡子規の妄執と無念と人間の業を演技として表現できるのはどうしても、
香川氏をおいて他にはありえないですね。全ての感情を中断するかのような
突然で不思議な子規の死に様。忘れることの出来ないシーンの連続でした。
ともすれば、明治の大いなる史劇に終始しがちになるところを子規の描写は
心情や人の優しさといった「ミクロ」な点景を効果的に演出しているあたり、
このドラマに上質な厚みを持たせています。
来年はいよいよ「日本海海戦」「旅順203高地の功防」と本作品中最大の
クライマックスがやって来ます。
今からすでに楽しみ・・・・です。
明治天皇と日露大戦争 [DVD]
「国民にどう響くか、よくよく考慮して、戦争を避けるがよい」
「伊藤・・・、戦地の将兵に、避暑があるか」
「伊東も山本も、辞職さえすれば一切の責任から免れることができるが・・・、天皇に辞職はないぞ」
「国民の声が聞こえる・・・岡沢!、国民の声が聞こえるぞ。天皇旗を出してつかわせ」
「岡沢ッ! この戦争は、絶ッ対に勝たねば・・・国民にすまぬぞッ!!」
なんといっても明治天皇。嵐寛寿郎のすばらしい演技によって、あの未曾有の大戦争にのぞんだ偉大な君主の苦悩が伝わってきます。天皇は「明治天皇紀」によって一挙一動まで詳細に記録が残っているそうですから、劇中のエピソードの多くが実話なのでしょう。
エキストラの数が半端ではなく、しかもその歩き方等もかつての帝国陸軍そのままです。出征シーン、奉天入城シーンだけでも見る価値あり。
また、随所に挿入される軍歌が、非常にいい味を出しています。出征シーンの「日本陸軍」、初瀬・八島沈没シーンの「海ゆかば」、乃木・ステッセル会見シーンの「水師営の会見」、日本海海戦シーンの「軍艦行進曲」「日本海軍」などなど・・・。びっくりするほど、映像とマッチしています。
日露モノの最高傑作にして、1300万人の日本人が劇場に足を運んだ超大作(人口が9000万だった時代にですよ!)。
必見。
ポーツマスの旗 (新潮文庫)
連戦連勝、破竹の勢いでロシアを破った日本が、何故大幅な
妥協と世間に捉えられているポーツマス条約を結ぶに至ったのか。
著者の「海の史劇」に続いて本書を読めば、日露戦争を背景とした
若き近代国家・日本の試行錯誤、勢力拡大に余念がない
欧米列強の駆け引き合戦など、当時の国内外の社会情勢が実に
よく見えてきます。
それにしても、日本“国民”は随分とおとなしくなったものですねえ。
坂の上の雲〈3〉 (文春文庫)
正岡子規の死から日露戦争開戦までが描かれています。
戦争といえば、圧倒的な国力の差を気持ち一つで埋められると
考えた太平洋戦争した思い浮かびませんでした。
日露戦争も同じようなものかと思っていましたが、
国家を守るために今何をしなくてはならないのかを第一に、
冷静に状況を判断し事態に対処していく各々の姿に熱くなるものがあります。
同じ戦争でも、携わる人によってこうも性格が異なるかなと考えさせられます。